■『ANNIE/アニー』■(映画) 







アニー
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日本でも過去に何度も日本人キャストで公演されている、人気ブロードウェイ・ミュージカル2度目の映画化。
資料によれば、3度目と書かれてあるものも見受けられるが、82年にジョン・ヒューストンが映画化し、その続編を入れるか入れないかでカウントが違ってくるというわけだ。
ま、その続編は映画オリジナルなので、厳密に言えば今回の作品は2度目ということになる。

んなこたぁ、どうでもいいんだけど(笑)、とにかく今回の映画化は舞台設定が現代に置き換えられているというのが大きく目を引くところ。
オリジナルの物語の時代背景が大不況時代と言われた1933年なので、この改変には何か大きな意味があるんだろうな、と思った。

なにしろ、オリジナルのミュージカルをほぼそのままに映画化した82年版は、公開当時においても最早オールド・スタイル濃厚な内容だった。
監督したジョン・ヒューストンはミュージカル映画初監督だったようだが、そこに彼なりのノスタルジー、たとえばMGMミュージカル映画といった作品群に対する思いを込めて作ったとも考えられる。
と当時に、いや、むしろあれはパロディ映画だったんじゃないか、と勘繰ってしまうくらいに、人工的な様式美ぷんぷん漂うその内容には、82年の段階ではすでに違和感を抱かずにはおれなかった。

アニーといえば赤毛でそばかすだらけのブサカワ(笑)というイメージを踏襲、というか決定づけたアイリーン・クインのキュートな演技と見事なヴォーカル、そして堂々たるアルバート・フィニーの名演が光る作品だが、嬉しいといえば歌い踊り、犬を拾ったといえば歌い踊る(笑)、出演者たちの能天気かつ大袈裟な演技は、そのままミュージカル映画嫌いの御仁たちには蕁麻疹モノ必至だ。
逆にミュージカル映画好きな僕のような人種には、こういう映画がたまらないわけで、最近、今回の映画が公開されるに合わせて、82年版が廉価版DVDとなって書店でも販売されているので、興味のある方はぜひご覧になってみるのもいいだろう。


話が大きく反れた。
今回の映画で目を引いたのは、その舞台設定が現代になったということに合わせて、ヒロイン、アニーが黒人の少女になったというところ。
同じく、彼女を養女にする大富豪も黒人である。
舞台が現代で、主要キャストが黒人というのは、エンターテインメントに社会性を盛り込んだ内容になっているんだろうと思いきや・・・どうやらそうではなかったようで。

舞台を現代にシフトしようとしたのは、かのエマ・トンプソンの案だったとのこと。
女優の彼女がいかなるいきさつで脚本を要請されたのか、詳細は定かではない。
ただ、完成版には彼女のクレジットがないところをみれば、最終的には原案からは内容も相当に違った映画に仕上がっているのだろう。
少なくとも、本作からはMTV以降の世代が作った映画という意味においての現代、という印象しか残らなかった。


問題はキャストの方。
そもそもこの映画、プロデューサーは、かのウィル・スミス夫妻だ。
この夫婦、映画をプロデュースすれば、主演に自分の息子を据えるという、いわば親バカなことで有名で、主演に息子を据えるというか、息子を主人公の映画を企画するといったほうが早いのだが、映画を私物化するその姿勢は毎回いかがなものかと思う。
アメリカ国民もバカじゃないわけで、この夫婦が企画した映画に対する評価をみれば、そのあたりは明白だ。
しかし、当の夫婦はそれでも懲りないようで(笑)、今回の映画も当初は自分の娘を主役に据えるつもりで企画したものだったという。
それを考えると、大富豪役が黒人だというのも納得がいく。
娘を主役に据え、ウィル・スミス自身が大富豪役を演じようとしていたのだろう。

だが、企画から撮影までの期間が延びてしまい、娘はアニーを演じる年齢からは遠ざかってしまった。
その結果、アニー役には『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』(12)で、アカデミー賞史上最年少で主演女優賞にノミネートされたクヮヴェンジャネ・ウォレスを起用。
大富豪役には『Ray/レイ』(04)でヴォーカル披露済みなジェイミー・フォックスを起用したのは大正解だったと思う。
一歩間違えればホームパーティーの仮装劇みたいなものを見せられる可能性もあったわけだ。
むしろこのあたりのキャスティングは、ウィル・スミス夫妻というよりも、映画会社からの意向が強かったんじゃないかと思う。


じゃあ、舞台を現代に移し、主役を黒人少女にするという改変が、はたして悪かったのかといえば、けっしてそうではない。
MTV世代以降のクリエイターが作った音楽映画という観点からすれば、けっこうよくできている作品だったと思うし印象は悪くなかった。

