■『母なる証明』■(映画) 


ハハナルショウメイ
主要都市では10月末に公開が始まっていた本作。
ようやく僕の地元の奈良でも公開が始まりましたので、早速観に行ってまいりました。

漢方薬屋を営みながら、子供の心のまま育った息子トジュン(ウォンビン)を養う母(キム・ヘジャ)。
母はそんな息子を見守りながらつつましく暮らしておりました。
ある日、二人の住む町で女子高生が殺害されるという事件が・・・。
遺体は何者かによって撲殺されており、そのそばにはトジュンの名前の入ったゴルフボールが落ちていたことから、警察は彼を容疑者として逮捕します。
自分の身に何が起こったのか理解できないまま、拘置所で母と面会するトジュン。母は息子の無実を晴らすために、単独で事件の真相を追います。
果たして、真犯人は誰なのか? 母はトジュンの無実を証明することができるのか?

ポン・ジュノの最新作は息子を溺愛する母とその息子の姿を、ある殺人事件を通じて描いた骨太なヒューマン・ドラマであり、ミステリー映画の新たな傑作ともいえる完成度の高い作品に仕上っていました。
彼の作品では、同じく殺人事件を描いた『殺人の追憶』(03)のテイストに近い作風ながらも、本作ではそこにある種行き過ぎとも映る親子の愛情を絡めることでよりドラマ性が高くなっており、脚本も担当したポン・ジュノの作家としての実力がより進化したことを目の当りにできて、ファンとしてはなんとも喜ばしい限り。
彼の持ち味であるブラック・ユーモアも健在で、特にどこか近親相姦めいた母子の姿(具体的な描写はないけど、それを暗示させるようなものはある)や、登場人物の描写のなんともいえないとぼけたテイストが、一歩間違えれば泥臭い印象が濃厚な本作において、そのバランスの妙はさすがポン・ジュノ。そういう意味でも本作は彼の集大成ともいえます。

息子への愛情から暴走する母親の無謀ともいえる行動であったり、被害者の女子高生が抱えていたある秘密であったり、真犯人とおぼしきキャラを配することでサスペンス&ミステリー映画としての面白さも秀逸で、その結末についても明解な答えを出さないままで終った『殺人の追憶』とは違い(もっとも、あの映画の場合はあの結末で正解だったのですが)、本作ではおそらく誰もが納得のいく結末が用意されています。
でも、そこはポン・ジュノ。ハリウッド的な単純明快な結末じゃないだろうな、とある程度の予想はしていたものの、正直なところそれが予想を超えたもので、またしても、やられた!! というのが素直な感想です。
とりわけ真相が明らかになる場面では、場内から一斉に驚きの声が上がる(しかも2度も)ほどの衝撃が用意されており、ヒューマンドラマとしての奥深さもありつつ、エンターテインメントとしての面白さも備わっていました。

ハハナルショウメイ1
母を演じたキム・ヘジャは「韓国の母」と呼ばれる、かの地では誰もが知っている有名な女優なんだそうで、TVドラマでの活躍が主体なんだそうですが(日本でいえば泉ピン子みたいなポジションか?)、そのリアリティのある演技には思わず引き込まれました。
開巻早々、草原で一人奇妙なダンスを踊る(バックに流れるイ・ビョンウによるスコアも秀逸!)彼女の姿に、ある種の驚きと不可解さと緊張感を抱きつつ、それを最後まで保持するところに彼女の女優としての実力を実感いたしました。
子供のためなら見境がなくなって暴走してしまうその母親像を見事に演じきっており、日本でもモンスター・ペアレンツなる言葉がポピュラーになっていることを考えれば、映画的なキャラ設定という面白さもありつつ、本作を極めて現実味を帯びた作品にした功労者ともいえます。

兵役に就くために芸能活動を休止していたウォンビンにとっては、芸能界復帰5年ぶりの映画出演。
本作のトジュン役はキム・ヘジャ演じる母親同様極めて難しい役柄であり、こちらもリアリティがなければまったくの絵空事になってしまいかねないところを見事な演技でそれを全うしているのも喜ばしい。
もちろん、ポン・ジュノの演出の妙が本作の出来を左右しているわけですが、それに見事に応えた二人の俳優の演技との三位一体の好例ともいえるじつに見事な秀作でした。


誰にも母親がある。
その関係がいかなるものであれ母親に対する想いというのは不変なテーマ。
キム・ヘジャ演じる母親が、切羽詰った状況のなかで思わず口にする
「お母さん、助けて・・・」
というセリフが、重く鋭く胸に突き刺さってきます。
そこであらためて本作の原題である「Mother」に込められた意味を感じずにはおれないのです。

けっして爽快な映画ではありませんが、じつに見事な映画でした。必見!

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中85点】



※ポン・ジュノの代表作。
ラスト・シーンでのソン・ガンホの表情が印象深かったなぁ・・・。



※同じくポン・ジュノの代表作。
単なる怪獣映画じゃないそのテイストは、ハリウッドには真似のできないものでしょう。
SFXも秀逸でした。




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