ジェームズ・ホーナー、死去 



ジェームズ・ホーナーが亡くなった。

彼の作品を初めて聞いたのは、『銀河伝説クルール』(83)が最初。
民放AM局の映画紹介番組で、スコアの一部が流れており、それを聴いて「カッチョエエ~~~!!」と(笑)
けっきょく、映画は劇場で観ることはかなわなかったけれど、当時ビクターからリリースされていた日本版LPレコードは購入して、何度も聴いていたものだった。

当時、日本版「スターログ」誌上にて、門倉純一氏によるサントラ・レビュー記事でホーナーが手がけた『スタートレック2 カーンの逆襲』『宇宙の7人』の凄さを知ってはいたが(あ、個人的に映画音楽の心の師匠は関光夫氏と門倉純一氏なのです)、前者はクラスメートにやたら『スタートレック』をべた褒めする奴(しかも『スターウォーズ』は「非倫理的だ」とけなすけなす・(笑))の影響で、3作目が公開されるまでノータッチだったし、後者は映画そのものを観る機会もなかったので、かなり後年になるまでスコアも聴く機会がなかった。


実際、映画館でホーナーのスコアに触れたのは『ブレインストーム』(83)が最初だ。
荘厳なコーラスに始まり、それを打ち消すかのような強烈なパーカッション。
それに続く、シューベルトの「ます」を思わせる流麗なスコアと、それまで好んで聴いていたジョン・ウィリアムズやジェリー・ゴールドスミスの流れを汲む作曲家というイメージはあったけれど、『ブレインストーム』のスコアは、それらとは一味違う! と思ったものだ。
また、エンディングもクレッシェンドで壮大に終わるのではなく、静かに静かに締めくくるというスタイルは、個人的には欲求不満(最近のジアッキーノもそんな感じやね)ではあったが、それも彼のオリジナリティと捉えたものだ。


その後、ヒット作にはホーナーの名前がクレジットされ、いわゆる売れっ子作曲家となったわけだが、映画自体は面白かったけれど、音楽的に不満が多かった『エイリアン2』(86)あたりから、クラシックからの引用、自作の引用が目立ってきたような感じで、それを否定的に捉える声も多くなってきたように思う。

それほどクラシックに精通しているわけではないが、『エイリアン2』の冒頭はハチャトゥリアンの「ガイーヌ」の引用ってのは、僕のような者でも判る。
お気に入りで聴いていた『ウィロー』(88)だって、シューマンの「ライン」の引用だというのも後年知った。
「ライン」そのものを聴いたことがなかったので、いつだったかCDショップで「ライン」が流れていて、「え? 『ウィロー』?」って思ったものだった。

そして、自作の引用という点では、お馴染みのフレーズ「♪タラララ~♪(楽譜に書けないけど、判る方は判るだろう。昔、僕の番組でも取り上げたことがあった)」が必ず出てくるし、他にもよく似た一節を「あ、またやってるよ・・・」と、思わず失笑してしまうくらいに惜しげもなくやってしまうのも、ホーナーの特徴(?)だった。
まぁ、これは僕としてはホーナーなりの自作への「みとめ印」代わりだったんじゃないかな、と思う。
意識してやったか定かじゃないが、あのフレーズを入れないと、俺のスコアじゃない! みたいな感覚があったんじゃないだろうか。


そんな長所も短所もひっくるめて、現代のハリウッドの映画音楽界の第一人者だったことは間違いのないジェームズ・ホーナー。
97年の『タイタニック』では見事、作曲賞と歌曲賞でダブル・オスカーに輝いたのも有名な話だ。


また、思わぬところで、日本でも大ヒットとなったダイアナ・ロスが歌う「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」。
僕自身は、あのTVドラマでこのナンバーが使われていることをまったく知らなかったので、当時、都内のあちこちでやたらとこのナンバーが流れていて、
「なんで、『謎の恐竜大陸 リトルフットの冒険』(89)なの???」
と不思議に思ったものだった。

