FC2ブログ

■『ラブリーボーン』■(映画) 


ラブリーボーン
その昔、丹波哲郎氏の『大霊界2 死んだらおどいた』(90)が公開された際、公開初日に銀座の東劇で舞台挨拶があったんですけど、舞台挨拶が終ってからでも劇場のロビーで丹波氏、切々と霊界のお話をマスコミやお客さんの前でお話してらっしゃいました。
その中で、「3作目はシャーリー・マクレーンと一緒に作るよ!」なんておっしゃってましたが、結局それは果たせないままになったのはご存知のとおり。

日本では丹波氏、ハリウッドではシャーリー・マクレーンが霊界の代弁者として有名ですが、ピーター・ジャクソンの最新作である『ラブリーボーン』は、まさにそんな『大霊界』のような内容でありまして、殺人事件で亡くなったヒロインが天界から自分の家族の生活を眺めているというユニークなお話。

原作はアリス・シーボルトという方が書かれたベストセラーなんだそうで(知りませんでした)、ピーター・ジャクソンがこれを映画化しようと思い立ったのは、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(02)の製作中だったとのこと。
フィリッパ・ボウエンとフラン・ウォルシュによる脚色、WETAによるSFXと、これまでと同じくいわゆるピーター・ジャクソン組によって作られた本作、『LOTR』も『キング・コング』(05)もお気に入りなだけに、本作もけっこう期待しておりました。

ラブリーボーン1
スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は14歳。
お父さん(マーク・ウォールバーグ)とお母さん(レイチェル・ワイズ)と妹と弟の5人暮らし。
たまに家にやってくるアルコール依存症のお婆ちゃん(スーザン・サランドン)は、お母さんと仲が悪い。
まぁ、どこにでもあるような普通の家庭でしたが、ある日、スージーは近所に住むハーヴィ(スタンリー・トゥッチ)という男に殺害されてしまうのでした。
スージーの魂は天国と現世の間を漂いながらも、自分がいなくなった元の世界を目の当りにします。
自分の死を嘆き悲しんだ挙げ句、夫婦の間に亀裂が生じるお父さんとお母さんの姿。
自分を殺したハーヴィが今度は妹を狙っている。

魂となってしまったスージーは、いかにして事態を収拾することができるのでしょうか・・・。


物語はかなりショッキングな設定であり、たしかにスージーがハーヴィに襲われる場面も描かれるのですが、具体的な殺害シーンというのは描かれません(原作では具体的に描かれているそうですが)。
かなり幻想的な表現でスージーが殺害されたのだな、と理解させるような処理がなされており、ここはピーター・ジャクソンのカラーが色濃く出ている場面だと思いました。

むしろ、スージーが漂うことになる、現世と天国の間の世界というのがじつにファンタジックで、悲壮感を感じさせない作りにはなっているし、そこでスージーが出会う東洋系の少女との描写は、あの世というよりもまるでテーマパークにでも迷い込んだかのようなポップな表現が施されていて、正直なところ相当な違和感を抱いてしまいました。
これは原作自体がそのようなカラーなのかもしれませんが。

ただ、ハーヴィという人物の異常性が明確になる後半、妹がそれに関わってくるあたりから映画はサスペンス・タッチが色濃くなってきて、相当に緊張感を持った流れになってくるのですが、結局はそれも中途半端な印象が否めないんです。


ラブリーボーン2
この映画、サスペンス映画というよりも、肉親を失った家族の再生とヒロインの精神的な成長に重きが置かれていて、たしかにそれも重大なテーマなんだろうけど、本作のベクトルとそれを観るこちらのベクトルにはかなりの開きがあるようで、先にも書いたように違和感を抱いてしまったのは、そのあたりが原因なんだと思います。

特に、クライマックスでいよいよ天国へ向かおうとする、仏教でいうところの成仏しようとするスージーが、
「やり残したことがある」
と言って思いとどまるシチュエーションがあります。
詳細については触れませんが、その「やり残したこと」ってことに対して、思いっきりこちらの予想を外してくれるあたりなんて違和感の最たるものでした(笑)
よくよく考えてみれば、「なるほどなぁ」と理解はできるんですけど、普通はそこではそう考えないでしょ、と思わずツッコミ入れてしまいたくなりました。


たとえば、今日はたらふく寿司を喰うぞ! と意気込んで回転寿司屋に入ったらば、その日はデザート・サービス・デーでケーキや和菓子ばかりが回っているような感じ。
ケーキや和菓子も美味いんだろうけど、こちらは寿司を喰うモードになっているので、
「おいおい、寿司はどうしたの?」 と訊ねると、
「ウチはもともとデザート専門店なんすよ、すみませんねぇ」 と言い返されるような、そんな映画でございました・・・。

おそらくこれが丹波氏だったら、しっかり寿司を喰わせてくれたことでしょう(ただ、それがハンバーグやからあげが乗っかっている変化球みたいな寿司の可能性は高いですけどね)。


ラブリーボーン3
スージーを演じたシアーシャ・ローナン、『つぐない』(07)での見事な演技が印象的な女優でしたが、本作ではさらに魅力的になっており今後の活躍がとっても楽しみ。
脇を固めるのがマーク・ウォールバーグにレイチェル・ワイズ、スーザン・サランドンにスタンリー・トゥッチと、けっこう贅沢なキャスティング。
これら俳優の演技を観る楽しみもありましたが、いかんせんストーリーが満足いくものではなかったのが残念・・・。
もっとも、いくら好きな監督でも全部が全部、お気に入りというわけではありませんからねぇ。
ピーター・ジャクソンの作品では、それが本作になってしまったということです。

あ、そのピーター・ジャクソン、見間違えでなければ、劇中でマーク・ウォールバーグが写真屋へ行く場面で、背後でカメラを構えている人物として登場していますよ。

(TOHOシネマズ橿原にて鑑賞)

【採点:100点中55点】


※アリス・シーボルトによる本作の原作。
映画はピーター・ジャクソンのカラーが薄かったように思いましたが、むしろ原作の方がピーター・ジャクソンのテイストに近いのかも?



※シアーシャ・ローナンの演技が見事だった『つぐない』。
本作でも彼女の魅力がいかんなく発揮されています。





コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://binsan67.jp/tb.php/82-1a0a603b