ビンさんの銀幕音楽堂・第700回(2015年7月4日放送分)
【放送日:2015年7月4日 PM9:00オンエア】
・ジェームズ・ホーナー、追悼特集
『宇宙の7人』ostより「Main Title」(co:ジェームズ・ホーナー)
『スタートレックⅡ カーンの逆襲』ostより「Main Title」(co:ジェームズ・ホーナー)
『銀河伝説クルール』ostより「Riding The Fire Mares」(co:ジェームズ・ホーナー)
『ブレインストーム』ostより「Michael's Gift To Karen」(co:ジェームズ・ホーナー)
『コクーン』ostより「Theme From Cocoon」(co:ジェームズ・ホーナー)
『薔薇の名前』ostより「End Titles」(co:ジェームズ・ホーナー)
『フィールド・オブ・ドリームズ』ostより「Field Of Dreams」(co:ジェームズ・ホーナー)
『グローリー』ostより「A Call To Arms」(co:ジェームズ・ホーナー)
『ブレイブハート』ostより「Wallace Courts Murron」(co:ジェームズ・ホーナー)
『ロケッティア』ostより「Rocketeer to the Rescue / End Title」(co:ジェームズ・ホーナー)
以上のラインナップでお送りいたします。
奈良のコミュニティFM、FMハイホー(81.4MHz http://www.fm814.co.jp/)にて、お送りしております1時間の「映画音楽専門番組」です。
放送日:毎週土曜日 PM 9時~10時
再放送日:毎週水曜日 PM 6時~7時 (土曜日放送分の再送です)
コミュニティFMですので、奈良県内だとカーラジオならたいてい聴取可能なのですが、自宅となると限られた地域しかクリアに聴けません。
もし、聴取可能だよ~、という地域にお住まいであれば聴いていただけるとありがたいです。
聴けない方には、雰囲気だけでもお伝えすべく、ここに放送内容をUPしておきます。
《裏ばなし》
おかげさまで、今回のオンエアで放送700回を迎えることができました。
2001年12月に放送を開始し、途中、数ヶ月の番組停止(あ、僕が不祥事を起こした、っていうわけじゃないですよ)と、局の不手際(笑)を除けば、たった一度だけ体調不良(咳喘息で声が出なくなった)で番組に穴を開けただけ。
こうして番組を続けて来れたのは、ひとえにこのような拙い番組でも「聴いてやろう」という奇特な方の応援があってのこと。
そして、やっぱり僕自身が映画と映画音楽が好きだという、ただそれだけの思いが継続の礎だったんだと思います。
1時間の番組を作るのに、たいてい3時間は費やしています。
毎週、局のスタジオの行き来を入れて4時間を番組製作に充てるというのは、普通にサラリーマンをしている身としては、なかなか難しいこと。
幸か不幸か、いまだ独り身ということもあって、そのようなこともできるのでしょうが、家庭を持っているとなるとなかなか困難なことでしょう。
それを考えると、正直複雑な想いもありますが(笑)、そういう生活ができる間は、そして、局から
「もう、番組辞めてください」
と言われない限りは、このまま番組は継続していくつもりです。
あらためて、このような場を与えていただいている(そして、好き勝手やってる番組を容認していただいてる)、「FM西大和事務局」には、心より感謝することしきりであります。
この場をお借りして、お礼申し上げます。
さて、そんな放送700回という記念すべき放送なのですが、前回も触れましたように映画音楽作曲家ジェームズ・ホーナーが事故により急逝されました。
このニュースにショックを受けたのは、僕ばかりではなく映画音楽ファンの多くの方も同じことと存じます。
番組も、700回ということでいろいろと企画は考えていたのですが、ここはやはりホーナーの追悼特集をするべきだろう、と思いまして、ご覧のようなラインナップとなりました。
今回はMCに極力時間を取っていません。
せっかく700回を祝って、リスナーさんからメール等々を番組にいただいていたにも関わらず、それらも一旦保留させていただき、できるだけ放送時間内にホーナーの作品を取り上げるよう心掛けました。
しかし、1時間という限られた放送枠では、あれもこれも、というわけにはいきません。
そこで、今回はホーナーの作品で、僕自身がお気に入りのものをピックアップいたしました。
なので、『タイタニック』がない! 『エイリアン2』は?
