■『今度は愛妻家』■(映画) 


コンドハアイサイカ
ちょうど僕が中学生から高校生の間というのは、いわゆる角川三人娘の人気絶頂期でありました。
中学の時のクラスメートに、それはそれは薬師丸ひろ子の大ファンがおりまして、「バラエティ」誌の切り抜きなんぞを透明下敷きによく挟んではご満悦だったことを思い出します。

かくいう僕はといいますと、『犬神家の一族』とか『人間の証明』とか、ケレン味あふれるエンターテインメント作品群を連発する角川映画にはとっても興味を持っていたものの、薬師丸ひろ子や原田知世などを主人公としたアイドル路線にシフトしていったその経営方針に抵抗を感じてしまい、その流れで薬師丸ひろ子も原田智世も好きじゃない、というか、ほとんど興味がなかったんですよね。

もっとも、個人的には渡辺典子が一番好み、ってこともあったんですけど、なぜか彼女の人気は他の二人に比べるといささか低めだったことにも、ムッとしてたりしたわけですが。
だから、『セーラー服と機関銃』も『時をかける少女』も映画館で観てません。
後にTVで観て、なんと食わず嫌いをしていたものよ、と反省することしきりではありましたが。

そんなアイドルだった薬師丸ひろ子も原田智世もいまじゃいい女優さんになって、特にここ数年の薬師丸ひろ子の存在は、日本映画界においても確固としたポジションにいることは誰もが認めることでしょう。
さて、そんな彼女が出演している本作。
僕自身、この映画を観て初めて薬師丸ひろ子という女優がとっても好きになりました。
とにかく本作での彼女、とってもキュートなんですよ。
いやぁ、これは男だったら惚れるでしょうよ。そういう意味では目からウロコが落ちたような気分です(笑)

ろくに仕事もせず怠惰な毎日を過ごす写真家北見(豊川悦司)。
そんな彼に呆れつつもなんやかんやと気遣う妻のさくら(薬師丸ひろ子)。
今日も今日とて、さくらが旅行に行ったことをいいことに、女優志望の蘭子(水川あさみ)を家に連れ込んでエッチしようとしたところにさくらが帰ってくる。
あきれ果てて家を飛び出すさくら。憎まれ口で送り出す北見。

さて、この夫婦の関係は修復されるのでしょうか、というのが大まかなストーリー。
ここに、北見の助手(濱田岳)と蘭子のエピソードや、面倒見のいいオカマの文ちゃん(石橋蓮司。絶品!)などが物語に絡んできて、ストーリーに奥行きを持たせていきます。


夫に愛想をつかして家を飛び出すさくらですが、その後、ちょこちょこ家に帰ってくる。
そのたびに北見はつれない言葉を投げかける。
このあたりの夫婦のすれ違いがコメディ・タッチで描かれていきます。
事態は決してコメディではなく、シリアスに描こうと思えば、とことんそっちの路線でになろうドメスティックな物語を、笑いというオブラートで包んでいくそのスタイルが秀逸。
それが次第にシリアスな色合いに移っていく後半に絶妙に利いてくるんですよね。これは見事だと思いました。

この映画、注意して観ていればかなり早い段階で物語のキモの部分がわかるようになっていて、これは作る方もそれを考えたうえで、わざとわかりやすくしているんじゃないかって、思ったくらい。
でも、わかったとしても北見とさくらの物語にどのような決着をつけるのか、それがとっても気になって仕方なくなってくるんです。

監督は行定勲。
けっして嫌いな監督じゃないのですが、数年前の『遠くの空に消えた』(07)での妙に芝居がかった演出が鼻について、あまりいい印象じゃなかったんですよ。そんなこともあって、その後数作は敬遠していました。
本作も観ている間、どうも舞台劇のようなセリフ回しだなぁと思っていたら、これは映画を観終わってから知ったんですけど、もともとは舞台劇なんだそうで。なるほど。
やっぱり映画と舞台では、違うと思うんですよね。
そこからくる違和感は正直なところ最後まで拭えなかったんですけど、出演者の好演もあって(何度も書きますが、オカマ役の石橋蓮司が絶品!!)、じつに後味のよい映画に仕上っていました。

特に、とうとう家を出て行くと言い出すさくらの姿を、写真に撮る北見。
ここはとても秀逸な場面になっていて、この時の薬師丸ひろ子の表情がいいんですよ。
やっぱり彼女はひとつのムーブメントを作ったアイドルだったんだなぁ、といまさらながら実感させられました。


一度壊れてしまったものをどのように修復するのか。
いや、はたして修復することができるのか。
では、修復するには何が必要なのか。
この映画は、それを静かに語りかけてきます。

幸か不幸か、僕はまだ独り者ですから、おそらく結婚されている方がご覧になると、もっといろんな受け取り方ができる作品だと思います。
いずれ、僕自身にも連れ合いができたならば、本作のことを思い返してみたいものです。

【採点:100点中70点】


※本作の原典である、お芝居の戯曲集。
2002年に関西では今は亡き近鉄小劇場で上演されたんですねぇ・・・。ちなみに東京では俳優座劇場だったそうです。



※眺めてみればヒット曲が多いですね。
なかでも、「天に星、地に花」は名曲だとおもうぞ・・・。







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