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■『エンドレス・ポエトリー』■(映画) 



エンドレスポエトリー
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87年に渋谷のPARCO劇場で、『エル・トポ』を観た時の衝撃は今も忘れられない。

映画雑誌などでカルト映画といえば、きまってこの映画のことが掲載されていたし、監督したアレクサンドロ・ジョドロフスキー(当時の雑誌はこういう表記だった)の名前も、フランク・ハーバートの「デューン」を作ろうとして挫折した人、ということで知っていた(高校生の頃に早川文庫の「デューン砂の惑星」にはまっていたもので)。

87年といえば、務めていた会社から単身赴任を言い渡され、東京で独り暮らしを始めた年でもある。
独り暮らしに不安を覚えつつ、その反面、家族に縛られず自由な時間を多く持つことができたために、土・日は映画館巡り、とりわけ地元にいた頃はメジャーな映画しか観てなかったもので、東京にあった膨大なミニ・シアターで上映されている作品群がとても新鮮に映ったものだ(映画を観なくても、これまた雑誌などで名前を見たことのある劇場の前まで行くだけでも嬉しかった)。

その年の3月、永らく劇場公開されてなかった『エル・トポ』がPARCO劇場で上映されると知り、

「カルト映画ってなんやろな? ああいう映画を観たら精神的にどないかなってまうんやないかな?」

なんて思いつつ恐る恐る観たわけだが、予想以上の面白さに一気に惹かれてしまった。
現在にいたるまでマイ・ベスト映画の10本の一つに『エル・トポ』を入れてしまうことを考えれば、実際に精神的にどないかなってしまったわけだけど・・・(笑)
ちなみに、その年の5月には、現段階で生涯ベスト1である『ブルー・ベルベット』に出会ったことを考えれば、87年は本当に大きな影響を受けた年だった。

さて、『エル・トポ』の洗礼を受け、それ以外のホドロフスキー作品にもほとんど触れたし(いまだ本邦公開に至っていない『TUSK』(80)は知人から譲り受けた、ダビングにダビングを重ねた激悪映像のビデオを所有している)、4年前、長いブランクの末に公開された『リアリティのダンス』(13)でのホドロフスキーの健在ぶりには驚嘆したものだ。


さて、今回の『エンドレス・ポエトリー』は、『リアリティのダンス』の続編にあたる。
前作で故郷チリのトコビージャを旅立ったホドロフスキー一家、舞台をサンティアゴに移し展開されるは前作同様アレハンドロの自伝である。

前作での彼はまだ少年であり、物語の大半は彼の父ハイメの物語だった。
今回は青年となったアレハンドロが、封建的なハイメの「医者になれ!」という言葉に逆らい、詩の世界に魅せられ芸術の道を歩もうとする姿を描く。

今回の作品は、これまでのホドロフスキー作品に比べるとかなりとっつきやすい内容になっており(前作を観ていると理解は深まるが、観てなくても十分楽しめるだろう)、ユーモアの要素も一番大きいと思う(映画を観ていて何度も声を出して笑いそうになったが、場内はシ~~~ンと静まり返っていたのがなんとも心苦しかった)。

そしてそれに輪をかけて、エロの配合ぶりがハンパじゃない(笑)
主人公アレハンドロを演じるのは、監督したアレハンドロ・ホドロフスキーの息子であるアダン・ホドロフスキー。
彼を筆頭に、まぁ、劇中の登場人物が脱ぐわ脱ぐわのスッポンポン祭り!

劇場によってはボカシが入れられているバージョンもあるそうだが、僕が観たのは無修正版。
なので、もうなんちゅうか、息子の息子(笑)がスクリーンのあちこちで乱舞する。
いや、息子の息子だけじゃなく、他人の息子まで・・・ホドロフスキー映画に出演するには、老若男女わけへだてなく、カメラの前でスッポンポンになる覚悟が必要なんだろう。

ホドロフスキーといえば、詩的だとか、哲学的だとか、アカデミックな印象で語られることが多いと思うが、もちろんそういう要素は前提としてあるとしても、僕には変態エロジジイにしか見えない(あ、これ最大の賛辞なので誤解なきように。最大の惨事じゃなくてね)。
それでも、そんな変態かつエロな映画のように見せかけて、じつはその裏側には深いテーマがちょろっと垣間見える。
そこの匙加減が上手いんだなぁ。

