◆『オカルト』◆(DVD) 


オカルト
昨年(2009年)は、一年の間に4本も監督作品が公開されるという、じつに精力的な活動をされている白石晃士監督。
その中の1本である『グロテスク』(09)は、イギリスでDVDが発禁扱いになったなんてニュースが一般紙に掲載されるなど、記事の内容がどうであれ日本に白石晃士あり! とその名が知れ渡ったのは、映画監督としては「おいしい話」だったんじゃないかな、なんて無責任なことを思ったりするわけで。

さて、その白石監督が『グロテスク』と同じく2009年に発表したのが、今回観た『オカルト』。
内容は同監督が2005年に発表した『ノロイ』(05)と同じくフェイク・ドキュメンタリー。
本作に限らず、レンタル・ショップに行くとそれこそ何作ものこの手の作品が並んでおりまして、こういうジャンルが好きな僕でもなにから手を出せばよいのやら迷ってしまいます。
明らかに、仕上がりがチャチそうだなぁ、という匂いがジャケットから伝わってくるものが多い中で、それでも『ノロイ』なんて作品は劇場公開された作品でもありますし、それなりのクオリティもあるので、この手の作品をチョイスするのに迷ってらっしゃる方は、ぜひご覧になるとよいでしょう。

奇しくも、昨年末には『フォース・カインド』が公開されたり、この週末からは『パラノーマル・アクティビティ』が公開されて、いずれもマスコミが大きく取り上げるなど、フェイク・ドキュメンタリーが静かなブームになりつつある予感がしないでもないですが、まぁ、この手の波ってのは今に始まったことじゃありませんし、なんだか周期的にブームが到来しているようなそんな感じがいたします。

世界的に不況が続く昨今、日常の中に潜む異常、しかも極めてリアルな異常を目の当たりにすることで、現実逃避したい人々が増えるという説もあるようですが、僕自身は単に人間誰しも持っているだろう「コワいもの見たさ」な部分を刺激する要素がある。
ということはホラー映画と本質は同じなんだけれども、はなっから「胡散臭さ」がぷんぷん漂っているんだけれど、フェイクとはいえドキュメンタリーの手法をとることで「胡散臭さ」のなかにも「さもありなん」と思わせる信憑性っていうんでしょうか、それが「コワいもの見たさ」な部分を、たとえばホラー映画の1.5倍程度増量して刺激するからこそ、人々は飛びつくんじゃないのかな、なんて思うわけなんであります。


で、なんの話だったっけ?
あ、そうそう、白石監督の『ノロイ』はそんなフェイク・ドキュメンタリーの王道を行くような作品でありまして、王道を行くからこそ懲りすぎたきらいがあって、それゆえちょいと残念な仕上がりになっておりました。
それについては映画を観た当時に、ミクシィのレビューでダラダラ書き連ねたのでいまさら蒸し返すつもりはありませんが、そこで今回の『オカルト』ですよ。
同じ監督だし、おそらく『ノロイ』と同工異曲な内容だろう。
どうせ二番煎じみたいな仕上がりだろうな、と思いつつ、それでもなぜかこの監督の作品には惹かれるものがありまして、早速拝見いたしました。

とある通り魔事件を発端として、その被害者のひとりである江野くんへの取材をする白石監督以下スタッフ。
その江野くん、通り魔にナイフで背中を切りつけられるも一命をとりとめる。
事件後、江野くんはいろんなモノが見え、いろんな声が聴こえるという。
しかし、取材を進めるうちに事態はとんでもない方向へと進んでいくのでした。

・・・簡単に書けばそんな内容。


そこにタイトル通りオカルトのカテゴリーがてんこ盛り!
心霊現象にUFO、はては民俗学の要素も加わって(黒沢清監督まで出てますよ)、僕の興味のストライク・ゾーンど真ん中、っていうのは、『ノロイ』とまったく同じスタイル。
でも、本作はクオリティが格段に高くなっていて素直に楽しめました、というかとっても嬉しかったし感動さえ憶えるほどの仕上がり。
そりゃあもう、『フォース・カインド』や『パラノーマル・アクティビティ』に比べりゃ、数千倍も面白かったですよ!


特に主人公(?)である江野くんという人物設定に味があるんです。
そうそう、こんな奴いるいる、って思わせるようなイヤな奴(笑)。
近くにいたら思わずぶん殴ってやりたくなるようなこの江野くんというキャラクターは、実際に白石監督の身近にいる人がモデルなのかどうかわかりませんが、監督の人間観察の妙っていうんでしょうか、それがいかんなく発揮されていて、こういう点ひとつをとっても映画に信憑性を帯びてくるわけです。
しかも、江野くんが派遣社員であるという設定が現代社会を見事に反映しており、これが単なるキワモノ映画に終らない奥深さがあるところも、日本におけるフェイク・ドキュメンタリーの秀作といってもいいんじゃないかと思います。

さらには、危惧していた『ノロイ』にあった、演技者の上手さが逆に信憑性を損ねているという点も、本作では克服されていたのも良かったです。
本作に登場する人々は、もちろんフェイク・ドキュメンタリーですから、その大半はホンモノの役者さん(あ、観たことある! という方もチラホラ)。
しかし、それぞれに演技経験のある方ばかりなのでそれが身に染み付いてしまっているがために、逆に素人に見えないというのはこの手のジャンルではマイナス面になってしまいます。
それを『ノロイ』で痛感したわけですが、本作では特に江野くんを演じる宇野祥平氏がほんとに上手くって、その自然な演技に思わず感動してしまったわけです。
もっとも、とんでもなくヤなキャラクターですけどね(笑)


とにかく、観たいと思うこともキチンと見せてくれるし、映画は次第に反社会的な色合いが濃くなって行く。
特にクライマックスの異様なほどのテンションの高さのなかに、とある映画ネタを挟み込んで緊張と緩和を繰り返しながらのあの驚天動地な結末。
それでも、最後の最後にキチンと教訓を挟み込んでいるところなどは、監督の良心なのでしょう。
『グロテスク』ではそんなものは、微塵もなかったですが(笑)、白石監督も人の子なんだな、と安堵いたしました。


これまで、日本のフェイク・ドキュメンタリーは、山内大輔監督の『無残画』(99)が個人的にはベストだと思ってましたけど、本作はそれを軽く凌駕していました。
放り出されたままの謎もいっぱい残ってますし、ツッコミどころもいっぱいありますが、そんな細かなことはどうでもええわ、って思うくらいの映像力と、やっぱり白石監督のサービス精神旺盛なその姿勢がお見事でありました。
必見!!

【採点:100点中80点】


※ま、ダマされたと思って、いっぺんご覧あそばせ(笑)


※懲りすぎて、墓穴を掘った感のある作品でした。


※万人にはお薦めしませんが、その構成とアンダーグラウンドに光を当てたという意味では稀有な作品だと思います。



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