■『かいじゅうたちのいるところ』■(映画) 


カイジュウタチノイルトコロ
僕が住む奈良県は今年、平城遷都1300年ということなんですが、なんだかいまいち賑わってないよねぇ、というのが実感だったりします。
ま、それはともかくとして、遷都って何? という方でも、「せんとくん」のことは知らない方はいまや少ないんじゃないかと思います。

平城遷都1300年祭の公式マスコット「せんとくん」。

あのデザインが発表された時の反応は、いまから考えるとほんとにユニークでした。
「かわいくない」「キモい」などなど、大半が否定派だったのは、その選定方法からくる批判も伴ったことも要因だと思いますが、かくいう僕も最初にあのデザインを見た時は「なんじゃこりゃ?」と思ったものです。

しかし、デザインを担当した籔内佐斗司氏だと聞いて、納得。

籔内氏の展覧会は過去に行ったこともあって、その作品には以前から慣れ親しんでいたのです。
よく見かけるイラストのほうの「せんとくん」はどこかキュートで、一見、薮内氏の作品とは思えなかったんですけど、中に人間が入っている(ダンスまで披露する)着ぐるみのほうの「せんとくん」は、イラストとちょっと雰囲気が違って(わかりますかねぇ?)、これまでの籔内氏の作品に近い表情をしてるんですよね。
ま、そんな「せんとくん」ですが、いまじゃ認知度も高まって、おそらく発表当時ほど否定的な方は少なくなったんじゃないかというのは単なる思い過ごしでしょうか。

一見、「キモい・・・」と思っても、次第に見慣れてくる。
まさに、今回観た『かいじゅうたちのいるところ』に出てくる、「かいじゅう」に対する印象がそれだったんです。

カイジュウタチノイルトコロ2
モーリス・センダック原作の絵本を、鬼才スパイク・ジョーンズが映画化、となると普通の映画に仕上がるわけが無いとは思っていましたが、実際に映画のほうはとんでもなくヘンテコかつ愛すべき映画に仕上っていました。


主人公のマックスくん(マックス・レコード)は8歳。
両親は離婚し、お母さんとお姉ちゃんと3人暮らし。
お母さんには新しい恋人ができ、お姉ちゃんはかまってくれない。
そんな毎日に嫌気がさして、とうとうかんしゃくを起こしたマックスくんは、家を飛び出します。
小船に乗って大海原へ出航!
やがて、マックスくんは7人の奇妙な「かいじゅう」が住む島へたどり着きます。
そこで繰り広げられる冒険の数々・・・ってなお話。


ストーリー自体は至極シンプルなんですが、そこはそれ、監督がスパイク・ジョーンズですから、シンプルにはいかない。
上に書いたように冒険の数々が展開されれば、まぁ、老若男女楽しめるエンターテインメントになろうものを、そうはいかないのがこの映画。
とにかく、島でのエピソードのなんとシュールなことよ(鬱蒼とした森を歩いていたと思えば、突然砂漠の風景になったりする)。

それぞれ個性的な7人の「かいじゅう」とマックスくんのまったく噛みあわない会話(なかば哲学的であったりする)も、観ていてイライラする方も相当に多かったろうと思います。
それよりも、本作をファンタジー巨編として売ろうとする映画会社も、さぞかし扱いづらいことこのうえなかったことだろうと思いますよ。
実際、映画としては一番盛り上がるはずのファンタジックな部分で、こっくりこっくり船を漕いでらっしゃる方や、そわそわトイレに行く方思いっきり伸びをしている方が散見できて、スクリーンそのものよりも客席の反応のほうが興味深かったりして(笑)


しかし、この映画、時間の経過としては、マックスくんが家を飛び出して、おそらく疲れはててどこかで眠り込んでしまった際に見た「夢」が描かれているのは明白であり、その「夢」を見ることで自分にとって大切なものはなんなのか、を再認識して再び家に戻るという、それだけの物語。
その間、たった一晩(いや、ほんの数分間かもしれない)の出来事なんですよね。

原作の絵本は未読ですが、なんでも数ページで終ってしまう短いお話ということなので、おそらくは上で書いたようなことが集約されているんだと推察いたします。
これを観て思い出したのが『オズの魔法使』(39)。
主人公ドロシーが数々の冒険ののち、「お家がいちばんだわ」と悟ったことと、本作におけるマックスくんのラストショットの表情には共通するものがあると思います。
それを考えれば、本作は現代の「オズの魔法使」といえるのかもしれません。


興味深いのは、「夢」の中に出てくる7人の「かいじゅう」。
これはマックスくんの心の動き(怒り、悲しみ、嫉妬、喜び、愛情などなど)が具現化したものと考えれば、じつにわかりやすい映画。
ほかにも「いいことばかりになるはずだった場所」という言葉が登場するんですけど、これもいったいなんの揶揄なのかは、映画を観ていれば自ずとわかってくる。
「かいじゅう」の中心人物(?)であるキャロルも、最初はマックスくんと友好関係にあるのに、途中で仲たがいして最後にはマックスくんを食べてしまおうとする。
そのマックスとキャロルの関係がどのように収束するか。
で、そのキャロルというのはマックスくんの心のどの部分なのか。
それらを考えて本作を観れば、クライマックスが何倍も魅力的になってくるからアラ不思議!!

とはいえ、かなり癖のある映画ですから、万人受けはしないと思いますが。

日本吹き替え版ではマックスくんをかの加藤清史郎くんが吹き替えしてるんですけど、はたして映画のことを十分理解してアフレコしていたのか、それがとっても興味深いところでありますなぁ。


カイジュウタチノイルトコロ1
やっぱり、「かいじゅう」のデザインが、物語以上にシュールで、いわゆる「キモい」んですよ。
監督したスパイク・ジョーンズの意向で、本作の「かいじゅう」はオーソドックスな着ぐるみで表現することになったそうですが、最初の編集版では「かいじゅう」の表情もまったく手を加えなかったとのこと。
すると、試写を観た子供たちが泣き叫んでしまったってことで、CGで表情に変化をつけて最終版としたそうな。
それでも、けっこう不気味ですけどねぇ・・・。


初めて本作の予告編を観た時は、着ぐるみの動物が芸能界の裏側をドロドロと演じる、ピーター・ジャクソンの珍作『ミート・ザ・フィーブルス/怒りのヒポポタマス』(89)や、マルキ・ド・サドの物語を着ぐるみの動物が演じる『マルキ』(89)を初見した時と同じような不気味さを抱いてしまいましたが、この魅力的な物語のおかげで、「せんとくん」に慣れるよりもずっと早く愛着が湧きましたとさ。

(TOHOシネマズ橿原にて鑑賞)

【採点:100点中70点】


※モーリス・センダックによる原作絵本。
一度、じっくり読んでみようっと。



※好きな人には、たまんないんだろうなぁ・・・。
せめて、もう1ケタ少なければ手が出せるのに(バラ売りもあり)。



※『LOTR』以前のピーター・ジャクソンの傑作!!
泣けますよ・・・。



※これ、とっても好きなんですけどね。
いまだにDVDになってないのね・・・。




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