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■『サヨナライツカ』■(映画) 


サヨナライツカ
辻仁成原作の小説を、『私の頭の中の消しゴム』(04)イ・ジェハンが監督、主演を原作者の奥さんである中山美穂が演じるということでなにかと話題の本作。

もともとは行定勲監督で映画化の話があったのが、製作サイドとの方向性の違いだとかで降板。
その替わりに韓国のイ・ジェハンが起用されたという流れ。原作は韓国でもベストセラーなんだそうです。
そもそも僕は原作を読んでいないので、映画と原作との間に相違があるのか、それともほとんど原作のまま映画化しているのかは知る由もありませんが、主演の中山美穂と同世代の僕としては、彼女がアイドル全盛期の頃をリアルタイムで体験してますから(個人的には、妹の中山忍のほうが好みなんですけど)、本作の予告編を観た時はビックリしましたねぇ。

あぁ、ミポリンもあんな大胆な演技をするようになったんだ・・・と、かつて『毎度おさわがせします』のシャワー・シーンでドキドキしていた頃を思うと感慨深いものがあります。

ってなわけで、告白するならば「鼻の下を伸ばしつつ」本作を観に行ったわけです。

・・・が、鼻の下が伸びるどころか、腹の皮がよじれるくらい笑った、もとい、首の筋が痛むくらい首を傾げた、相当に珍奇な一本ということで、早々に2010年で忘れられぬ作品となりました。

サヨナライツカ1
ストーリーはいたってシンプル。
時代は70年代。主人公の豊(西島秀俊)は婚約者光子(石田ゆり子)がいるにも関わらず、タイはバンコク支社に赴任。
そこで沓子(中山美穂)という女性と出会い、深い仲になる。
バンコクの高級ホテルに入り浸りであんなことやこんなことばっかりする日々。
やがて、豊の浮気を察知した光子はバンコクに乗り込んでくる。
沓子は豊の前から姿を消す。

25年後・・・。
豊は光子と結婚し、二人の息子(日高光啓と西島隆弘。AAAな兄弟)がいる。
兄はミュージシャンだが、豊と折り合いが悪くて家を出ている。
出張で久しぶりにバンコクにやってくる豊。
そこでニューヨークへ旅立ったと思っていた沓子と再会する。
もちろん、やけぼっくいに火がつく。
しかし、沓子は・・・。


細かいところはともかく、まぁ、こういうストーリーですわ。
たしかに監督は韓国人ですが、日本映画でしょ、って思っていたらまんま韓国映画だったんですねぇ。
オープニングの子供が花火に興じる、CJエンタテインメントのタイトル・ロゴを観て、
「あ、韓国映画なんや・・・」って。

なるほど、開巻早々、豊と光子が畳の上で片膝立ててお茶飲んでる場面なんか出てきて、演じるのは日本人なれど韓国映画ですから、習慣も韓国式なんだなぁ・・・と。んなわけあるかいっ!


これを皮切りにラストまでの2時間14分、珍奇なシーンのオン・パレードで片時も目が離せません。

たとえば・・・。
浮気がバレないよう、毎日かかってくる光子の電話に思いっきりダイブ!!(バスター・キートンの喜劇かよ) とか、
「イフ・ユー・ドント・ノウ・ミー・バイ・ナウ」だけを延々唄うクラブ歌手(同じ歌をバージョン違いで唄う)とか、
突然SF映画になる豊の変な夢(彼が口にする夢の内容と全然違う)とか、
坊さんの行列の横で痴話喧嘩(お前は●●なくなったし、僕は●●なくなった、って、赤ひげ薬局にでも行けよ)とか、
どこぞの学校の体育館でダンパ&抽選会(突然卒倒するボリウム満点なおね~ちゃん)とか、
プレスリーのモノマネ(全然似てない)をする現地の男(これ誰よ? 25年後にはバク転も披露)とか、
やたら鬱陶しいマギー(これは単に彼本来のキャラだろうけど)とか、

なんとかかんとか、ほかにもいっぱいあり過ぎて忘れてしまったので、あとはぜひ劇場でご確認あれ。


とにかく、なんともいえない「気持ち悪さ」というか「変なリズム」が脳髄をチクチクチクチク刺激してくれます。

その刺激に耐えられない観客にとっては、「この映画にサヨナラできるのはイツか?」って思いながら観なきゃいけないハメになる(僕の隣に座っていた老夫婦。途中から映画観ずに世間話してるし・・・)。
でも、逆に「強烈な臭いを放つものほど美味い」という例もありますので、本作の放つ刺激を快感として捉えれば、2時間14分、ほんとにほんとに楽しく楽しく過ごすことができること請け合い。

僕の場合は、そりゃあもちろん後者でしたよ(・・・後者になろうと努めました)。


本作を観て思い出したのが、クァク・ジェヨンが撮った『僕の彼女はサイボーグ』(08)。
あの映画も日本映画に韓国映画のテイストを無理矢理ねじ込んだばかりに、あちこちに妙な描写や変なテンションがあった珍作でしたが、そもそもジェヨン監督の作品はどれもそんなのだから、さもありなん、ではありました。
が、本作はちょっとねぇ、あまりにアクが強すぎるんですよねぇ・・・。