物語の軸となるのは父親との葛藤なのだが、映画はエキセントリックな芸術家と交流を重ねるアレハンドロの姿を綴っていく。
特に彼が最初に恋愛関係になるステラの印象が強烈だ。
豊満な体格に鮮烈な赤毛。
酒場で2リットルのビールを一気に飲み干し、言い寄ってきた男に激烈なパンチを喰らわす豪快さ。
演じるのがアレハンドロの母サラと二役のパメラ・フローレンスというのも驚き(一見わからないくらいにステラのメイクが奇抜)だ。
サラを演じる時は前作同様セリフがすべてオペラ調(彼女は本職は歌手なのである)というユニークな演出に加え、ステラを演じる時の豪快ぶりに、演出するホドロフスキーも大いに楽しんでいるんだろうな、というのが伝わってくる。


やがて、アレハンドロはある種の挫折を味わい、サンティアゴからパリへ旅立つところで映画は終わる。
クライマックスでは彼と父親ハイメとの確執が、じつに見事な演出で打ち解け合うところを描く。
これには思わず感動せざるを得ないのだが、一見エキセントリックな映画に見えて、実は壮大なラヴ・ストーリーであることを、その時になって知ることとなる。

父ハイメを演じるのも、前作同様、彼の息子であるブロンティス・ホドロフスキー。
だから、息子二人が親子を演じているという、一度訊いたら何のこっちゃ? なんだが、衣装担当はホドロフスキーの奥さんだし、ある種の家内制工業のような映画。
そういうお膳立ての中で自身の物語を描くというのは、彼にとってはとてもやりやすいものだったのかもしれない。

この映画はフランス、チリ、そして日本の合作となっている。
なぜ日本? と思ったが、本作はいわゆるクラウド・ファンディングで作られた映画であり、そこに配給会社アップリンクも協力したということだ。
巨匠の作品をこういう形で実現させていくというのも、映画の内容とはまた別に感動的である。
また、ホドロフスキーを愛する人々の力でもって映画が作られていく、やはりそういう意味においても本作は壮大なラヴ・ストーリーなんだな、と実感した。


この後、ホドロフスキーは自伝のパリ編を作り、その後メキシコ編(ここでようやく『エル・トポ』を製作した頃の姿が描かれるのだろう)を作る予定なんだとか。
齢88にしてますます盛んなホドロフスキーの新作を目の当たりにして、そのパワーは健在であることを実感したし、当然この後の映画製作に邁進することを信じる。
楽しみは尽きない。



📖パンフレット📖

・縦257㎜×横182㎜
・20ページ 中綴じ製本
・有限会社アップリンク
・定価:800円(税込み)

配給元であるアップリンクの浅井氏による、本作の製作に関する解説ページが読み応えあり。
また、アレハンドロ・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキーへのインタビュー記事など、さすがミニ・シアター作品ならではの内容の濃いパンフレットになっている。
最後にはクラウド・ファンドに協力した方々の名簿が3ページにわたって掲載。
出演者のプロフィールが掲載されているのは当然だが、内容の濃いパンフではあるものの、唯一、日本人女性の出演者がおられるのだが、彼女のついての記述が一切なかったのは残念。



♬音楽♬
エンドレスポエトリー
スコア担当は前作、『リアリティのダンス』に続き、主演のアダン・ホドロフスキー。

俳優のかたわらミュージシャンとしても活躍しており、作曲作業は慣れたものと思う。
全体的な印象は前作同様で、メインテーマとなるワルツ曲(予告編でも印象的に流れている)は、ラストを盛り上げて留飲を下げる。

一部、父親であるアレハンドロ・ホドロフスキーが『エル・トポ』で書いたパントマイム曲を使用(当サントラにも収録されている)しているのがご愛嬌。

サントラは配信と、最近流の流行りなのか、LPレコードでリリースされている。
前作はCDでもリリースされていただけに残念。
サントラの世界でもLPレコ-ドのリリースが盛んだが、実際にところほんとに需要があるんだろうか?
【amazon MP-3】
【amazon LPレコード】
【iTunes】





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