たとえば、劇中で最も有名なナンバー「トゥモロー」の使い方にしても、82年版は世界恐慌という時代背景のなか、ニューディール政策でもって国民の生活を豊かにしようと考えるルーズベルト大統領の考えに共感した形で歌われるのに対し、今回の映画ではあくまでヒロイン、アニーが自身の魂を奮い立たせる意味で歌うのである。
それを考えると、むしろ82年版のほうが一見エンターテインメント色濃厚に見えるが、実はプロパガンダ的要素を忍ばせていることがわかる。

それに対し、今回の映画の視線の先にあるのは、公よりも個人なのである。
顕著な例では、アニーの敵役ともいえるミス・ハニガンの扱いだ。
82年版では酒浸りの守銭奴としか見えない(クライマックスのいきなりの改心ぶりは、先にも書いたように映画全体の違和感以上のものがある)彼女だが、今回も基本的な描かれ方は同じなれど、彼女も心の内に秘めた思いがあるキャラクター設定となっている。
自身の内面を見つめ直し改心していく姿は、この『アニー』という物語が持つ本来のテーマだと思う。
いわば、クライマックスへ向けてポジティヴなストーリー展開を形作る、もう一人のヒロインなのだ。
演じるキャメロン・ディアスも堂々たる歌唱っぷりを披露しており、思えば『バニラ・スカイ』(01)では、彼女は歌はどうも・・・と思うようなヴォーカルを披露しておられたが、10数年経ってこの変わりようにはある意味感動的だった。


思わずワクワクするようなオープニング・シークエンス(このあたりは、本当にMTV世代というのがよくわかる演出になっている)は出色の出来だが、惜しむらくはこのスタイルをクライマックスのアクション・シーンにも用いてほしかった。
82年版と同じく、ヘリコプターを扱ったアクション・シークエンスだが、映像的にはそれなりに躍動感があるものの、とりたてて優れた場面とはいえない。

全体的にオリジナルから大きく乖離する内容ではあるが、それなりに創意工夫と熱意が感じられる作品である。
ゆえにクライマックスでいまひとつ詰めが甘かったなぁ・・・あそこも音楽的な編集と演出を施せば完璧だったのになぁ・・・ということを考えれば、じつに惜しい作品だった。


アニー
音楽についてもう少し書けば、チャールズ・ストラウスによるオリジナル曲を、シーアとグレッグ・カースティンが大胆にアレンジした形となっている。

バックの演奏からはアコースティック感を排除し(とまではいかないけれど)、まるでクラブ・ミュージックの如く、打ち込み系のサウンドが展開される。
特にドラムセクションは完全に人工的な響きである。

じゃあ、それが音楽的にそぐわないか、となるとそうではない。
先にも書いたように、舞台設定を2014年のニューヨークに置き換えており、そこにはアコースティックな音色よりも、むしろ人工的な音が合うように思う。

人工的と書いたが、そこにヒューマンな味わいを持たせるのが、出演者たちのヴォーカルなのだ。
オリジナル曲に加え、今回の映画用に新曲も書き下されているが、共に違和感がないところが面白いし、クワベンジャネ・ウォレスが演技だけでなく、キュートなヴォーカルを披露。
もちろん名曲「トゥモロー」も朗々と歌い上げる。
ジェイミー・フォックスも甘い歌声で魅了してくれるし、先にも触れたキャメロン・ディアスの、まさかの歌いっぷりには感動した。

サントラCDにはそれらの楽曲を余すところなく収録している。
ただ、日本語人アーティストによるボーナス・トラックは正直蛇足だ。
いまさら『アナ雪』効果を狙ったわけじゃないだろうが、こういうところで自分ちのアーティストのプロモーションをするのはどうなんだろう。


最後に、本作でも最も許せなかったところを一つ。
日本公開版のエンドクレジットには、日本の某アーティストによる「トゥモロー」が流れる。
ちなみにサントラCDには収録されていない。それは正解。

わざわざ本編が2014年という現代のカラーを、演出、音楽共々徹底しているというのに、なぜ、エンドクレジットであんなにもアコースティックなアレンジの「トゥモロー」を流すのだろう?
あのイメージソングを企画したのは誰かはわからないが、はたしてその方は今回の映画、観ているんだろうか?
本編のカラーをまったく考えていない暴挙であり、実に不愉快だった。

誤解なきように断っておくが、アーティストには罪はない。
そのナンバーを企画した者の神経を疑うのである。

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