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■『スノープリンス 禁じられた恋のメロディ』■(映画) 


スノープリンスキンジラレタコイノメロディ
あらゆるところに書かれているのが「日本版フランダースの犬」という文字。
なんせ本作のチラシにまで書かれています。しかも、「禁じられた遊び」と「小さな恋のメロディ」をくっつけたようなサブタイトルで、映画を観なくてもその内容はおおよその察しがつくというもの。
とはいえ、犬が出てくる映画には無条件に反応してしまう犬好きとしましては、それだけで興味は湧きますし、檀れいが出演しているというのも興味対象。
さらに監督は松岡錠司(そ~いえば、『さよなら、クロ』(03)も犬が出てきたよね)だし、脚本が『おくりびと』(08)の小山薫堂だし、一見わかりやすそうなタイトルと見せかけて、じつはオリジナリティにあふれている作品なんだろうな、というある種の期待はありました。

ただ、戦前の話だろうに「スノープリンス」という横文字なタイトルには、いささか違和感を抱いたりはいたしましたが・・・。



現代―。

康子さん(マイコ)は、今日も今日とて大好きなお婆ちゃん(岸恵子)ちに転がり込んでいます。
どうやらヤなことがあったら、いつもそうやってお婆ちゃんに迷惑をかけている様子。
「仕方ないわねぇ~~~」と康子さんを見て微笑むお婆ちゃんは推定年齢80に近いと思われますが、30年は若く見えるのはパリで暮らした期間が長かったからでしょうか。そういえば、「おりんでごぜぇ~やす」の時だって、山陰地方の寒村のおばやんという設定なのに、どこか垢抜けてましたもんね。
でも、そんなことは本作にはなんの関係もございません。

さてさて、康子さんが言うには見知らぬ初老の紳士(山本學)が突然おばあちゃんちにやってきて、原稿用紙の束を置いて帰っていったとのこと。
「知らない人が来ても話にのっちゃダメよぉ。(身体は大人になっても、おつむはガキのままなのかぃ?)」と言いたい気持ちを抑えつつ、その原稿用紙の束とやらを紐解くおばあちゃん。
なんとそこには、おばあちゃんの若かりし頃の「禁じられた物語」が赤裸々に書き綴られていたのでありました。

時は昭和11年。

帝都では2・26事件が起こり、●ン●でピアノを弾いたキロクちゃんが東京へ向かったその時代。
おそらく東北あたりかと思われる(映画では特定されていない)山村へと物語はプレイバック。

10歳の草太くん(森本慎太郎)は両親がおらず、最近ちょっと身体の調子が悪いおじいちゃん(中村嘉葎雄)と二人暮らし。おじいちゃんの炭焼きで生計を立てていますが、貧しいために学校にも行けません。でも、大好きな絵を描く時と幼馴染みの早代ちゃん(桑島真里乃)と一緒にいる時はこの世の憂さも忘れるというもの。
でも、この早代ちゃんの家は村一番のお金持ちの有馬さん(いったい何作映画に出てるんだ? な香川照之)で、「有馬商会」という大きなお店を構えてらっしゃいます。草太くんのおじいちゃんは、この「有馬商会」へ炭を納めていたのです。でも実際のところ、いったい何の商売をしているのか、映画を最後まで観てもよくわかりません。
とにかく、羽振りがよくてウホウホ状態の有馬さん。べっぴんの奥さん(檀れい)もいるし、使用人もたくさんいらっしゃってさらにウホウホ状態。僕としては檀れいさんみたいな奥さんだったら、それだけでウホウホですが。
でも、映画のようにライスカレーしか作れないようじゃ、ちょっとヤです。

それはともかく、ある日のこと草太くんは行商のおっさんに暴行を受けて死んでしまった犬を発見。そばには子犬が一匹プルプル震えていました。草太くんは早代ちゃんと母犬を弔い、子犬にはチビと名づけて飼いますが、あっという間に草太くんよりもデカい犬に変貌してしまいます(そりゃ秋田犬だもの)。でも名前はチビのままです。

さて、草太くんは村はずれの水車小屋に早代ちゃんとチビとこもって、好きな絵を描いておりました。が、それを村の悪ガキ3人組が有馬さんにリーク。
「こんなところで何をやってるんだ!!」
と、小屋の中にいる2人と1匹を見つけて有馬さんは怒鳴り込んできます(そりゃ怒るわ)。

(べべべ、べつになにもしてません。なにをやるかもまだしりません。事務所はまだ教えてくれません)」と言いたい気持ちを抑えつつ、おとうさんに連行されていく早代ちゃんをチビとともにぼぉ~~~っと見ているしかない草太くんでありました。

そんなある日、村にサーカスの一団がやってきます。
その団長とおぼしきピエロ(浅野忠信)をひと目見た草太くんは強く惹かれるものを感じます(そういうケがあるとかってわけじゃなく)。
おじいちゃんに「サーカスにはいっちゃなんねぇ!!!」と咎められていたにも関わらず、ピエロに会いに行く草太くん。
「ゆあ~~~ん、ゆよ~~~ん、ゆやゆよ~~~~ん」と中原中也の詩などを朗読している妙にインテリなそのピエロは、いろんな魔法を披露して草太くんを虜にしていきます。

さてさて草太くんは、酢でも飲まされてサーカスで働かされるのでありましょうか? 草太くんの運命や如何に???