という声もあるでしょうが、ご覧のような結果になったことをどうかご了承いただきたく存じます。
そして、今回いただいたお祝いメール等々は、次回、時間をとってお送りいたしますので、合わせてご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。
僕自身、放送700回でまさかジェームズ・ホーナーの訃報を取り上げるとは、思いもしませんでしたよ・・・。

『宇宙の7人』(80)のサントラ。
黒澤明の『七人の侍』のSF版といえば聞こえはいいが、ロジャー・コーマン製作のB級映画。
それでも、ロバート・ボーンやジョージ・ペパードなども出演しているのは、長年娯楽映画一筋で名を馳せたコーマン親方の人脈の賜物だ。
そのロジャー・コーマンの下で映画にスコアをつけていたのが、作曲家として黎明期だったジェームズ・ホーナーである。
B級映画の音楽とはいえ、ホーナー自身は学士号、修士号を持つ作曲家、おそらく彼としては、クラシカルなスコアを書きたくてうずうずしていたのではないだろうか。
そんな彼の力量の片鱗が伺えるのが、本作である。
SF映画にクラシカルなスコアを書いて一世風靡したジョン・ウィリアムズの影響は、相当に絶大だったようで、本作の内容も『七人の侍』をベースとはいいながら、数多く作られた『SW』のエピゴーネンだ。
よって、B級とはいいながら、ホーナーのスコアもフル・オーケストラによるもので壮大。
ポスト、ジョン・ウィリアムズ、ジェリー・ゴールドスミスとしてその存在を強烈にアピールしたのが、本作だといっても過言ではないだろう。
ただし、メインテーマにはすでにゴールドスミスの『パットン大戦車軍団』の影響があるのも否めないのだけれど・・・。
サントラCDは様々なレーベルからリリースされたが、2011年に米BSX Recordsから1000枚限定でリリースされた盤が、収録曲数がもっとも多い。
しかも、アラン・ハワースによる効果音も別トラックで収録されている。
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『スタートレックII カーンの逆襲』(82)のサントラ。
『宇宙の7人』で、その存在を知らしめたホーナーが、さらに注目を浴びたのがこの人気シリーズの第2弾。
監督したニコラス・メイヤーは映画音楽ファンでもあり(監督業の他にもサントラのレビューの仕事なんてしてたりする)、彼が自作の音楽担当にホーナーを起用したのは、その実力に対する先見の明だったのかもしれない。
無論、1作目を担当したゴールドスミスの後を継ぐ形での登板である、ホーナー自身も感動で打ち震えたのではないだろうか。
当然、プレッシャーも大きくのしかかってきたことだろうが、それを感じさせない見事なスコアに仕上がっている。
なにより1作目との差別化という意味では、冒頭にアレクサンダー・カレッジによるTVシリーズのテーマ曲のフレーズを挟み込むところが、ホーナーの作曲家としての意地だったのだろう。
実際、本作で書かれたスコアは、ホーナー自身のエポック・メーキングだったようで、後に本作で書かれたスコアに酷似したものが、彼が担当した作品の随所で聴くことになるのだった。
サントラCDは2009年に米Retrograde/FSM Recordsからリリースされたものがいわゆる完全盤。
このレーベルからはシリーズの完全盤が次々とリリースされている。
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『銀河伝説クルール』(83)のサントラ。
『SW』のヒット以降、SF映画は当たるということで、様々な監督がこのジャンルに手を出した。
『ブリット』(68)のピーター・イェーツが撮った本作もその流れの一つといえる。
イギリスとアメリカの合作だが、パインウッド・スタジオで撮影されているなど、イギリス色の強い異色SF活劇となっており、無名の頃のリーアム・ニーソンも出演している。
スコアの演奏はロンドン交響楽団。
『SW』以降、映画音楽御用達オーケストラの印象が強いが、この頃からホーナーもロンドン交響楽団を起用してのスコア収録をしている。
日本での映画公開時、映画紹介番組で本作のスコアが流れていて、それを聴いたのが僕のホーナー作品とのファースト・コンタクトだった。
サントラCDもレーベルを変えて幾度かリリースされているが、2010年に米La-La Land Recordsレーベルより2枚組3000セット限定リリースされたものがいまのところ完全盤。
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『ブレインストーム』(83)のサントラ。
人の知覚をテープに記録する研究をしている科学者たちの物語。
心臓発作で亡くなった人の知覚を記録し、それを他人が見る(体験する)ことで、臨死体験もできるという、ハードSFな内容なわりには、スピリチュアルな味わいももった、異色SFサスペンス映画の佳作。
監督はSFXマンのダグラス・トランブル。
通常の場面を35ミリで撮影し、知覚を体験する場面では65ミリと、劇場もそれに合わせて映像がワイドになるという、なかなか面白い上映方式がとられていた(僕が観たのは、今は無き梅田のOS劇場だった)。
ホーナーのスコアはロンドン交響楽団の演奏とアンブロジアン・シンガーズのコーラスが荘厳。
そして、シューベルトの「鱒」を思わせる室内楽風の愛のテーマがとにかく美しい。
ちなみに、僕がホーナーがスコアを担当した作品を劇場で観た最初の作品が本作である。
サントラCDは米VARESE SARABANDEが原盤。
日本のカルチュア・パブリッシャーズからも国内盤がリリースされたこともあった。
【amazon】※国内盤

『コクーン』(85)のサントラ。
とある老人養護施設を舞台に、老人と宇宙人との交流を描いた、SFファンタジーの佳作。
監督はロン・ハワード。
ドン・アメチー、ジェシカ・タンディといった老人を演じた俳優たちの演技も好評で、続編も作られた。
