■『ハート・ロッカー』■(映画) 


ハートロッカー
♪ハ~トをロックされたいのぉ~~~♪(JASRAC無許可)

みたいな映画(どんな映画だよ?)かと思ったら、バリバリの戦争映画、それもとっても男臭い。
しかも、これを監督したのは女性というんだからなにがなんだか、です。

いやいや、こんな男臭い映画を撮れる女性の監督といえば、あの人しかいないよなぁ・・・と思ったら、やっぱりって感じのキャスリン・ビグロー。


そういえば、キャスリン・ビグローの映画って最近観ないなぁ、って思ってたんですよ。

『K-19』(02)から久しいので、その後おそらく何作か公開されていて、てっきり観る機会を逃がしているとばかり思っていたら、なんと『K-19』以来の新作なんだそうな。

なんでも、その前作の興行成績が振るわなかったので、ハリウッドから干されていたそうですが、個人的にはあの映画はあれでけっこう見応えのある作品でしたよ。
潜水艦を舞台にした映画に駄作はない、という定説(かどうかは知らんが)のとおり、ハリソン・フォードとリーアム・ニーソンの緊迫した演技にはゾクゾクしたものですがねぇ。

ハートロッカー1
そんな彼女の7年ぶりの新作は、第82回アカデミー賞において、作品賞を筆頭に6部門でオスカーを獲得し、また女性監督では初の監督賞ということでも話題になったのは周知のとおり。
ジェームズ・キャメロンの元つれあいということで、因縁対決なんてことが盛んに謳われての話題もあったのですが、先に書いたように本作はいつもながらの、男以上に男臭い映画に仕上っていました。

なんせ劇中に女性って、ほとんど登場しないんだもの。


2004年のイラクはバクダッドを舞台に、ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)、サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)、エルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)の3人のアメリカ軍爆弾処理班の男たちの姿を描くという内容。
テロが仕掛けた爆弾を処理するのが彼らの仕事なわけですが、いつ命を落とすやもしれないなかで、彼らはいつもピリピリしています。

開巻早々、爆弾処理班の班長(ガイ・ピアース)が爆弾処理中に被爆してしまい、あっけなく死んでしまうという場面から、映画は登場人物の心情さながらに終始緊迫かつ臨場感に包まれたムードを保った演出がとにかく素晴らしく、とりわけドキュメンタリー・タッチの映像と音響効果もじつに効果的。

なにしろ、まるで宇宙服のような防護服を身にまとって爆弾処理をするわけですが、あれだけ着込まないと危険なんだろうな、というそのビジュアルでまず衝撃だったのですが、いかに重装備でも爆弾の威力で簡単に死んでしまうことを目の当たりにして、

「意味無いじゃん・・・。」

と思いつつも、それによって観客に強烈な緊張感を与えるこの冒頭のエピソードからして秀逸。

ハートロッカー2
また、冒頭で爆死する班長の後任で、ジェームズ軍曹が着爆弾処理班に着任するのですが、彼とサンボーン軍曹はどうもソリが合わず、いつもなにかといがみ合っている。
そんな二人を、まぁまぁまぁとなだめるエルドリッジ技術兵というこの三者の描き分けも巧みです。


彼らの活躍が幾つかのエピソードに区切られて描かれるというスタイルで、1本の映画で一つのストーリーというよりも、いわばコミック雑誌に連載されている1話完結の劇画を数エピソード拾い上げて映画化したような感じなので、重苦しい内容ではあるものの比較的観やすいスタイルになっていました。





ハートロッカー4
さて、映画の冒頭には「戦争は麻薬である」というテロップが出ます。

最初は戦場に魅せられた男の物語かと思いきや、それも当たらずとも遠からずではあるのですが、ジェームズ軍曹というキャラクターを通じて、戦場における爆弾処理班という仕事の重要性、その職務を全うしなくてはならない使命のようなものを、しかしそれをスーパー・ヒーローのように誇張するのではなく、一人の人間としての心情でもって描いており、それが集約されたクライマックスのエピソードには、思わず後頭部をガツ~ン! と殴られるが如き。

ジェームズ軍曹にとって、なぜ「戦争が麻薬」たりえたのか。
それを雄弁に語る見事なラスト・シークエンスでした。




ハートロッカー6
本作は低予算で作られ、メジャースタジオの製作ではなく、いわゆるインディペンデント映画。
ガイ・ピアースやレイフ・ファインズといった有名俳優もゲスト出演してはいますが、ジェームズ軍曹を演じるジェレミー・レナーを含む3人の俳優も、「誰、それ?」ってくらい無名な俳優ばかり。

過去の出演作を観たことはあっても、「あの映画に出てたかなぁ・・・?」ってなくらいに印象が薄いんですけど、ビグロー監督にしてみれば、ビッグ・バジェットであったがゆえにそのツケも大きかった前作を考えれば、無名な俳優を中心に起用することは、いたしかたのないこと。

特に戦争映画とはいえ、アクション重視ではなくあくまで人間ドラマに重点を置いた内容であり、本作にエンターテインメント性を求めるのはお門違いなわけですから、娯楽映画という意味では観客の動員も期待できない、という思いは監督なり作り手には少なからずあったのは想像に難くありません。
しかし、たとえ有名な俳優を起用せずとも、それによってかえって作品にリアリティをもたらしていたのは、瓢箪から駒とでももうしましょうか、一石二鳥とでももうしましょうか、本作にとってはよかったんじゃないかと思いましたね。
そのリアリティと優れたドラマが備わった作品ゆえの、今回のアカデミー賞における評価だったのは、本作を観れば十分納得できるものでありました。


最後に映画音楽ファンとして注目していた、アカデミー賞にもノミネートされていたマルコ・ベルトラミバック・サンダースによるスコアなんですけど、正直いって地味・・・。

まあね、本編がリアリティ重視な内容になっているので、いたずらに場面を盛り上げるスコアが流れるのもどうかという意味においては、ベルトラミは作品の性質を十分理解していたといえるですが・・・ね。

(TOHOシネマズ梅田アネックスにて鑑賞)

【採点:100点中75点】



※マルコ・ベルトラミとバック・サンダースによる本作のサントラ。
輸入盤のみのリリースです。



※この映画も、緊迫感と恐怖感の演出が見事でした。




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