■『RANMARU 神の舌を持つ男』■(映画)

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🎦イオンシネマ西大和にて鑑賞🎦
2016年のサマーシーズンにTBS系でオンエアされたドラマの映画版。
舐めるだけで、その成分がすべてわかる特殊能力を持つ主人公蘭丸(向井理)が、憧れの女性を求めて各地の温泉を巡る先々で起こる、奇怪な殺人事件を解いていく。
蘭丸に恋心を抱く、2時間サスペンスドラマ・マニアの古物商(木村文乃)と、二人に巻き込まれた形でともに旅をする宮沢賢治マニアの男(佐藤二朗)の凸凹トリオが繰り広げるオフ・ビートな笑いがドラマの魅力といったところ。
製作したのは堤幸彦。
とくれば、かつての『TRICK』を連想させる、というか、ドラマ版はそのまんま『TRICK』の二番煎じな内容だった。
『TRICK』を初めて観た時は、その斬新さに大いに驚き、強く魅せられたものだ。
それまでシリアスな演技を主としていた阿部寛と仲間由紀恵のコメディアン、コメディエンヌぶりは、その後の二人の俳優としての幅も広げたことで、大きな功績を残したTVドラマだったといえる。
もちろん、映画版も夢中になって観たものだが、残念なことに映画版は回を重ねるごとに、初期の頃にあったようなパワーがみるみる低下していくのが明らかだった。
それに加え、ドラマの端々にあったコメディやパロディの要素がどんどん濃厚になり、いわゆる隠し味的な魅力だったものが、メインに出てくるようになった途端、逆に面白さが半減していった。
むしろ、そのお笑いの要素が強烈に鬱陶しくなっていったのだった。
特に、エンドクレジットで登場人物がくっだらないグダグダ話を延々続けるところを目の当たりにして、堤幸彦は惰性で仕事をしてるんだなぁ・・・と、それまでの好意から一転して、嫌悪感ばかりが募ってしまった。
いや、堤作品には『TRICK』のようなコメディ要素の強い作品はともかく、シリアスなドラマや映画においては、ある種のクオリティが保たれていたように思う。
しかし、たまにコメディ・タッチの作品を作ると、気を抜いてしまうのか、グダグダ感がどんどん増加していってるように思う。
一時期のブームを作った『TRICK』の魅力は、メインとなるミステリー&サスペンスの面白さもさることながら、そこに隠し味的なコメディの要素が絶妙に効いていたことによる。
堤氏がそこを勘違いしていた、とは思いたくもないが、映画版がどんどんつまらなくなっていったのは、ファンが何を求めていたのか・・・やっぱり取り違えていたとした考えられない。
そして、今回の『神の舌~』である。
なんでも堤氏はこのドラマを20年前から構想していたのこと。
しかし、先にも書いたがまったくの『TRICK』の二番煎じでしかない。
キャラクターとしても、阿部寛のポジションが向井理で、仲間由紀恵のそれが木村文乃だったわけだ。
もともと、木村文乃が贔屓だったので、期待はしてはなかったが、彼女もひょっとしたらコメディエンヌぶりが発揮されて、新たな魅力が発見できるかも・・・と思ったが、残念ながら成功していたとは思えない。
キャラクター設定にもよるのだろうが、どうも僕が観たかった木村文乃ではなく、期待外れも甚だしかった。
それ以上に、ギャグやパロディの要素が濃厚で、『TRICK』劇場版で抱いた「鬱陶しさ」がますます募る。
これがはたして構想20年の結果なのか?
結果的に視聴率もふるわなかったとのことだが、それでもこうして映画版が作られる、というのが不思議な話。
視聴率が取れなかったドラマの映画版を作って、はたして誰が観に来るというのか?
