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♪『BALLAD 名もなき恋のうた』♪(サントラ) 


バラッドナモナキコイノウタ

『映画版クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(02)を原作に、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)の山崎貴監督が実写映画化した作品のサウンドトラック。スコア担当は佐藤直紀。

『K-20 怪人二十面相・伝』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』、『おっぱいバレー』、『ハゲタカ』と最近での精力的な活躍をみるに、彼に対する絶大な信頼のほどがうかがい知ることができるというものですが、映画をサポートすることはもとより、毎回明確なメロディを伴ったスコアを聴かせるというそのスタンスは、簡単そうに見えてけっこう難しかろうと思います。
いみじくも佐藤氏自身が本作の劇場パンフレットに寄せたコメントに、
「直球ストライクの音楽を作るのって結構恥ずかしくて勇気がいるんです。才能はいらないけど(劇場パンフレットより)」
とあるのが興味深いところ。まぁ、佐藤氏はいつも控えめなコメントを書かれるのですけどね(笑)

日本映画のみならず、たとえばここ最近のハリウッド作品におけるスコアを聴くにつけ、往年のような心に残る、あるいは耳に残るスコアが激減している現象をみるに、作曲家にスコアを要請する映像クリエイター側の「映画音楽」に対する考え方にも大きな変化が生じていることは明確。
作曲家はいわば裏方なのであり、映画をサポートする役割を全うすればよいのであって、それ以上差し出がましい位置にいずともよい。
とはいえ、ほんの1フレーズだけでも耳に残るスコアを聴かせてくれるだけで、映画そのものに対する印象も大きく変わってくるように思うのは別に映画音楽ファンの僕だけではないでしょう。

ビジネスと割り切って映画にスコアを提供する作曲家(それが作曲家個々のスタンスではなく、そういう製作システムにしてしまった業界に問題があるのですが)も多い中で、自身の言葉を借りれば敢えて「恥を忍んで」直球ストライクなスコアを投げてくる佐藤氏は、これまた自身の言葉を借りれば「勇気の人」なのであり、やはりこういう方がいなくちゃいけないんだ、と今回のスコアを聴いてあらためて実感した次第。

さて今回のスコアですが、映画の内容から昨年の『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(08)のようなスケール感漂うスコアを繰り出してくるかと思いきや、メインテーマの旋律のかくもエモーショナルな響きの美しきことよ。
戦国時代を舞台にしているとはいえ、物語の本質は井尻又兵衛と廉姫とのラブ・ストーリーであり、物語を彩るスコアも正攻法でもってこの身分を越えた愛を讃えています。
ジャパネスク・ムード漂うメインテーマを全編に散りばめつつ、それを奏でるのが二胡にティン・ホイッスル(件の劇場パンフレットによれば、バグパイプにアフリカの民族楽器も使っているそうな)という、片やオリエンタル、片やケルティックとじつにワールドワイドな仕掛けが施してあるのがなんともユニーク。
「愛は世界を越える」という表現は直球ストライクかもしれませんが(笑)、それを納得させてしまう佐藤氏の紡ぎだすスコアに思わず聴き惚れてしまうことしきり。合戦シーンにおけるバーバリズムを伴うスコアもきっちり聴かせてくれるという部分においても期待通りのスコアを聴かせてくれます。
ただ、毎回聴いて思うのですが、今回も「あ、どこかで聴いたようなフレーズ・・・」という印象も無きにしもあらず。
それも佐藤直紀スタイルだ! と許してしまえるだけの魅力があるんですよね。

惜しむらくは映画自体が「生真面目」なカラーが濃厚であり、スコアもそれに沿った仕上がりになっていること。
そんな中でも、作曲期間の制約もあったことでしょうが、演奏する楽器に「遊びごころ」を忍ばせることで作曲家としてのアイデンティティを守っているところがプロとしての姿勢を感じます。
最近の日本映画における習慣とでもいうべきか、本作においてもエンドクレジットにソング・ナンバーが流れるというパターン。これだけのスコアを書く佐藤氏ですから、ぜひ彼が音楽を担当した作品で、エンドクレジットにおいてもソング・ナンバーではなく氏によるスコアを存分に堪能してみたいものです。
それを考えれば、まだまだ佐藤氏の担当する映画音楽には興味が尽きません。

バラッドナモナキコイノウタアラン1

さて、そのソング・ナンバーを唄うのは、『レッド・クリフ』の主題歌がまだ記憶に新しい中国出身のシンガー、alan。
当然のことながら、『レッド・クリフ』のイメージどおり(なんでも山崎監督が彼女を指名したとか)、本作においてもスケール感漂う壮大なラヴ・バラードに仕上っています。

ただ、『レッド・クリフ』の場合はスコアを担当した岩代太郎氏がソング・ナンバーをも作曲するということで、スコアと主題歌に統一感がありました。が、今回はソング・ナンバーは佐藤直紀氏の手によるものではなく、まったくのオリジナル。
alanのヴォーカルそのものは素晴らしい(それに加えてとびっきりの美人!)のですが、映画音楽として聴いた時にスコアとの統一感がないのは、映画音楽ファンとしては残念なのであります。

なお、サントラにはalanの唄うヴォーカル・ナンバーは収録されていません。


【採点:100点中75点】


※映画を気に入った方はぜひ!


※alanによる主題歌。
こちらはDVD付きなので、ヴォーカルとともにびゅ~ちふるな姿を堪能したい方に。



※こちらは主題歌の通常盤CD。
個人的にはこちらのジャケ写のほうがお気に入りです。



※佐藤直紀氏といえば、やはりこれが代表作でしょう。
メインテーマもさることながら、さまざまなテーマの組み合わせの妙が堪能できる好スコア。



※最近のお気に入りはコチラ。
ハリウッドライズされたスタイルのなかにもオリジナリティが感じられ、映画もこのスコアに助けられていた感があります。



※じつは佐藤直紀作品のなかでもっとも好きなのがコチラ。
壮大なスコアでも大編成のオーケストラでもないところに、作曲家としての実力が実感できます。


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