■『パブリック・エネミーズ』■(映画) 


パブリックエネミーズ
マイケル・マンといえば、一般的には骨太な映画を撮る監督というイメージが強くて、同時に男臭い映画が得意という印象があります。それでいて、女優(ヒロイン)をいいポジションで登場させる(いい女が多いんですよ、彼の映画には)というのは、僕の密かなマイケル・マンに対する楽しみだったりするのです。
『刑事グラハム/凍りついた欲望』(86)(この邦題に凍りつくっちゅうねん)でのジョアン・アレン、『ラスト・オブ・モヒカン』(92)のマデリーン・ストウ、『ヒート』(95)のアシュレイ・ジャッドにナタリー・ポートマンなどなど、むくつけき野郎どものドラマをそっとサポートするそのポジションをほぼ毎回用意しているマイケル・マン。

「彼には女性が描けない・・・」という評価もあったりしますが、個人的には彼の作品、なんというかウマが合うというのでしょうか、いつも観終わってそれなりに満足度を得られるんですよね。


実在したギャングであるジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)の姿を、彼が愛した女性ビリー(マリオン・コティヤール)とのロマンス(というヤワなものではないけれど)を絡めつつ、彼を「公共の敵(パブリック・エネミーズ)」と称して彼を逮捕しようと躍起になっているFBI。その捜査官の一人であるメルヴィン・パークス(クリスチャン・ベール)との攻防を描いた、いわゆる実録犯罪映画。強いていえば日本でいうところの『仁義なき戦い』(73)みたいな感じ。
主人公のジョン・デリンジャーといえば、ジョン・ミリアスの『デリンジャー』(73)がつとに有名なんですが、かくいう僕はその映画をいまだにまともに観たことがないので、本作とくらべるよしもございません。
それだけに余計な先入観無しで観ることができました。


パブリックエネミーズ4
さて、今回もやっぱりマイケル・マンだなぁと、どこがどうこういうのではなく、全体を包む雰囲気っていうんでしょうか、独特の雰囲気が醸し出されていて、エリオット・ゴールデンサールの重厚なスコア、ダンテ・スピノッティの陰影強めなカメラ共々、じつに見応えのある映画になっていました。
ただ、いわゆる伝記映画という、ある種の捉われ感があって、とても正攻法で撮られているんですよね。なんというか、もっと尖ったピリピリしたような感覚が本作はちょっと薄かったように思えたのです。


たとえば本作におけるアクション・シーン、というのは観終わってあまり印象に残らないんですよね。逆に、「え? アクション・シーンなんてあったっけ?」と思うくらい。
無論、ジョニー・デップの魅力的過ぎるデリンジャー役に目を奪われて、そんなシーンなんてあったかな、と思われる御仁もおられるでしょうが、どうやら監督自身、そのあたりへの興味は希薄だったんじゃないかな、と思えるような仕上がりになっていたのは評価の分かれるところでしょう。でも、僕自身、ドラマ重視な本作のカラーは、決して嫌いなものじゃありませんでした。

犯罪一筋に生きてきた男が、とある女性と出会うことで自分の中の優先順位が変わっていくその男心っていうんでしょうか、そういうものはキチンと描けていたんじゃないかと思います。
特に、デリンジャーがビリーと最初に踊ったナンバー「バイ、バイ、ブラックバード」がことあるごとに流れ、それがクライマックスで重要な意味を帯びてくるという描き方は本作の真骨頂であり、いかに虚勢を張る男であってもどこかに弱い部分を持っている、とうこの描き方はいいなぁ、って思いましたねぇ。

パブリックエネミーズ3
面白かったのは、デリンジャーが自分を逮捕しようと躍起になっている、FBIの捜査本部で堂々と出向いていく場面。捜査官らはよもやデリンジャー本人が捜査本部に来ているとは知らずにラジオの野球中継に夢中になっている。
その大胆不敵なデリンジャーの行動と、いかにのんびりした当時の捜査官たちの対比はじつにユニークかつ、考えようによっちゃ恐ろしいことでもあり、強く印象に残った場面でした。

ジョニー・デップは相変わらずの演技の巧さを見せてくれますし、クリスチャン・ベールは言わずもがな。
そして、本作のヒロイン、マリオン・コティヤールなんですが、たしかに巧い女優ではあるものの、先にも書いたように本作の正攻法なつくりに固められてしまった感があって、少し残念。

そうそう、クライマックスでデリンジャーと一緒に映画館へ行く女性、リリー・ソビエスキーなんですよね。
映画観ていて「似てるよなぁ・・・」と思っておりました。一時はヒロインを演じるくらいの人気女優(いまもそうかもしれませんが)だったのに、本作のあまりにものひっそり感にちょいと驚いてしまいましたとさ。

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中65点】



※僕がマイケル・マンの作品で、最初に観たのがこれ。
初公開時のタイトルは『刑事グラハム 凍りついた欲望』。浅草の映画館で観ましたよ。




※本作でチョイ役だった、リリー・ソビエスキーが出たスタンリー・クーブリックの遺作。
この映画でもチョイ役でしたけど、ソビエスキー。





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