■『最低。』■(映画) 



さいてい
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『8年越しの花嫁』が公開中の瀬々敬久監督作品。

『8年越し~』の1本前になるが、公開時期はほぼ同じ。
いずれにせよ、メジャーな作品から、本作のような小規模作品まで、じつに精力的な活動をされている。

瀬々監督といえば、知る人ぞ知る「ピンク四天王」と言われた一人。
でも、エロティックな部分が皆無だった昨年の『64』や、続く『8年越し~』といった作品を担当する中で、本作のような作品は監督の本領発揮なのではないかと思った。

原作はAV女優である紗倉まなが書いた小説。
高専出身者で在学中にAVに出演してそのままその世界に入っていったという経歴もさることながら、工業地帯をバックに撮った写真集が発売された頃には、僕も書店で見かけたことがあった。
ユニークな人が出てきたなぁなんて思ったものだが、いわゆる「工場萌え」なんて言葉をよく耳にした時期でもあったので、彼女がその火付け役なのかな?
あと、明〇家さ〇まとツーショット写真が撮られたこともあったっけ(笑)

小説は未読だし、いわゆる文学界ではどれくらいのレベルのなのかわからないけど、本業のかたわらに文筆業もこなすというのは凄いと思う。
AV女優って、けっこう本業とはギャップのある活動をしてたりする(かつての黒木香みたいな)印象があるが、彼女もその一人なんだろうか。


物語は3人の女性が登場する。
夫婦生活に満ち足りなさを感じ、AVの世界に足を踏み入れる人妻美保(森口彩乃)。
地方出身者で実家には内緒ながら、現役売れっ子AV嬢の彩乃(佐々木心音)。
母がAV嬢だったことが同級生たちに知られ、学校生活に馴染めない高校生あやこ(山口愛奈)。
いずれも、自身の生活にAVが介入してくる。

3人の女性の姿を描きながら、物語のテーマは「家族」というところが興味深い。
AVを非日常とするならば、日常に非日常が入り込んでくることで、逆にそれによって家族の絆が深まるという視点がユニークだし、時にストレートに胸を打つ。
映画の内容はまったく異なるし、描き方は違うけれど、これは続く『8年越し~』でも「家族」を描いていたこともあって、監督の作品に据えたテーマはまったくぶれていないのが面白いと思った。

原作は4つのストーリーが独立した形になっているそうだが、映画はその中から3編をピックアップし、それぞれが相互に関わりを持つように脚色されている(監督も脚色に参加)。
これは映画としてじつにドラマティックだし、具体的なことは挙げないけれど、まさに文芸作品を観ているような箇所もあってじつに見応えがあった。

もちろん、セクシャルな場面については、けっこう迫力のあるもので、やっぱりそこは最初に書いたように本領発揮というところなんだろう。
なんでも撮影時には監督と助監督が男同士でそういったシーンを演じてみせるとのこと。
そりゃあ、口で指示するよりも演じてみせる方が女優さんたちにも理解しやすいだろうし、女優さんの(男優もそうだろうけど)緊張感を緩和するということもあるんだろう。
つくづく、映画って面白いなぁと思う。

主演の3人の女優については、それぞれにあまり馴染みがないが、その分先入観なく映画と対峙できたのも僕としてはプラスだった。
それぞれの役柄を見事に演じきっており、さらに江口のりこ、渡辺真紀子、高岡早紀、根岸季衣といった実力派女優を脇に配してのキャスティングも映画に深みを持たせている。

どうしても偏見の目にさらされる(本作でもそういう描写はある)AV女優だが、その世界に入ったいきさつはそれぞれあるにしても、一つの職業として誇りを持っているのは本作の登場人物の言動でも理解できる。
そこは原作者の慟哭とも捉えられる。
どうしてもセクシャルな部分のみがクローズアップ(まあ、それが本来の目的なんだけど)されて、それに出演する女優の人間性が無視されてしまいがちなAVの世界。
いや、AV観る人はそんなことまでいちいち考えてらんないよ、というところなんだろうが、現場にいる者から生の声を発信するという意味でも、原作も含めて本作はとてもいい機会だったんじゃないだろうか。
仕事に携わる者には、それぞれにプロ意識がある。
それはどのような仕事であれ変わりないものなのだ。
それはじつに尊いものだと思う。

この映画はAVの内幕ものというわけではなく、たまたま自身の生活にAVが関わったということ。
今置かれている立場から、次のステップへと踏み出していく3人の女性の姿をみつめる、瀬々監督のまなざしは慈愛に満ちたものに見えた。



📖パンフレット📖

・縦257㎜×横182㎜
・18ページ 無線綴じ製本
・株式会社マージネット
・定価:800円(税込み)
表紙、中身ともにマット調の原紙(厚みはすべて同じ)を使用。
オールカラー。
3人のヒロイン、監督、原作者それぞれのロング・インタビューを掲載。
監督補によるプロダクションノートなど、読みどころ多し。



♬音楽♬
さいていふちどり
スコア担当は入江陽。

瀬々監督とは『マリアの乳房』のスコアも担当。

予告編でも流れている、ピアノとエレキギターによる静謐なスコアが印象深い。
全編にわたってスコアが流れる、というスタイルではなく、ヒロインたちの心の機微を音楽で表現するというスタイル。
なので、劇中、ここぞ、というところで静かにスコアが流れてくるといった感じ。

サントラはリリースされていない。

エンドクレジットに流れてくるのは、泉まくらのヴォーカルによる「ふちどり」。
いわゆるラップ調のナンバーで、歌詞の内容がわかれば映画としても効果的なんだろうけど、正直エンドクレジットで初めて聴く身にしては、なにを歌っているのかよくわからない。
独特なヴォーカルで、それをひっくるめて「音」として捉えればよいのだろうか。

因みに先に挙げたパンフレットの最後のページには、「ふちどり」の歌詞が掲載されている。

楽曲自体は泉まくらのベスト盤「5 Years」に収録されている。
【amazon】
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【iTunes】





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