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■『NINE』■(映画) 


ナイン
もともとミュージカルが好きな僕ですが、ライヴでの舞台公演へ行く機会のない僕にとっては、年に1本か2本のサイクルで公開されるミュージカル映画はとっても楽しみであります。
もちろん、ライブにおける良さというのは映画とは比較にならないものがあるでしょう。でも、映画は映画で、舞台では不可能な演出も可能なわけで。

でも、そこをどう演出するかというのが舞台公演の面白さなんですけどね・・・(笑)


さて、今回公開された『NINE』は、同じくブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『シカゴ』(02)ロブ・マーシャル監督の最新作。

この『NINE』自体は、日本でも昨年末から今年にかけて舞台で上演されたばかりでありまして、話は思いっきり横道にそれるんですけど、今年の1月にNHK-FMの番組のゲストで出演されていたある日本のシンガーがおられまして、その歌声の美しさにいたく感激してしまったのです。
僕自身、まったく存じ上げなかった方だったので早速ネットで調べましたら、ミュージカルの世界では人気の方であり、すでに何枚ものCDもリリースされてらっしゃる。つくづく、自分の知識の低さを痛感してしまったわけです。

そのシンガーは新妻聖子(なんだか、少女漫画に出てきそうな、いかにも清楚なイメージのお名前ですが、本名なんだそうで)という方で、ネットで調べている中で、彼女がその『NINE』にも出演されていたということを知ったのです。
そんなこともあって、この『NINE』という作品は、これまで名前くらいは知ってましたが内容までは知らなくて、どんな物語なんだろう? と調べているうちに早々にロブ・マーシャル監督による映画版が公開されたのでありました。


ナイン1
・・・話を戻します(笑)

本作のナンバーを手がけたモーリー・イェストンが、十代の頃に観たフェデリコ・フェリーニの『8 1/2』(62)にいたく感銘をうけ、70年代にそれをミュージカル化することを思い立ち、フェリーニの元に出向いて直々にお墨付きをもらって出来上がったのが、この『NINE』。


世界的に有名な映画監督が新作製作を発表するも、スランプに陥ってまったくアイデアが浮かばない。
切羽詰ったなかで彼の頭をよぎるのは、これまで彼といろいろと関係のあった女性たちの姿。
それは妻だったり、愛人だったり、主演女優だったり、衣装デザイナーだったり、雑誌記者だったり、幼い頃に出会った娼婦だったり、そして亡くなった母親だったりする。
そんな彼女たちとの関係のなかで、はたして映画は完成するんだろうか、というお話。


ナイン2
そもそも映画をテーマにした作品ですから、今回のように映画になるべくしてなった作品であり、フェリーニのオリジナル版(オリジナル版と表現してよいかどうかはともかくとして)におけるマルチェロ・マストロヤンニが演じた主人公を、今回はダニエル・デイ・ルイスが演じているというわけ。

そもそも、オリジナル版自体ミュージカル的な要素があった作品だったので、ミュージカル化したモーリー・イェストンの思いつきも納得できるというものですが、あまりにも有名な、そしてあまりにも強烈な印象のある作品のリメイク(リメイクと表現してよいかどうかはともかくとして)となると、結果的にトニー賞を受賞したとはいえ、モーリー・イェストン自身、相当な重圧があったことも想像に難くありません。

ブロードウェイ版と今回の映画版とでは、その内容に相違があるかどうかはわからないんですけど、少なくとも映画版を観たかぎりではオリジナル版のアイデアのみを借りた別物といっていいでしょう。
映画としてのストーリーとしては、特に感動とかカタルシスとか、感情的に強く訴えかけるような、得るものは少ないといわざるをえない。
辛辣なことを書けばそのストーリーの弱さ(ちなみに脚本はアンソニー・ミンゲラで、彼の遺作になったのですが・・・)をミュージカルで補っているかのよう。

オリジナル版の持つ魅力には到底叶わない仕上がりであり、ただそう割り切って観れば、個人的にはけっこう楽しめたエンターテインメント・ムービーに仕上っていました。


ナイン3
とにかく、主人公である映画監督は、女性の力を借りねば何事も出来ない「女性依存症」な男。

スランプに陥ったといって泣き言を妻に言いつつも、愛人と情事を重ねるという、僕としてはまったく共感を得られないキャラクターであり、しかし、そんな彼の周囲にはなぜか女性が集ってくる。
しかも、そんな主人公に「一人の女性を愛しなさい」と説教しに現れるのが亡くなった母親。
もちろん、これは幽霊ではなく主人公の心の中に出てくる、ということは己の行動に対して抑制しようという心も主人公にはあるということ。