なぜ、映画版を作ったのかについては、堤氏と親交の深いプロデューサー氏が、還暦も近い堤氏を喜ばせるためだったとか、冗談なのか言いわけなのかなんなのかよくわかんないことがダラダラ書かれている劇場版パンフレットを参照されたし。
スタンスとしては、映画版はドラマの続きという設定ではなく、独立した作品を目指したというが、開巻早々、佐藤二朗がドラマ版の解説を延々とのたまう。
つまり、まずドラマありきの作品なわけだ。
しかも、配給の松竹のあの富士山マークに解説が被る。
もう、その時点で強烈な拒否反応を起こしてしまった。
物語はドラマの最終回の後、蘭丸が故郷の「米原」に帰ろうとしたところ、馬鹿々々しい理由で「米沢」へ行くことになり行倒れとなる。
とある女医(木村多江)に保護された蘭丸は、滞在している村で起こった殺人事件に巻き込まれ、それを自身の能力でもって解決していく。
そこに、木村文乃、佐藤二朗が合流して、相も変わらずドタバタ劇が展開されるという流れ。
ドラマ版もそうだが、メインのミステリー劇はよくできていると思う。
今回も、ホオズキにまつわる蘊蓄が物語にうまく活かされていて、それなりに見せる作品にはなっているのだが、それを妨げるのが膨大な量のコメディ&パロディなのだ。
いや、それがあるから面白いんだ、という向きには、この『神の舌~』というシリーズが、というか、堤幸彦イズムに肌が合う方なんだと思う。
だが、これほど過剰なまでに繰り出されると、ドラマの本質、面白みが揺らいでしまうのだ。
そして危惧していたエンドクレジットのグダグダ感。
・・・『TRICK』映画版以上の酷さに寒気がした。
ゆえに、本作は『TRICK』からまったく進化していないばかりか、むしろ退化しているように思うシロモノだった。
否定的なことばかり書いているが、今回の映画のロケは京都の南丹にある美山の「かやぶきの里」で行われた。
ここ、昨年の晩秋に訪れたところで、映画を観ていて見知った建物が登場していたのが嬉しかった。
かやぶきの屋敷がいくつも立ち並ぶその風景は、映画のロケ、特に今回のような「横溝系ミステリードラマ」にはぴったりである。
ところで、本作は松竹映画の今年の正月映画なんだよね?
正月が来るまでに、どうやら上映が終わりそうなのだが、果たしてこれは誤算だったのだろうか。
それとも、最初から正月までは持たないだろうな、と思いながら映画を作っていたのであれば、よもや一人のクリエイターを喜ばせるためだけで、多くの人員が動いてしまう松竹という会社自体に危機感を抱くのは僕だけではあるまい。
📖パンフレット📖
・縦257㎜×横184㎜
・28ページ 中綴じ製本
・日商印刷株式会社
・定価:667円(税抜き)
パンフレットというよりも、本作の主人公、蘭丸が持っている大学ノートという設定。
こういうパロディ感覚は嫌いじゃないが・・・。
TVシリーズ全話の解説、映画本編の膨大なコメディ&パロディの解説に、主演の3人の対談等、本作のファンにはたまらない内容になっている。
パンフレットとしては良心的な内容だと思う。
♬音楽♬

スコア担当はドラマ版同様、荻野清子。
三谷作品でもユニークなスコアを聴かせてくれており、それは本作でも同様だ。
基本的にドラマ版でも耳にしたメロディがあちこちに登場し、特に映画版だから、という新しさは感じられなかった。
劇中、多少スペクタクルな場面もあって、そこはスコアも多少厚みのあるものにはなっているけれど。
ドラマ版のサントラがリリースされなかったようなので、当ディスクはドラマ版、映画版兼用となっている。
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エンディングを飾る坂本冬美による主題歌「女は抱かれて鮎になる」もドラマ版と同じ。
ただし、ドラマ版の最終回では坂本本人も登場していたが、映画版ではそれは無し。
いや、映画版だからこそ、そこはあえて登場して華を添えてほしかったところだ。
なお、サウンドトラックCDには、坂本冬美の主題歌は未収録。
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- [2016/12/28 00:31]
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