TBS系のドラマ『想い出にかわるまで』(90)の存在を知ったのは、なんと最終回の放映日(笑)
TVからあのナンバーが流れてくるのを聴いて、さらに不思議な感覚だったことを覚えている。
(TBSはそのヒットに気をよくしたのか、その後も『芸能社会』(90)というドラマの主題歌にホーナーの『アメリカ物語』(86)の主題歌、「サムウェア・アウトゼア」を日本語訳詞したナンバーを小林明子が唄った「こころの炎」を使ったけれど、さほどヒットしなかったように思う)


ハンス・ヅィマー一派が台頭している近年、彼の活躍の場も徐々に狭められているような印象があるが、それでも盟友ジェームズ・キャメロンの『アバター』や、それこそ彼が起用されること自体がアメイジングだった『アメイジング・スパイダーマン』といった作品で、自身の存在を強烈にアピールしていたものだった。


個人的に彼の作品でお気に入りを挙げるとするならば、

『ブレインストーム』(83)
『銀河伝説クルール』(83)
『コクーン』(85)
『薔薇の名前』(86)
『フィールド・オブ・ドリームス』(89)
『グローリー』(89)
『ブレイブハート』(95)


あたりになるか。

もちろん、『タイタニック』や『アバター』もいいが、最近(でもないか)では、フィギュアの村上佳菜子選手が初期の頃、演技でよく使用していた『マスク・オブ・ゾロ』がお気に入り。

やはり80年代が彼の黄金期だったように思うし、僕自身が東京で暮らしていた頃にリンクするのは、それだけ映画にふれる機会が多かったということにもつながるのかもしれない。


そして、個人的にベスト1に推したいのは91年の『ロケッティア』だ。

余談だが、先日『トゥモローランド』を観ていて、ふとこの作品を思い出した(映画をご覧になった方は、何を指しているのかお判りかと思う)のである。
あの空中を飛ぶ爽快感は、『ロケッティア』を観た時と同じ印象を受けたもので、ジアッキーノのスコアもホーナーの流れを汲むシンフォニックなものだったし、なおさらだ。

それはともかく、個人的にはこの『ロケッティア』のスコアはけっこうお気に入りだったし、映画そのものも大満足な一本だった。
そして、公開された直後あたりに、ジョン・マウチェリー指揮、ハリウッドボウル・オーケストラの日本公演があって、その際のアンコール演奏が、なんと『ロケッティア』の「エンドタイトル」だったのである。

これには心底驚いたし、飛び上がるほど嬉しかったものだ。
まさかライヴで聴けるとは!

ピアノのイントロが始まった時には、感激のあまり涙したくらい。
しかも一般の聴衆の中で、たとえそれが映画音楽中心のコンサートだったとしても、「この曲は何なんだ?」を思った方も少なくなかったことだろう。
しかもこのスコアは、ホーナーお得意(?)の静かに終わる曲ではなく、クレッシェンドで締めくくるというパターンでもあり、個人的にもお気に入りのスコアだったので、一瞬、これは夢ではないだろうか? とも思ったものだ。
その時の印象が強かったので、よけいに『ロケッティア』の「エンドタイトル」はお気に入りの一曲になったのである。


聞けば、ホーナー自身も飛行機が好きで、今回の惨事も彼自身が操縦するジェット機が墜落したことによるものだった。

フライト中、彼の脳裏には何のメロディが流れていたのだろう?
新作のものだったのか、それとも作曲し終えた作品だったのか。
僕としては、『ロケッティア』の一節が流れていたと信じたい。

残念ながら、惨事は覆すことはできないが、ホーナー自身は永遠にフライトを続けていることだろう。
そして、彼が残した数々の旋律は、今後もいろんな形で我々の耳に響くに違いない。

合掌。






コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://binsan67.jp/tb.php/472-5c21f268