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■『オーシャンズ』■(映画) 


オーシャンズ
自然をテーマにしたドキュメンタリー映画には、なぜか昔から食指を動かされまして、本作も2年前に公開された『アース』(07)とよく似た内容だろうなぁ、と思いながらもついつい劇場へ足を運んでしまうのです。
今回の『オーシャンズ』は、『アース』を作った英BBC製作の作品ではなく、『WATARIDORI』(01)を作ったジャック・ペラン以下スタッフが再結集したフランス映画(ちなみにアメリカではディズニーが配給。このあたり、日本と扱いがちょいと違いますねぇ)。

フランスも、ジャック・クストーの例を挙げるまでもなく、これまで多くのドキュメンタリー映画を作っていて、特に『WATARIDORI』の驚異の映像(カメラと平行飛行する鳥の映像)が話題になったり、『皇帝ペンギン』(05)が大ヒットしたりと、日本でもこのフランス製ドキュメンタリー映画はけっこう公開されていますよね。
ちなみに本作を製作・監督したジャック・ペランは、かの『ニューシネマ・パラダイス』(89)での演技で日本でも俳優としての知名度も高いでしょうが、今回は裏方だけでなくちゃっかり本編に登場しているところが、俳優魂を感じずにはおれませんなぁ。


さて、肝心の内容ですが、まず登場するのがジャック・ペランにソックリなガキンチョ、もとい、お子ちゃまで、彼はジャック・ペランの実の息子さんだそうな(そりゃ、ソックリなわけだ)。
彼が大海原を眺めて「海って何だろう?」と疑問を持つところから始まって、映画は2時間弱これもか、これでもか、ってくらいに海の映像テンコ盛り。
実際にジャック・ペラン自身、息子さんに同じような質問をされたのが本作を作るきっかけだったとか。

お子ちゃまの一言がフランス映画界を動かす(そして7年もの撮影期間を要する)んですから、凄いですよねぇ。

オーシャンズ3
とにかく、よくぞ撮ったものだなぁ、とビックリするような映像の数々には驚くことしきり!!

魚や動物はもとより、嵐の海や荒れ狂う波にもみくちゃにされる漁船の映像(これを撮るだけで3年かかったらしい)は、いくらSFXが発達していても本物がもつ迫力に圧倒されます(思わず船酔いしそうになるくらい)。

さらには海の中を移動させるスティディカム・カメラや、撮影用小型ヘリコプターを開発したりと、それらによって収録された映像が画面狭しと繰り広げられる様は、大スクリーンによる迫力と音響効果による臨場感でもって、これぞドキュメンタリー映画を映画館で観る醍醐味だと実感させてくれます。


ただ、全体的な印象は過去のこの手の作品、最初に書いたようにたとえば『アース』などでも同じだったので、新鮮さという点では低くいと言わざるを得ません。
しかも、驚異の映像の連続の後にあるのは、環境破壊や生命の尊さを謳いあげるという、お決まりのパターンになっており、観ているうちに悪くいえば説教臭くなっていくんですよね。

特に冒頭に出てきたガキンチョ、もとい、お子ちゃまに続いてジャック・ペラン本人まで登場するくだり。
親子共演でもって絶滅した生物の標本が多数展示されている博物館(実在する博物館ではなく、撮影のためにわざわざ作ったセットだとか。そこに多少なりとも違和感を覚えてしまったのですが。それについては後述)を歩き回る場面から、そのあたりの説教臭さが顕著になってきます。


また、自然の厳しさを伝えるという点において、たとえば生まれたばかりのウミガメが海鳥にさらわれる場面はもちろん、オタリア(アシカ)の赤ちゃんがシャチに喰い散らかされる場面(けっこうショッキング)などは、じっくりスローモーションで劇的に映し出す。
そこに宮沢りえによる、
「これも自然のバランスなのです」
という感情を押し殺したかのような淡々としたナレーションが入るそのアンバランスさ。
入場料金500円キャンペーンで場内には小学生くらいのお子ちゃまも多数おられましたが、彼らには多少なりともトラウマになったことでありましょう(個人的にはこういう映像はむしろ見せるべきだと思いますけど)。


それだけではなく、そのトラウマにさらに追い討ちをかけるように登場するのが、ヨシキリザメのフカヒレを採取する漁師を映した箇所。
漁船に釣り上げられ、無残にもヒレを切り落とされたサメが、もがきつつ血を噴き出しながら海底へ沈んでいく様を、カメラは克明に映し出すのです。
続いて、イルカやクジラが銛で撃ち殺される場面等などなど、かなり後味の悪い一大ジェノサイド・シーンの連打には、深海の底のごとく場内も静まりかえっておりました。

ジャック・ペランは、実際に海で行われている人間が自然に及ぼしている危害についても克明に記録したい、ということでこれらの映像も組み込んだそうですが、その意見には大いに賛成です。
ユニークやキュートな生物、あるいは驚異の映像ばかりを羅列するのではなく、人間とて海を介して生活している生物なのですから。
かわいいおととの映像を期待して劇場にやってきたファミリー層には、ちょっと薬が効きすぎるかもしれませんけど・・・。


オーシャンズ2
ところで、映画のエンドクレジットで、こういった殺戮場面はアニマトロクスを使用した特殊撮影であり、「本編では一切生物に危害を加えていない」という注釈が出ます。
それを見て、「これはドキュメンタリーじゃないのか」と言った観客に対して、「残念なことです」とジャック・ペランが語ったとパンフレットにも書いてありました。

ペランの言いたいことはわかります。
それがホンモノの映像なのかどうかが問題なのではなく、そういう行為が行われていること自体が問題なのだというのは。
でも、同じ描くならば、自然に危害を及ぼす人間は悪、という視線ではなく、海を介して共存する生物のひとつとして、その漁師の言い分をもフィルムに収めるべきではないか。
昨今騒がれているシー・シェパードの事件をここに持ち出すつもりはないですが、それこそ水平線の如く広い視線が作り手にも欲しかったなぁ、というのが素直な感想です。


それはそれとして、わざわざ費用のかかるアニマトロクス(それでもあのサメは、かなりリアルだったけどなぁ・・・)を使ってでも、人間の蛮行を描きたいという熱意も理解できなくはない。
しかし、自然の姿を記録したドキュメンタリー映画という体裁であり、なおかつテーマ性をもった作品であるだけに、先に書いた撮影用にセットを組んだ博物館ともども、ちょっと腑に落ちない印象を持ったのも確か。

ホンモノの映像だと思って映画が描くことに賛同する、賛同しない、のいずれにせよ、なんらかの感銘を観客に与えているだろうに、「これは作り物でした」と手の内を明かすことでせっかくの説得力が損なわれてしまうんじゃないかって、僕は思うのですよ。

少なくとも、物分りの悪い、ジャック・ペランの言う残念な僕には、どうしても
「余計なことしなくてもいいのになぁ」(手の内を明かしたことに対して)
と、そういう印象が残ってしまって、観終ってもどうも腑に落ちない気分になっちゃったんですよねぇ。


ところで、もういい歳だろうジャック・ペランに、あんな幼い息子さんがいるってことが、本編における一番の驚異だ!!

(TOHOシネマズ橿原にて鑑賞)

【採点:100点中55点】


※とにかく、この映像には驚かされましたよ。


※ジャック・ペランは、大人になったトトとして出演しています。




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