◆『女教師 少年狩り』◆(ビデオ) 


オンナキョウシショウネンガリ
僕が小学生の頃からにっかつロマンポルノを劇場で観ていた(そればっかりじゃないですよ)というのは、『女教師』のレビューのところでも書きましたが、そのなかで長年それがなんという作品なのかわからなかったものがありまして。
やはり『女教師』と同じく、学校が舞台でやっぱり教師が生徒たちにご無体なことをされるという作品だったのです。てっきり、それが田中登監督の『女教師』だと思っていたんですが、後年、『女教師』を観たら「あ、違うわ」って。

学校の屋上で女性教師が数人の生徒に襲われる。
そこに叙情的なフォーク・ソングが流れる。

それが強烈に印象深くって、さらにラストシーンではその教師の結婚式に、生徒の一人がナイフを持って乗り込んでくるというのも強烈でした。
あれは一体何という映画だったんだろう? とウン十年間謎のままだったのですが、ひょんなことからこの年末にそれがようやく判明したのでした。
75年に作られた『女教師 少年狩り』(なんちゅうタイトルだ)という作品がそれ。
監督はにっかつロマンポルノでも数多くの作品を撮っている小沼勝。

主演はひろみ麻耶。70年代にロマンポルノに数多く出てましたし、東映の作品でもよく出てましたな。
彼女が出た『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』(77)は、カルト映画ファンには有名な一本ですが、残念ながら僕は未見なんですよ。なぜかアメリカではDVDが出てるのにねぇ。

ま、それはともかくとして、にっかつロマンポルノの女教師ものって、『女教師』が最初かと思ったら、それ以前から作られていたんですねぇ・・・。
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◆『女教師』◆(DVD) 


オンナキョウシ
僕が小学生の頃、父親は週末になるとよく映画に連れて行ってくれたものです。
その前に競艇(住之江とか尼崎とか)に行って、レースに勝てばロードショー館、負ければ名画座というコース。
幼心に名画座へ行くほうが一度にたくさん映画を観ることができるので好きでしたねぇ。
たいてい新世界とか東大阪の布施が多かったんですけど、布施の名画座では邦画3本立てのうち1本はにっかつロマンポルノを挟むということをよくやっておりまして、当然のことながら小学校低学年くらいでしたが、1本だけ観ないわけにもいかず、後の2本の一般映画と合わせて成人映画も観たものです。

モギリのおばちゃんが父親に、
「1本ポルノやけど、(子供に観せて)かめへんの?」
と言ってたものですが、
「かめへん、かめへん。まだわからへんやろうから」
と、平気で僕の手を引っ張っていったものです。
いえいえ、いくら小学校低学年でも「わからへん」ことありませんよ(笑)
そんな父も4年前の3月に亡くなりましたが、そんな父ゆえこんな僕になりにけり。
さて、そういう情操教育のなかで観たにっかつロマンポルノは幾つかあったのですが、強烈におぼえていたのがこの『女教師』(77)とあと1本(これについては別の機会で)。

『女教師』は後になって(ほんとに成人してから)、にっかつロマンポルノのなかでも田中登監督の代表作の1本とも謳われる名作であることを知ったわけですが、幼心ながら学校の先生が生徒にえらい目に遭わされる、というのがなんともカルチャー・ショックでありました。
それゆえに強烈に印象深かったんですよね。
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◆『ラーメンガ-ル』◆(DVD) 


ラーメンガール2
昨年末に急逝したブリタニー・マーフィ。
彼女の出演作すべてを観たわけではありませんが、その大きな目と大きな口のとっても愛嬌のある表情が魅力的でけっこう好きな女優でもありました。
彼女が西田敏行と共演した映画が昨年公開されたことは知っていましたが、たしか関西での上映はなかったと思う(もし上映されていたのなら、どうもすみません・・・)し、映画そのものの評価もあまり芳しくなかったようで。
そのまま忘れ去っていたのですが、ここにきて彼女の訃報を聞き、追悼の意味も込めて鑑賞してみました。

