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■『インビクタス/負けざる者たち』■(映画) 


インビクタスマケザルモノタチ
とにかく運動音痴な僕は、学校の体育の時間ほど憂鬱なものはありませんでした。

特に団体競技(サッカー、バスケ、バレー、ソフトボール等々。ほとんどやん)なんて、他人の足を引っ張るのがわかってるものだから、イヤでイヤで仕方なかったし、「お前のせいで負けたやないか!」なんて言葉、何度耳にしたかわかりません。

そんなことだったら、個人で黙々やるような、たとえば持久走(持久せずすぐにバテましたが)とかのほうがよっぽどマシでした。

そんな僕でも、団体競技の面白さに目覚めたのが高校の体育の時間でのラグビー。
なんせ、ボール持って走ってればいい(決してそんなわけないですが)し、僕よりガタイの小さな奴とか痩せた奴なんて、ぶっ飛ばせばいい(決してそんなわけないですが)んですから。

特に僕が行ってた高校は工業高校でしたので、血の気の多い奴が多い(決してそんなわけないですが)わけで、必ず最後にには殴り合いの大乱闘になっちゃう。これが面白くってねぇ。
実際に鼻血を流した奴とか、メガネを壊された奴とか、ラグビーの授業のあとは怪我人続出。

血沸き肉踊るとはまさにこのことでありました。


閑話休題。

昨年は『チェンジリング』『グラン・トリノ』と、2大傑作を放ったクリント・イーストウッド。
前作で監督引退なんて声もささやかれたのなんてどこ吹く風。早々に新作を撮ってらっしゃいました。

監督作通算30作目になるのが本作。
今回は南アフリカ初の黒人大統領になったネルソン・マンデラの姿と、南アのラグビーチーム、スプリングボクスが95年のワールドカップで初優勝を果たした実話を映画化しています。

27年間監獄に捉われ、釈放後南アフリカの大統領に就任したネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)。
「過去は過去」と、官邸にいた白人の職員たちを解雇ぜず、新政権で南アフリカを立て直そうとするマンデラ大統領は、自国のラグビーチーム、スプリングボクスがあまりにも弱いことを知ります。

しかも、南アの白人たちが応援するスプリングボクスに対して、黒人たちは対戦国のチームを応援する始末。

それを目の当たりにして、マンデラ大統領はスプリングボクスこそ南アの人々の心を統一させる要と考え、チームの主将フランソワ・ピナール(マット・デイモン)に働きかけます。

大統領の真意をくみとったピナールはチームを鼓舞し、メンバーもそれに応え過酷な練習を重ねた結果、スプリングボクスはみるみる力をつけていくことで、黒人たちの間にもチームに対する愛着が強まっていくのでした。

そして南アが開催地となった95年のワールドカップにて、強豪であるニュージーランドのチームと戦う決勝を迎えます。
はたして勝敗や如何に・・・。


高校時代、ラグビーが面白かった(というか、その後の大乱闘が楽しみだったんですけど)僕でしたが、ワールドカップとかそのあたりのことはほとんど知識がないもので、本作のクライマックスである95年の決勝戦についても、ラグビー・ファンにとっては有名な話なんだそうですが、僕としては「へぇ~~~そういうことがあったんや」ってくらいなもので。
だから、本作は実話を映画化していますので、これを観る大多数の方が結末は判っているでしょうし、いろんな媒体にも書かれているので僕も判ったうえで本作を観ました。

それでもなお今回も手堅い演出で、最後まで興味深く観ることができまして、いまさらながらクリント・イーストウッドの凄さを実感したような次第です。


ラグビー戦の面白さもさることながら、いわずもがな本作のテーマは「赦す」ということ。

アパルトヘイト政策によって、長年拘留された経験を持つマンデラ大統領が、国と国民のことを思い、「過去は過去」と割り切るその想いは、並大抵の決断ではない計り知れないほどの葛藤があったことでしょう。
そんな一人の想いが、何万人という南アの人々の心をひとつにすることこそ素晴らしいのであって、もちろんそのきっけとなったスプリングボクスも、その主将のフランソワ・ピナールも同じく賞賛に値するものであることは、本作を観ればよく判るというもの。
高校時代、邪な気持ちで(決してそんなわけではないですが)ラグビーに興じていた僕としては、恥じ入るばかりでございました。


また、本作では国家というマクロな視点だけではなく、たとえば首相の警護班のメンバー(黒人と白人の混成チーム)のささやかなエピソードであったり、クライマックスの決勝戦を観戦する市井の人々の描写を盛り込むことで、人々の心がひとつになる瞬間を見事に描いているところがじつに素晴らしい。


ただ、難をいえば、本作はノン・フィクションということで、「ええ話やなぁ・・・」で終っちゃうというところ。
たしかに『チェンジリング』も実話を元にした映画ではありましたが、イーストウッドの語り口の魅力というのは、フィクションにこそ発揮される(物語の独創性において)と思うのです。
その部分では本作の果たす役割は、エンターテインメントの域を超えているとは思いますが、正直なところ物足りなさも感じたことも事実。

また、つい先日TVで観たのですが、現在の南アの状況について、かなり治安も悪くなっており、奇しくも今年ワールドカップが開催されるということで、日本人も多く観戦に行くことになるだろうが、トラブルは起こらないのかという懸念があるようです。
せっかく人々の心をまとめたマンデラ大統領やスプリングボクスの功績が、もろくも崩れてしまった現状をみるに複雑な心境にならざるを得ないのです。

逆に、そんな現状だからこそ、本作が作られたとも考えられるわけですが・・・。



音楽を担当したのは、クリント・イーストウッドの実子、カイル・イーストウッドマイケル・スティーヴンスの、イーストウッド作品ではおなじみのコンビ。

今回も親父さん同様、シンプルかつ印象的なメロディ・ラインのメインテーマに加え、舞台となる南アの既成曲も盛り込んで、いつになく多彩な音楽のスタイルが新鮮でした。


なんとイーストウッドは早くも次回作(マット・デイモンが主役)の撮影に取りかかっているとのこと。
今度はフィクションのようなので、また楽しみがひとつ増えたわけです。
(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中60点】



※本作のサントラ。
満足度の高い一枚になっています。



※こちらは本作の原作。
映画では描かれなかった部分も多いようですよ。





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