ジャージーなスコアや抒情的なスコア等々、ホーナーが油の乗り切った時期での仕事だったことが伺える。
メインテーマの抒情かつ荘厳なスコアは屈指の仕上がり。
サントラCDは2013年に米INTRADAレーベルより完全盤がリリースされている。
マイケル・センベロが歌う挿入歌も収録。
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『薔薇の名前』(86)のサントラ。
中世の修道院で起こった殺人事件の謎を追う、僧侶の師弟コンビの活躍を描く。
と書くと、エンターテインメント性の高い娯楽映画のようだが、たしかにそういう面白さもあるが、徹底的な時代設定の再現等々、芸術的なカラー濃厚な作品。
ウンベルト・エーコの原作をジャン・ジャック・アノーが監督、ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターが僧侶の師弟を演じた。
日本公開時、ロングラン・ヒットを記録し、僕も東京で暮らしていた頃に、新宿のシネマスクエアとうきゅうで観たが、なかなかチケットがとれないほどの盛況ぶりだったことをおぼえている。
フランス、イタリア、西ドイツの合作であり、どのような経緯でホーナーが参加することになったのか、詳細はわからないが、非ハリウッド的な本作においても、ホーナーは見事なスコアを書いている。
寺院が舞台ということで、宗教的なコーラスも取り入れているが、哀愁漂うメインテーマの旋律ともども、ホーナーの実力が大いに発揮された仕上がりだったといえる。
サントラCDは、独Teldecレーベル、仏Virgin Recordsレーベルからいずれも映画公開時の86年にリリースされており、現在も一部入手可能である。
【amazon】※ドイツ盤
【amazon】※フランス盤

『フィールド・オブ・ドリームス』(89)のサントラ。
,主人公の農夫が、ある日神の啓示(?)を受け、トウモロコシ畑を野球場に作り替える。
そこで起こる奇跡を描く、ファンタジー・ドラマ。
主人公をケヴィン・コスナーが演じ、クライマックスにはこれが遺作となったバート・ランカスターも登場する。
初期の頃のホーナーは、SF映画やアクション映画のオファーが多かったように思うが、こうした人間ドラマ(まぁ、本作も観ようによっちゃSFともいえなくもないけれど)でもいいスコアを残した。
サントラCDは公開時、国内盤もリリースされていたが、現在は輸入盤で入手可能。
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『グローリー』(89)のサントラ。
南北戦争の際、北軍において黒人だけで組織された部隊と、それを指揮する将校の姿を描いた、戦争巨編。
将校役にマシュー・ブロデリック、黒人兵士を演じたデンゼル・ワシントンは本作で助演男優賞にてオスカーを手にしている。
壮大なスケールのスコアは、ジェームズ・ホーナーの真骨頂。
ハーレム少年合唱団のコーラスが、さらに感動を呼ぶ。
テーマ曲は最近、日本のバラエティ番組(芸能人格付けなんとかってやつ)で使われていたりする。
サントラCDは米Virgin Recordsよりリリースされ、公開当時は国内盤のリリースされていた。
現在は輸入盤が入手可能。
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『ブレイブハート』(95)のサントラ。
スコットランド独立のためにイングランドと戦った英雄、ウィリアムス・ウォレスの姿を描いた歴史大作。
監督、主演を担当したメル・ギブソンは、本作でいずれもオスカーを受賞。
スコットランドが舞台となるため、ホーナーはスコアにバグ・パイプやケーナといった楽器を用いたアイリッシュ・サウンドを取り入れている。
オーケストラ演奏はロンドン交響楽団。
サントラCDは米Decca、Londonレーベルからリリースされており、スコアとトラディショナル、ナレーションを収録した第2集も、いずれも公開当時は国内盤でもリリースされていた。
現在は輸入盤が入可能だ。
また、MP-3での入手も可能。
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『ロケッティア』(91)のサントラ。
第二次大戦中、曲芸飛行のパイロットだった主人公が、ロケットパック(ランドセルみたいなのにロケットが付いたようなもの)を背負って活躍するSF冒険活劇。
そのロケットパックをねらって、ナチスのスパイが暗躍するという内容だが、ロケットパックを開発したハワード・ヒューズ、ナチスのスパイ(エロール・フリンがモデル。フリン自体、本当にスパイ化はあくまで噂話だけど)等々、史実とリンクするところもある伝奇的面白さもある。
ジェームズ・ホーナーはこのヒロイック・ファンタジーを、明快なテーマ曲を用いて盛り上げている。
特に本作のエンドクレジットは、どちらかといえば、エンドクレジットの最後のスコアも、静かに終わるケースのい多いホーナーの作品のなかで、数少ないクレッシェンドで盛大に終わるもので、個人的に最もお気に入りの一曲。
さらに、日本公開された頃に、ジョン・マウチェリー指揮ハリウッドボウルオーケストラの来日公演があって、その際のアンコール曲としてプログラムにも挙がってなかった本作のエンドクレジットが演奏された。
その時の強烈な印象もあって、個人的にホーナー作品でベストを挙げるとしたら、このスコアになる。
サントラCDは映画の製作がディズニーの関連会社ブエナビスタだったので、米Hollywood Recordsよりリリースされた。
公開当時は国内盤もリリースされたが、現在は輸入盤ともども廃盤。
amazonで入手可能だが、かなりの高額になっている。
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- [2015/07/03 01:00]
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