まず驚いたのは、てっきり日本映画に彼女が出演していたんだと思っていたら、これ、アメリカ映画だったってこと。むしろ、西田敏行のハリウッド進出第一作だったんですねぇ・・・(アメリカ本国ではどうやらいまだに上映されてないみたい。DVDスルーか?)。
とはいえ、みたところ撮影のほとんどは日本(渋谷近辺)で行われているようですし、共演している日本の俳優人もおなじみの顔ぶれだし、日本映画といわれたって遜色のない仕上がりになっています。
なるほど、製作には日本人の名前(奈良橋陽子氏とか)もクレジットされているし、プロデュース兼監督のロバート・アラン・アッカーマン氏は日本で何度も舞台を上演している、いわば日本熟知者。
こういうハリウッド映画で日本が扱われる作品というのは、たいがい勘違いニッポンが登場するのもので、そこをツっ込むというのがこの手の作品の楽しみ方(?)なわけで、本作もそういう視線で観ていたんですけど、そういった日本を熟知しているスタッフによる作品ですから、ツっつこむ楽しみは薄いですが(笑)、概ね違和感のない仕上がりでけっこう楽しく観ることができました。
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■『ゼロの焦点』■(DVD) 


ゼロノショウテンオリジナル
近く犬童一心監督版が公開される松本清張原作の61年に映画化された作品。
監督は清張作品を多く手がけた野村芳太郎。
恥を忍んで書きますが、松本清張作品は映画やドラマは観たことがあるものの、原作となると一作も読んだことがないのです。
個人的には邦画ベスト1だと思う『砂の器』だって原作読んでませんからねぇ。まして「ゼロの焦点」はタイトルこそ知ってはいましたが、いったいどんなお話なのかもついこの間まで知らなかったくらい。
今回、再映画化されるということでようやく本作に興味を持ちまして、まずは61年の野村芳太郎版を観ることにしました(っていうか、先に原作読めよ!)。


ヒロイン禎子さん(「さだこ」って読むのかと思ったら、「ていこ」でした。演じるは久我美子)は、お見合い結婚して幸せの絶頂でしたが、結婚して10日後に旦那さんの憲一さん(後に悪役専門になる南原宏治)が金沢へ出張へ行ったきり行方不明になってしまいます。
雪深い北陸の地で、憲一さんの部下(積木くずしになるずっと前の穂積隆信)とともに憲一さんを探す禎子さん。
しかし消息がつかめないまま、徐々に憲一さんにはもう一つの顔があることを突き止める禎子さんでありました。
ここに金沢の耐熱煉瓦会社の社長夫人(高千穂ひづる。ちなみに社長は「おら、こんなやつちらねぇ~~~!by『砂の器』の加藤嘉)やら、同会社の社員(有馬稲子。とってもキュート! 特に後半の彼女の演技が素晴らしい!!)やら、憲一さんのお兄さん(後に黄門さんになる西村晃。ちなみにその妻役に沢村貞子)らが絡んできて、失踪事件がやがて殺人事件に発展し、物語は本作以降名所になりましたヤセの断崖を舞台に急展開をみせます(このクライマックスのシチュエーションは、その後テレビの2時間ドラマの定番になりました)。
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◆『愛のむきだし』◆(DVD) 


アイノムキダシ
劇場公開時に観たかった作品でしたが、なんせ上映時間が4時間近くあるということで、劇場へ行く時間込みで一日仕事になっしまうために結局都合がつかずじまいで、あれよあれよという間に関西での上映が終了してしまいました。
それだけでも悔しかったのですが、ついにDVD化されて満を持してようやく観たらば観たで、つくづく劇場で体験したかったものよと、さらに悔しさが倍増してしまいましたがな。


園子温という監督の作品を観るのは今回が初めて。
そもそも、その名前の読み方もしらなかったわけで、「監督の名前の読み方を次から選びなさい」という問いに対して「そのこ・あつし」と答えたばかりに映画検定で点数を取り逃がしたという苦い経験があるものですから、忘れようにも忘れられない名前でもありました。
一度、どのような映画を撮る方なのだろうか、最初にどの作品から観れば良いのだろうか、と逡巡している間に出会ったのが本作。

アイノムキダシ3
で、なんでこの映画が観たかったのか、ってえと、主演女優が満島ひかりだったから。本作の存在を知ったちょうどその頃に劇場で観た金子修介監督の『プライド』(09)は、いろんな意味で衝撃の一本でありまして、その衝撃の一つが満島ひかりという女優の演技を目の当りにしたこと。
黙っていればキュートなおね~ちゃんなのに、全身から搾り出すようなその怨念の塊のような演技にただただ圧倒されました。
それまでNHKの連続テレビ小説『瞳』や『プライド』と同じく金子修介監督の『デスノート』での演技は観ていたものの、かように迫力のある女優だとは嬉しい発見でありまして、そんな彼女が4時間近い作品のヒロインとなれば、そりゃあ興味が湧くのもとうぜんのこと。
事実、この『愛のむきだし』での彼女の演技は、『プライド』に勝るとも劣らない壮絶さであり、調べてみれば『プライド』は『愛のむきだし』の後に撮ったということで、なるほど、こんな演技を披露した後では何が来ても恐いものなしだったんだなぁ、と妙に納得してしまいました。

