■『勝手にふるえてろ』■(映画) 



かってにふるえてろ
【公式サイトはこちら!】

意外にも本作は松岡茉優映画初主演作なんだそうだ。

本作を観た前日は彼女が主演していた『コウノドリ』が最終回だったので、なんだか松岡茉優デーのような感じだったな(「探偵!ナイトスクープ」では本作の宣伝でゲスト出演も)。

彼女がメジャーになったのはやはりNHKの『あまちゃん』なんだろうけど、僕はあのドラマ、半分以上観てなくって、その観てなかった部分で彼女が登場していたのだった。

実際にこの女優を初めて観たのは同じくNHKのドラマ『銀二貫』だった。
高田郁による原作(江戸時代の大阪を舞台にした人情劇)はドラマになる前に読んでおり、ドラマ化されると聞き、主人公はもとより(主人公松吉を演じたのは林遣都、見事だった)ヒロインを誰が演じるのか興味深かった。
火事に遭い、顔に大きな火傷を負ってしまうが、主人公松吉の大きな心のよりどころとなる、大事な役柄である。
結局、少女時代を芦田真菜が演じ、大人になったヒロインを松岡茉優が演じるという。
誰? それ? と思いつつ、ドラマを観たわけだが、原作のイメージ通りの役柄(火傷は顔ではなく首筋に変更されていたけれど。事務所からの要請?)を演じきったその女優に大きく惹かれた。

以後、同じくNHKでは水族館のイルカショーのトレーナーを瑞々しく演じた『水族館ガール』、そしてTBSの『コウノドリ』と、着々とキャリアを積んでいく。
そんな印象があったので、映画初主演作というのはほんとに意外(映画では『ちはやふる』にも出てたしね)だった。


綿矢りさの原作小説を、大九明子が映画化。
綿矢りさといえば、過去に映画化された『インストール』(監督は片岡K。最近まったく名前を見かけなくなったね)は観たけれど、大九監督の作品は初めて観ることとなる。

恋愛経験のないヒロインが、中学生時代からの片思いの相手(北村匠海。彼女の中で勝手にイチ(1)と呼んでいる)を理想の恋人と夢想する中で、突然告白された会社の同僚(渡辺大知。彼女の中では二(2)と呼んでいる)との間で揺れる姿を描く。
理想と現実の中で、いろんな価値観が自身の中でグルグル回るところを映画はコミカルに描き、松岡茉優はこれを多少オーバーアクト気味に演じる。
特に思い込みの激しいヒロインは、周囲を巻き込んで相当にエキセントリックなキャラである。

ただ、あることがきっかけでヒロインの価値観がもろくも崩れ去ってしまうのだが、映画はこれを境にテンションがガラッと変わる。
これには多少戸惑ってしまったけれど、あくまでヒロインの心情に沿った映画と考えれば至極当然な演出であり、松岡茉優最後までヒロインを演じ切るのだ。

最後に放つヒロインのセリフが、じつに重みを持って響いてくる。
それは一体誰に向かって放たれた言葉なのか。
なんでもそこは、原作小説とは違ったニュアンスで表現されているそうだが、いろんな解釈ができるということで、映画的な奥行きを監督は持たせているんだと思った。


自分の価値観が、なにかのきっかけで崩れてしまうことは、生活している中で多かれ少なかれあること。
程度の差はあれども、思わずうろたえてしまったりするわけだが、それを表面に出さないことで、自分を含む社会の均衡は保たれている。
でも、この映画のヒロインはそれを思いっきり表にさらけ出すのだ。
それは人間本来の姿であるものの、理性が働いて抑制することもまた人間の姿。
ただ、本作で描かれるようなテーマはもとより、あらゆることで抑制された気持ちを、この映画のヒロインの姿に投影し、少しでも発散できることを考えれば、本作は一服のストレス解消剤なのではないかと僕は感じた。


最後に一つ。
まったく恋愛経験のないヒロインを、松岡茉優が演じるのは、説得力に欠けやしないかぃ?(笑)
これは昨今の異常ともいえる恋愛映画ラッシュの、大きな欠点の一つでもある。
恋愛経験がないだの、恋人にふられるだの、人気美人女優がこぞってそういった映画に出演しているけど、普通に考えりゃありえないわな。
そういう意味では、この作品も例外ではなかったな。



📖パンフレット📖

・縦170㎜×横257㎜
・14ページ 無線綴じ製本
・アベ印刷
・定価:720円(税込み)
表紙はPP貼り。中身はオールカラー。
キャスト、スタッフの詳細以外に、幾人かの漫画家、イラストレーターによる「応援イラスト」が面白い。



♬音楽♬
かってにふるえてろべいびーゆー
スコア担当は高野正樹。

CM、ドラマなどで活躍されているそうで、大九監督とも過去にコラボを組んでいる由。
最近では『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き』のスコアも担当。

正直、映画を観ている間は印象に残るスコアではなかったのだが、本作で最大の功労はヒロインの価値観が崩壊する場面。
あのいきなりのミュージカル仕立てな演出は本作最大の見せ場であり、松岡茉優の歌手ぶりが発揮される稀有なシーンである。

そこで歌われるソング・ナンバー「アンモナイト」の作詞は大九監督、作曲を高野氏が担当。
残念なことに本作のサントラはリリースされておらず、松岡茉優の歌声も映画を観ないと聴けないという状態。
どんな形でもいいから、音源、リースしてくれないだろうか。

なお、エンディング・テーマは劇中、二(2)を演じる渡辺大知がヴォーカルを担当するユニット、黒猫チェルシーによる「ベイビーユー」。
【amazon 初回生産限定盤(DVD付)】
【amzon 通常盤】
【amazon MP-3】
【タワーレコード 初回生産限定盤(DVD付)】
【タワーレコード 通常盤】
【iTunes】





コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://binsan67.jp/tb.php/617-96ea6c11