■『エヴォリューション』■(映画) 







エヴォリューション
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🎦シネ・リーブル梅田にて鑑賞🎦

タイトルを見ると、アイヴァン・ライトマンのトンデモSFコメディ(生物が進化した最終形は巨大ア〇スだった、ってやつ。結構、好き(笑))を連想してしまうが、こちらはこちちらで、もっとトンデモないものが出てくる。


とある島が舞台。
住民は子供といえば男の子だけ。彼らにはそれぞれ母親がいる。
男の子たちは母親から、毎日毎日、妙な液体とまずそうなお粥みたいなのを食べさせられる。
島の少年ニコラくんは、ある日海で泳いでいる時に、海底に少年の遺体が沈んでいるのを見かける。
母親にそのことを告げるが取り合ってもらえない。
ある夜ニコラくんは、母親たち島の女性が海岸で珍奇なことをしているのを目の当たりにする。
そこから彼の身に数々の受難がふりかかる。


監督はモロッコ出身の女流監督、ルシール・アザリロヴィック。
2004年に撮った『エコール』という作品が話題になったそうだが、僕は未見。
かのギャスパー・ノエのパートナーとして、彼の作品の脚本などを担当しているという経歴から、おおよその人となりは判るというものだ。
本作はデイヴィッド・リンチ、デイヴィッド・クローネンバーグを思わせる作品、なんて惹句があったので、リンチストとしては見逃せなかったし、いわゆるダーク・ファンタジーのような物語ゆえ大きな興味をそそった。

冒頭、色鮮やかな海底の描写が延々と続く。
まるでこの世の楽園のごとき海を有するその島で、繰り広げられるのは海底の美しさとは正反対の禍々しき物語だ。
主人公のニコラくんが、日常生活の中の「謎」に気づき、それに興味を持ったことから映画はエキセントリックな流れへ一気にシフトする。


内容について詳細に触れることは避けるが、これが実際にニコラくんの身に起こったことなのか、それとも少年がある時期を経た時に見た幻想だったのか、最終的な判断は観客に委ねている。
ただ、幻想というにはかなり具体的な描写も出てくるので、なかなかジャンル分けは難しい。

本作を観てふと思い出したのは、子供の頃になにか悪戯して、親からこっぴどく叱られた際に、自分は本当にここの家の子なんだろうか? という疑問を抱くという、あれだ。
僕の場合は幼少の頃から真面目だったので、そんなことは一度も思ったこともなかったし、ましてや親から、
「おまえはうちの子じゃないよ! 橋の下で拾ってきた子だよ!」
みたいなことも言われたことがない。

こういうシチュエーションって、万国共通なのかはわからないが、日常生活のなかで、ふと、そんな疑問を持ったばかりに、すべての物事に対して否定的になってしまう。
本作のニコラくんは、まさにそれなんじゃないか、と思った。

パンフに掲載の監督の談話には、そのあたりのことはまったく触れられておらず、なぜ男の子しか出てこないか、という部分について、女性監督ならではの視点ゆえのものであることが述べられているだけだった。


映画はたしかに独特な世界観をもった作品になっているし、面白いかどうかでいえば、つまらなくはない。
惹句にリンチやクローネンバーグの名前を挙げるのも納得だ。
ただ、結局のところ、すべては観客に判断を委ねるラストシーンは、効果的でもあるけれどいささか食い足らないのもまた事実。
劇中、かなり具体的なシーンを盛り込みながら、最後は想像におまかせします、ってのは、監督自身、作品に対して十分消化できてないんじゃないかと思った。


さらにいえば、エキセントリックな描写に重きを置いたばかりに、肝心なところに手が回らなかったというか。

「みてみて! 凄いでしょ。こんな映画、観たことないでしょ!」

と言わんばかりの作風が少々鼻につくのも否定できなかった。

ゆえに、周囲の声、特に日本の配給会社等々は、彼女に対してちょっと持ち上げ過ぎなんじゃないの? と思う。
ギャスパー・ノエとの仕事に重きが置かれているのか、自身が監督作を発表するのにかなりブランクが開いているが、次にどのような作品を観せてくれるか、楽しみではあるけれども。



📖パンフレット📖

・縦215㎜×横142 ㎜
・46ページ 無線綴じ くるみ製本
・北斗社
・定価:953円(税抜き)

表紙・裏表紙ともに赤い布張りという高級感漂う装丁。
表紙にはタイトルとクラゲ、裏表紙にはイソギンチャクのデザインが黒でデボス加工が施されている。
全体のサイズが小さいゆえ、自然とページ数は増えてくる。
内容としては、監督へのインタビュー記事や、監督がこれまで影響を受けた映画や絵画等に触れたページもあって、読みごたえはあるが、装丁の手の込みようゆえに価格も高くなってくる。

そもそも、なぜ本作にここまで手の込んだパンフを作るのかが疑問であり、配給会社がいかにしてこの作品と監督を売り込もうとしているかが、こういうところに現れているようだ。
このような装丁にせず、普通のパンフであれば、もっと価格は抑えることができたのは当然であり、パンフのほかにTシャツのコラボ等々グッズも作られているようだが、映画自体の評判を考えると、ちょっと空回りしたような印象は否めない。



♬音楽♬
スコア担当はサカリアス・M・テラレバとヘスス・ディアス。

サカリアス~はアントニオ・バンデラス主演のSF映画『オートマタ』のスコアを担当しているスペインの作曲家。
全体的にはノイジーなスコアである。
時折ドラマティックなメロディも流れるし、オンド・マルトノも使用しているようだが、印象に残るというものではない。
むしろ、自然の音を再加工したものが流れるような感じ。
ラストシーンの工業音などは特に効果があったように思う。

サントラはディスク、ダウンロードともにリリースされていない。




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