アイノムキダシ2
さて、『愛のむきだし』は、簡単に言えば昔からよくある学園ラブコメもののようなお話(ストーリーについての詳細は公式サイトなどを参照されたし)。
愛する女性が目の前にいるのに、いろんな障害が重なってそれが告白できない。しかも、自分は相手からもっとも忌み嫌われる存在である。そんなオーソドックスともいえるシチュエーションを主軸に、アブノーマルネタやらカルトネタやら、いわゆる人間にとっての負のカテゴリーがこれでもか、これでもかとってくらいに絡み付いてくる。
それが延々4時間という、もうお腹いっぱいで喰えません・・・ってな容量で描かれるのですが、これは誇張でもなんでもなく、その4時間のなんとなんと短いことよ。

テーマ自体はとてつもなく重いのですが、それをきちっと受け入れている出演者たちの演技もさることながら、重く暗いだけでなくところどころにコメディ的な要素を加えつつ、出演者ごとの視線でエピソードが語られるという巧みな編集、そしてほとんどの場面でBGMが流れている(ラヴェルの「ボレロ」であったり、ベートーヴェンの「第7番」であったり、賛美歌であったり、ゆらゆら帝国であったり)という、映像と音楽が織り成すグルーブ感というのでしょうか、それが観ているこちらのバイオリズムにもバッチリ合ってしまいまして、時間の長さなど微塵も感じませんでした。

そして4時間という物語の最後に待ち構えている、えもいわれぬ感動の一瞬。
嗚呼、ほんとうに本作を劇場で観ることができなかったことは悔やんでも悔やみきれません。


アイノムキダシ4
期待していた満島ひかりの演技は言うに及ばす、本作のいわゆる悪役を引き受ける安藤サクラがいいんですよ。
さすがサラブレッド(こういう言い方は好きじゃないんですけどね。両親はともかくその人の演技はその人の持ち味以外のものでも何でもないのですから)と思わせるくらいほんとに上手い。目の前にいたら思わず張り倒したくなるような憎たらしい悪役をじつに見事に演じきっていました。
主人公を演じる西島隆弘も演技初挑戦だったそうですが、難しい役柄を見事にこなしていました。
で、やっぱりここまでの演出をする園子温監督の手腕にはただただ脱帽ものでした。すぐに他の作品も観たくなりましたねぇ。


人間誰しも負の部分ってのは持っていると思うし、それをいみじくも本作では「変態」と表現していますが、他人を「変態」呼ばわりして非難するその人自身、では負の部分は持ち合わせていないのか? と問われれば、胸を張って「私は違います」と答えられる人って、それこそ聖人の域に達せねば不可能だと思うのです。
本作はそこを巧みに突いて、それこそむきだしにしていますが、だからといって変態讃歌の映画というわけでもなく、それを見つめる視線はあくまで慈愛に満ちているのです。
つくづく、自分のすべてをさらけ出せる人に出会えるというのは、とっても幸せなことなんだよなぁ、と考えてみれば当り前なことなんだけれども、それを実感させられるような映画でした。

ただし、実感するまでの道のりは決して安穏なものではなく、本作に登場するキャラクターにのしかかったあらゆる苦難や困難を4時間という上映時間のなかで目の当りにし疑似体験するという修行を経なければなりません。
その修行を得た後、ラストカットを体験した観客は、それこそ至福の喜びに包まれた表情で劇場を後にしたに違いありません。
何度も書きますが、その末席に侍ることが出来なかったのは、本当に残念至極なことでありました。


【採点:100点中95点】

※レンタルでは観ることができませんでしたが、セルDVDではメーキング映像や特典映像満載とのこと!
ううう・・・観たい。



※『愛のむきだし』の満島ひかりも壮絶でしたが、こちらもかなりのものでしたよ。
劇場公開観逃がした方には、ぜひお薦めいたします。