・・・ってなお話でした(多少、事実と異なる部分あり)。



で、結局どうだったのよ? といいますと、そりゃぁ核心に触れることは一切書きませんけど、冒頭に書いたように、タイトルからだいたいこういう映画だろうなぁ、と思っていたそのまんまなお話でした。
あのねぇ・・・やっぱり「日本版なんとかかんとか」って、映画を送る側がそんなことを書いたらアカンでしょ。
そりゃあ、実際に観た人が「これってフランダースの犬そのままじゃん」って声が多数挙がることを想定して、それだったら先にこちらから書いておこうか、って姿勢だったのかもしれませんけど、なんというかなぁ、それもけっこう複雑,ですわなぁ。

最初に現代のお話を持ってきて、お察しのように早代ちゃんの現代の姿が岸恵子なのであって、少女時代を回想するというスタイル、これもよくあるパターン。
で、映画は現代の早代の姿と少女時代のエピソードを交互に描くというのがオリジナリティといえばオリジナリティ。
さらに、その原稿を書いたのは一体誰なのか? 山本學演じる初老の紳士の正体は? と多少ミステリー的な面白さはあるものの、それさえ早々に明らかになってさほど意外性は感じられませんでした。


少し触れましたが昭和11年といえば2・26事件が起こり、その引き金となったのが東北地方の貧困だったというのも、本作ではほとんど出てきません。まさに映画の舞台も東北地方と推定できるのにそのあたりは曖昧になってるんですよね。本作にはある種のファンタジー色を持ち込もうという意図があって、生々しさを感じさせる設定は敢えて除外したのかもしれません。
サーカスというノスタルジックかつファンタジー性濃厚な設定が持ち込まれているのも、本作のカラーを印象付ける意味では納得できなくはない(浅野忠信演じるピエロのキャラが浅すぎるのが難点)。
むしろ、本作において大事なのは、草太のおじいちゃんが常に口にする「人を憎んだり怨んじゃいかん。ウソをついちゃいかん」という教えと、それに対して愚痴を一言も言わずに全うする草太のピュアな姿であり、一方、裕福な暮らしをしているのに、いつもふくれっつらな早代ちゃんとの対比なのです。それが、飽食の時代である現代において、本作を作ることでそれを観る人の人間性を覚醒させようというのもわかります。

さらに言えば、本作ではほとんどといっていいほど悪人は登場しません。
お金持ちの有馬さんだって、根っからの悪人じゃないんです(それは映画を観ればわかります)。
唯一、草太が炭を売った金を掏り取った男が本作の一番の悪役なんですが、そのスリさえも草太のおじいちゃんにしてみれば「わしらよりお金が必要だった人がいたんじゃ」と、泣きじゃくる草太をなだめつつ諭すことで、人間として救われるのです。

罪を憎んで人を憎まず、というその教えもわかります。
でも、ファンタジー性重視であり、かつ教訓を含んだ物語なのはよいけれど、そればかりだとかえって説教臭くなる。
ある程度のリアリティも多少は盛り込まないと、かえって作り手の言いたいことが絵空事に映りかねない。そんな一例のような映画という印象が残ってしまいましたねぇ。
あ、リアリティといえば、卵かけご飯を草太とおじいちゃんが食べる場面。貧しさゆえなのか醤油もなしに、そのままで食べてらっしゃいましたが、あそこはリアルでしたなぁ。


草太を演じた森本慎太郎君はジャニーズJrの方なんだそうで、僕自身、そのジャニーズJrって存在すらしらなかったんですけど(苦笑)、草太の持つピュアそのものな演技は印象としては悪くはありませんでした(本人も草太のようにピュアなのかどうかはしりませんけど)。
ただ、やっぱりいつもキレイな顔をしてるんですよね。炭焼きをやってて、悪ガキには「臭い」といわれ、おそらく風呂にも入ってない(そんな場面、一度もない)でしょうから、ほんとならもっと汚い顔をしてようものなのに、そういう点もピュアなんですよねぇ。
役柄とはいえ、顔にウジ虫這わせたキムタク先輩の域に達するにはまだまだ遠いようで。今後の活躍を祈るばかりです。


あ、ひとつ書き忘れてました。この映画に犬、要らんがな。


(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中40点】



※草太を演じる森本慎太郎君がメイン・ヴォーカルを務める、スノープリンス合唱団による、本作の主題歌。
ドビュッシーの「月の光」(本作で重要な使われ方をしています)をポップ・アレンジし、なんと作詞を野島伸司が担当。声変わりしていない、ピュアな歌声を堪能あれ(もう数年すると一気に声変わりするんだろうなぁ)。
主題歌の他に「クリスマス・メドレー」も収録。アイドルですねぇ・・・。



※同じく、主題歌の初回限定盤。
こっちは「クリスマス・メドレー」などは入ってなくて、主題歌のカラオケなどが入ってます。
でも、少年たちの動く画像が収録されたDVDがついてるんですってよ、奥さん。




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