◆『チェイサー』◆(DVD) 


チェイサー
2009年度は映画館で111本の映画を鑑賞しました、というのは普通の人(なにをもって普通とするかの基準は曖昧なれど)に比べりゃ多いほうだとは思うのですが、それでも残念ながら観逃がしてしまった作品もあるわけで。

嗚呼、あんな映画(具体的なタイトルは挙げませんけどね)を観るくらいなら、なんでこれを観なかったんだろう・・・と後悔することは、毎年のようにありまして、2009年度でいえば『愛のむきだし』がそうだったし、今回観た韓国映画『チェイサー』もそう。
おそらく、両者とも劇場で観ていたならば、ベスト10の順位は多少なりとも変わっていたことと思います。

で、この『チェイサー』、ストーリーの元となったのは2004年に韓国で起こった「ユ・ヨンチョル事件」。
1年足らずの間に30人以上も殺人を犯した最悪かつ凶悪な事件で、詳細については検索をかければいろいろ詳しいことを教えてくれますのでそちらを参考していただくとして、犯人であるユ・ヨンチョルが警官に連行される際に、被害者の遺族が彼に殴りかかってい映像を、日本のニュース番組でも流れていたのをたまたま観たことがあって、「ああ、あの事件の映画化なのか!」と。

ただ、実録モノではなく、あくまでストーリーのモデルということなので、映画と実際の事件の顛末とは若干違いがあるようです。

チェイサー1
元刑事でいまはデリヘルの元締め稼業をしているジュンホ(キム・ユンソク)。
最近、ホステスの何人かが突然失踪してしまってイライラしています。

ある日、7歳の娘(演じている子役がむちゃくちゃカワイイ!)を持つホステス、ミジン(ソ・ヨンヒ)にお呼びがかかります。
彼女は風邪で寝込んでいたのですが、それでもお構いなしに仕事を強要する鬼のような女衒のジュンホ。
仕方なく娘を家に残し、仕事に向かうミジン。

彼女を呼んだ客はヨンミン(ハ・ジョンウ)という若い男。
広い邸宅に一人で住んでいるヨンミン。庭には汚れてやつれた犬が一匹放し飼いになっています。
異様な雰囲気に不安になるミジンは、シャワールームであるおぞましいものを見つけてしまいます。

時すでに遅し。ミジンはヨンミンに監禁され・・・。

一方、ミジンまでも失踪してしまったことで、ジュンホは怒り心頭で彼女の行方を追います。
ミジンを含め、失踪したホステスを呼び出した電話番号がすべて同じことに気づき、それがヨンミンであることがわかったジュンホは、いろいろあった挙げ句ようやく警察にヨンミンを突き出すのでした。

ジュンホはヨンミンがホステスを海外へ売り飛ばしたと思っていたのですが、なんとヨンミンは失踪したホステスの殺害を自供してしまいます。
しかも、ミジンは殺さずにまだ生かしているとも。

しかし、物的証拠がなにもない。そのうえジュンホや警官たちがヨンミンに暴行を加えたことで世間体を気にする検事は、拘束期限の12時間を超えた時点でミンを釈放してしまいます。
納得いかないジュンホは、単独でミジンの行方を追うのですが・・・。


チェイサー2
犯人の描き方には『羊たちの沈黙』(91)『セブン』(95)といった作品からヒントを得ている部分もあるのでしょうが、本作に置いて凶悪殺人犯ヨンミンを演じるハ・ジョンウの演技は、このジャンル・ムービーの新たなスタンダードを作ったかのよう。
おそらく本作の観客すべてが彼に憎悪を抱くことでしょう。
それだけ巧いってことですが、彼は『ノーボーイズ・ノークライ』(09)で妻夫木聡と共演した俳優ですよね。こちらは未見なので、どれくらい演技の幅があるのか観てみたいですね。

さらに本作を魅力的にしているのが、主人公のジュンホというキャラクター。
これがとってもいい味をだしていて、この手の役を演らせりゃソン・ガンホあたりがピッタリかと思うのですが、演じるキム・ユンソクがこれまた上手いんですよ。
最初は血も涙もないような男として描かれるのですが、ヨンミンに対する感情がホステスを奪われたことへのストレートな怒りだったのが、母親の帰りを待ちつつ気丈にふるまうミジンの娘に会ってから、この子の元へ母親を帰してやりたいという心境の変化を見せる演技が見事。
このジュンホとミジンの娘(ほんとにこの子役、カワイイうえにこれまた演技が上手いんですよ!)とのシチュエーションは、殺伐とした物語のなかで僅かながら温かみを感じさせます。
さらに、それは観るものの感情をいろんな意味で激しく揺さぶる映画のクライマックス(これには正直、驚かされました)を経てさらに強固なものになっていくのです。


監督したナ・ホンジンはなんと本作が長編デビュー作とのこと。
そんなことなど微塵も感じさせない演出の妙と、全編を貫く緊張感(劇中何度か登場する走る描写の疾走感!)は、もちろん演じる俳優の上手さもあるのでしょうが片時も目を離せません。
いやぁ、凄い監督が出てきましたねぇ。


ところで、本作だけじゃないんですけど、なんで韓国映画における警察の描き方って、ああなんでしょう。
っていうのは、たいていの作品で警察官や刑事がおしなべてやる気なさげに描かれてるように思うんです。
いや、実際はそうじゃないんだろうけど、なんだろ、韓国映画には権力批判をする風潮みたいなものが習慣としてあるのでしょうかね?


【採点:100点中80点】


※ほんと、映画館で観たかったなぁ・・・。




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