さて、真面目に本作について語るならば(決していままでのが不真面目ってわけじゃんじゃいですけど)、本作における沓子という女性なんですが、これは実在しないんじゃないかと思うのです。
光子という婚約者がいる豊。
結婚するまで禁欲生活を貫こうとするも、バンコクには誘惑がいっぱい(なんせエマニエル夫人もアバンチュールを楽しんだ場所ですし)。
性欲みなぎる豊(あからさまな描写が冒頭にあり)は、しかし光子を大事に思うあまりバンコクでは修行のような悶々とした日々を強いられる。
そんななかで見た豊の性的願望が沓子なのです。

彼女が己の禁欲を解放してくれる。
彼女との情事を夢想することで、彼は精神の均衡を保つことができるというわけ。

あるいは、沓子という存在は結婚を控えた豊のマリッジブルーが作り上げた幻想なのかもしれません。
性欲みなぎる豊(だから、あからさまな描写が冒頭にあり)としては、もっと遊びたいよ~~~、でも婚約しちゃったしな~~~、ど~しよ~かな~~~、と思いつつ、実際に浮気することも出来ない豊は、沓子という不倫相手を頭のなかで作っちゃったんですね。

いずれにせよ、そのうち光子と結婚する日が近づく。
となると、自分の心の中に作り上げた沓子と決別しなければならない。それがあの空港の場面。
沓子が去ったと同時に光子が現れるのも、あまりにタイミング良過ぎるシーンだと思いましたが、自分が作り上げた沓子を消すことで、光子へ気持ちを切り替えた豊の心を表現しているのです。

そして25年後。
息子との関係が悪化してストレスがたまる豊。
しかし、かつて精神の葛藤と均衡を味わったバンコクへ行くことで、ふたたび沓子という存在を夢想する豊。
その後の沓子の顛末については詳細に触れるわけにはいきませんが、彼女が最後にどうなったかを見るに、それは実在しなかったんだと確信いたしました。

光子がバンコクへ沓子に逢いにくる場面も、豊が気持ちを光子へ切り替えるための空想の出来事。
となると、あの沓子と光子が写っている写真には、豊には二人が映っているように見えますが、実際は何が写っているのか・・・。

それを考えると、おお、この映画って、案外面白いやないかい! って思いません?
あ、思いませんか・・・。

そもそも、タイトルの「サヨナライツカ」ってのが、光子の作った詩であると言う時点で、この珍奇な物語を掌握しているのは紛れもなく光子ということが明確なわけですから、豊の心に占める彼女の存在を考えるに、僕なりの解釈はあながちズレてないと思うんですけどねぇ。


もっとも、そんな見方でもしなきゃ本作には付き合ってられませんわ。
豊が性欲に溺れる毎日を送って欠勤が続くのに、なんで出世するのかよくわんない。
タイの実力者に会っても、別にこれといった話もしないのに。
唐突に息子がグレるシチュエーションが出てきたり、
肝心の沓子についてなんであんな金持ちなのか&タカビーなのか曖昧(途中で元夫というのが出てきますが、あれもホントかどうかわかんない)だし、
珍奇なうえに説得力ゼロなエピソードだらけで、これが原作そのままの映画化とすれば、原作も相当に珍奇なシロモノといわざるを得ないし、これがベストセラーになるのも理解し難い。


いや、映画は原作とはかなり違っていて、監督ないし脚本家のスタイルが色濃く出ているというのなら、単純に僕と肌が合わなかっただけなのかもしれません。
ひっきりなしに流れるBGM(そのくせ、ラストシーン近くはほとんど無音状態。観たのが夕方だったので、あちこちから観客のお腹が鳴る音が哀しく響いていました)や、おいおい、少しくらいじっとしてられないのかぃ! ってくらいカメラがうるさく動き回るのも、逐一癪に障るったらありゃしない。


あ、そうそう、最初に抱いていたような、この映画からリビドーとか、そっちのほうは全然感じませんでした。
というか、あまりもあんまりなその内容に、途中からそんなこたぁど~でもよくなっちゃいましたですよ。

(TOHOシネマズ橿原にて鑑賞)

【採点:100点中10点】



※我も人なり、辻仁成先生による原作。
映画がとてつもなく珍奇だったので、かえって原作がどんなのか確かめたくなっちゃいました。
まったく一緒だったら、どうしよう・・・。



※中島美嘉による主題歌。
なんだか、とってつけたような感じでしたが、韓国上映版は延々スコアが流れてる可能性大。



※AAAによる挿入歌「TWO ROAD」が収録されているマキシシングル。
ほんと、一瞬しか流れません。というか、昨年の「あの映画」での活躍を考えると、本作での西島隆弘の扱いってどうなの?





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