この女性に対する主人公のアンビバレンツな心理が、映画を作りたくてもスランプで作ることが出来ないというアンビバレンツに当てはめれば、女性=映画(芸術)という図式が成り立つ。
そして、本作に登場する女性それぞれのキャラが、そのまま映画のテーマと考えてみると、けっこう深いテーマを持っている作品であり、それをミュージカルでコーティングしているところが、本作の持つ魅力だと僕は思うのです。

ナイン4
本作の宣伝文句には「世界は、男と女と愛でできている」とありますが、むしろ「世界は女でできている」と言ったほうがいいんじゃないか。
で、男はその手の平の上でコロコロとことがされているに過ぎない。芸術を産みだす原動力こそ女性なのだから、と別に僕はフェミニストではありませんが(笑)、そんなことを本作を観て感じた次第。

なんせ、オープニングとクライマックスにおける、出演している女優たちの「どや顔」を観るに、思わず「へへぇ~~~~」と平身低頭してしまったのは僕だけではないでしょう(あ、僕だけですか、そ~~~ですか)。





ナイン6
とにかく、出演女優の豪華なこと!!
そしてそれぞれ吹き替えなしに歌っている贅沢さたるや!!

主人公の貞淑な妻ルイーザをマリオン・コティヤールが魅力たっぷりに演じており、後半、浮気性な夫にとうとう三行半を叩きつけて娼婦の如き歌い踊る場面の変貌に圧倒(ちなみに、先に書いた新妻聖子さんは舞台でこのルイーザを演じたとのこと)。

彼女に相対するキャラである、主人公の愛人カルラを演じるペネロペ・クルスのキュートかつエロティックさにはただただ唖然。
十三ミュージック、あるいはDX東寺のごとき、エロティックなダンスの振り付けには色んなところがスタンディング・オーベーションしてしまいそうでした(下品ですみませんねぇ)。

意外にも歌唱力の高さに驚いたジュディ・ディンチケイト・ハドソン。
前者の貫禄に後者の激しいダンスの身のこなし方に興奮。

ニコール・キッドマンは出番は少ないながらも『ムーラン・ルージュ』(01)の前例があるとはいえ、ミュージカル女優としての存在感も伺えるし、すでに神格化されているかのごときソフィア・ローレンまでがいまなお歌い踊ることを目の当りにできる贅沢さ。

また、現役シンガーであるファーギー演じる娼婦サラギーナの、本作における白眉ともいえるダンス・シーンのスペクタクル感はぜひ映画館の大スクリーンで体験していただきとうございます。


本作を観ていると、女優(あ、ダニエル・デイ・ルイスもそうですけど)って演技が上手いだけではなく、歌も踊りもこなせなきゃ、やっていけないものなのだなぁ、とつくづく実感した次第。

そういう意味においては、映画としての完成度はともかく、映画界を代表する女優たちが一堂に会するというだけでも、十分お腹いっぱいになろうというもの。

ほんとにご馳走様でした!!

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中70点】



※本作のサントラ。
出演女優それぞれが実際に歌っており、女優たちのオムニバス・アルバムと言ってもいいじゃないでしょうか。



※本作の原典。
未見の方で、今回のミュージカル映画を観て興味を持たれた向きには、ぜひご覧いただきたい。



※本文中で触れた、新妻聖子さんのニュー・アルバムにして初のオリジナル・アルバム。
件のラジオ番組で流れた代表曲「アンダンテ」にいたく感激いたしました。
なんと、彼女の新作舞台は、あの『プライド』!
緑川萌役なんだそうですが、はたして満島ひかりを凌げるか!?





コメント

No title

ありゃりゃ・・・「歌謡コンサート」に出演してらっしゃったんですね!!!!

残業してたので観逃がしてしまいました・・・不覚。
(しかも、僕が個人的に好きな「夜来香」を唄ってらっしゃったんですね。つくづく残念)


とにかく、新妻聖子さんについては、レビューで書きましたNHK-FMの番組で流れた「アンダンテ」というナンバーには、思わず身震いするような感動をおぼえましたよ~~~♪

No title

こうして新妻聖子さんファンがひとり増えた(ニコニコ)
  明日火曜日のNHK歌謡コンサートにイッテライシャ~ン
「イングリッシュペイシェント」のアンソニーミンゲラさん亡くなってたショック。
「ナイン」いずれ見ます。ではでは・・・・・・・・・・。

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