◆『女教師』◆(DVD) 


オンナキョウシ
僕が小学生の頃、父親は週末になるとよく映画に連れて行ってくれたものです。
その前に競艇(住之江とか尼崎とか)に行って、レースに勝てばロードショー館、負ければ名画座というコース。
幼心に名画座へ行くほうが一度にたくさん映画を観ることができるので好きでしたねぇ。
たいてい新世界とか東大阪の布施が多かったんですけど、布施の名画座では邦画3本立てのうち1本はにっかつロマンポルノを挟むということをよくやっておりまして、当然のことながら小学校低学年くらいでしたが、1本だけ観ないわけにもいかず、後の2本の一般映画と合わせて成人映画も観たものです。

モギリのおばちゃんが父親に、
「1本ポルノやけど、(子供に観せて)かめへんの?」
と言ってたものですが、
「かめへん、かめへん。まだわからへんやろうから」
と、平気で僕の手を引っ張っていったものです。
いえいえ、いくら小学校低学年でも「わからへん」ことありませんよ(笑)
そんな父も4年前の3月に亡くなりましたが、そんな父ゆえこんな僕になりにけり。
さて、そういう情操教育のなかで観たにっかつロマンポルノは幾つかあったのですが、強烈におぼえていたのがこの『女教師』(77)とあと1本(これについては別の機会で)。

『女教師』は後になって(ほんとに成人してから)、にっかつロマンポルノのなかでも田中登監督の代表作の1本とも謳われる名作であることを知ったわけですが、幼心ながら学校の先生が生徒にえらい目に遭わされる、というのがなんともカルチャー・ショックでありました。
それゆえに強烈に印象深かったんですよね。

おそらく埼玉県とおぼしき中学校(生徒のツラを観ていると、到底中学校とは思えませんけど)が舞台。
放課後、音楽室で独りピアノを弾く田路先生(永島暎子)。
おもむろに彼女は頭からビニール袋をかぶせられ、数人の生徒に暴行されてしまいます。
首謀者は札付きの不良生徒である3年生の秀夫(古尾谷康雄。のちの雅人と改名。これがほんまに中学生に見えないんだわ)。
田路先生は泣き寝入りせずに、校長と教頭(久米明と穂積隆信。ナイスなキャスティング!)に訴えますが、なにごとも穏便に済ませたい校長と教頭はどうしたものかと頭を抱えるばかり。
生徒指導の影山先生(山田吾一。昔から老け顔)は、秀夫を警察に引き渡せばいいじゃないか! と熱血漢あふれる態度を示しますが、まぁまぁまぁとそれを抑えにかかるのが国語の瀬戸山先生(砂塚秀夫)。
瀬戸山先生はかねてから秀夫の母(絵沢萌子)と通じておりまして、今回の件も彼女から息子の処分を軽くするよう取り引き(自動車販売業なのか、中古のワーゲンと自分の体を融通する。前者はともかく後者はご勘弁願いたい)をしていたのです。
ちなみに砂塚秀夫と絵沢萌子ってたいがいこんな役ばかりです。

じつは瀬戸山先生は田路先生が秀夫たちに襲われている一部始終を覗き見しておりまして、田路先生の弟(福田勝洋)などを騙してアリバイ工作に奔走するという小悪党ぶりを発揮。
さて、教師の間で隠していたはずの田路先生の一件が全校に知れ渡ってしまいます。なんと田路先生が康雄を誘惑したというのです。おかげで生徒たちは授業拒否するわ、婚約者だった浅井先生(鶴岡修)は婚約を破棄。
傷心の田路先生は田舎へ帰郷。

瀬戸山先生も誰がこんな噂を? と思っていたら、噂の発信源は田路先生の同僚の佐藤先生(宮井えりな)だったのです。
なんと彼女も一部始終を目撃しており、日頃、生徒たちの人気が田路先生に集中していることへの嫉妬からあらぬ噂を流したのでした。が、それを知った瀬戸山先生はこれを利用しようと、佐藤先生を取り込んでしまいます。

さて、そうこうしているうちに修学旅行が始まります。が、旅行中に秀夫が行方不明に!!
そして、秀夫から学校に自分は誘拐犯に囚われて暴行を受けている。身代金500万円を払わないと命まで危ないとの電話が。
仕方なく学校側はお金を用意し、秀夫の母親が犯人への受け渡し役として所定の場所へ。
犯人は身代金を受け取ると顔も見せずに去っていく。後に残されたのはボコボコに殴られた秀夫が。
はたして誘拐犯は誰なのか? 映画はさらに浅井先生と佐藤先生が何者かによって殺害されるという事件まで発生しつつ、ラストで思わぬ展開を見せます。


清水一行の原作を映画化した本作は、成人映画ということで物語上過剰な性描写が登場するものの、それを省けばよくできたサスペンス・ドラマの秀作になっています。
生徒による教師に対する強姦事件に端を発し、いつの間にやら物語は誘拐事件にシフトしてくる。
で、挙げ句の果てには殺人事件にまで発展する。
しかし、本質は最初から最後まで一貫したものがあって、ラストでなるほどなぁ・・・と納得させるだけの物語構成になっているのが、当時のにっかつロマンポルノの魅力でもあります。


特に本作に登場する小悪党の瀬戸山という教師。
教師という職業そのものにすでに希望をもっておらず、
「いまの(70年代)なんでもかんでも生徒に詰め込むような教育の仕方じゃダメなんだよ(だから自分は悪党なんだというわけ)
と秀夫に吐露する場面は、映画が公開されて40年過ぎた現代でも通じる(こないだ、どこぞの教師がTVで同じことを語ってらっしゃった)もので、そういう意味ではかなり先見の明がある作品(というか、40年まったく変わっていないというのは大問題だが)だといえましょう。

とにかく、暴行されて訴え出ても取り合ってもらえず、最後には自殺未遂までしてしまうヒロインの境遇もさることながら、彼女と同居し、姉の置かれた立場に苦悩する弟というキャラが映画をより深みのあるものにしていて、そこに元々の事件の首謀者である秀夫の行き場の無い鬱積などがからみあって人間ドラマとしてもじつに奥深いんですよね。
また、物語の重要な場面で泉谷しげるの「春夏秋冬」が流れるんですが、ここも秀逸な場面に仕上っており、なるほど、にっかつロマンポルノ、いや、日本映画のなかでも秀作の誉れ高い映画であることを再認識いたしました。


後に、同じ原作を元に和泉雅子主演でテレ朝の「土曜ワイド劇場」でTVドラマ化されたことがありまして、冒頭で和泉雅子がビニール袋をかぶせられて襲われる場面まで観てたんですけど、
「そんなん観てんと、はよ寝ぇやっ!!」
と母親に怒られて、けっきょくそのドラマは観ずじまいに終っております。


さて、最初にも書いたように本作は小学生の頃に劇場で観たのですが、強烈だったのは冒頭の音楽教室の場面と、砂塚秀夫と絵沢萌子がくんずほぐれつする場面。
特に絵沢萌子なんて当時もTVドラマに普通の役でけっこう出ていたものですから、この映画とTVドラマに出ているのとはなかなか結びつかなかった(同じ顔をしてるのに)ものです(笑)

あと、田路先生の噂を耳にして、彼女を糾弾する組合(日教組?)の教師役に蟹江敬三樹木希林が扮しており、出番は短いながらも強烈な印象を残しています。

【採点:100点中80点】


※なんだか、ドえらい値段がついてますね・・・。
たまにWOWWOWなんかで放映されてるみたいですよ。




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