■『ゼロの焦点』■(DVD) 


ゼロノショウテンオリジナル
近く犬童一心監督版が公開される松本清張原作の61年に映画化された作品。
監督は清張作品を多く手がけた野村芳太郎。
恥を忍んで書きますが、松本清張作品は映画やドラマは観たことがあるものの、原作となると一作も読んだことがないのです。
個人的には邦画ベスト1だと思う『砂の器』だって原作読んでませんからねぇ。まして「ゼロの焦点」はタイトルこそ知ってはいましたが、いったいどんなお話なのかもついこの間まで知らなかったくらい。
今回、再映画化されるということでようやく本作に興味を持ちまして、まずは61年の野村芳太郎版を観ることにしました(っていうか、先に原作読めよ!)。


ヒロイン禎子さん(「さだこ」って読むのかと思ったら、「ていこ」でした。演じるは久我美子)は、お見合い結婚して幸せの絶頂でしたが、結婚して10日後に旦那さんの憲一さん(後に悪役専門になる南原宏治)が金沢へ出張へ行ったきり行方不明になってしまいます。
雪深い北陸の地で、憲一さんの部下(積木くずしになるずっと前の穂積隆信)とともに憲一さんを探す禎子さん。
しかし消息がつかめないまま、徐々に憲一さんにはもう一つの顔があることを突き止める禎子さんでありました。
ここに金沢の耐熱煉瓦会社の社長夫人(高千穂ひづる。ちなみに社長は「おら、こんなやつちらねぇ~~~!by『砂の器』の加藤嘉)やら、同会社の社員(有馬稲子。とってもキュート! 特に後半の彼女の演技が素晴らしい!!)やら、憲一さんのお兄さん(後に黄門さんになる西村晃。ちなみにその妻役に沢村貞子)らが絡んできて、失踪事件がやがて殺人事件に発展し、物語は本作以降名所になりましたヤセの断崖を舞台に急展開をみせます(このクライマックスのシチュエーションは、その後テレビの2時間ドラマの定番になりました)。

本作は上映時間95分。
最初の1時間でほとんどのストーリーが語られて、最後の30分で謎解きというわかりやすい構成なんですが、最初から尺が決まっていたのでしょう、とにかく物語展開の早いこと早いこと!
刑事や探偵が謎を解くのではなく、ヒロインが消えた夫を求めてあれこれ捜査するという物語なのですが、夫失踪とそれに絡む殺人事件のカギが、いとも簡単に彼女のもとに転がり込んでくるかのごとく、様々な疑問が次々と解明されていくのを目の当たりにして、原作を読んでいない僕としても、

「これ、原作をかなり端折ってるよなぁ」

という印象が濃厚でした。
ちなみに脚色は橋本忍&山田洋次のゴールデン・コンビ。むむむ・・・。
超ハイ・テンポな展開ゆえ、物語の重要なカギとなる「あるエピソード」に対するカタルシスが希薄になっているのは否めません。
やたらヒロイン自らの心情が朗々と語られるモノローグや、登場人物のセリフで謎解きが説明されるのは、橋本&山田コンビによる脚色術というべきでしょうが、それにしても、あまりにもハイ・テンポ過ぎて・・・。

情報過多な昨今ではにわかに信じがたいことなれど、結婚した相手がそれまでどのような経歴を持っていたのか、本作が発表された昭和30年代当時としては、なかなか把握することは困難だったのでしょう(でも、相手の素性を調べる「聞き合わせ」という習慣はあったと思うのですが・・・)。
ゆえに本作がリアリティをもって読者、あるいは観客に投げつけてくるものは大きかったのだと思います。
しかし、21世紀の現代となってはいまいちピンとこないのも事実であり、それだけヒロインに感情移入できるか否かで、作品に対する評価も大きく左右されてくると思います。
また、当時の時代を考えれば、先にも書いた本作の重要なカギとなる「あるエピソード(有名な物語なので、敢えて明記しません)」についても、現代よりはまだリアリティのある事柄だったのかもしれません。
しかし、この61年に作られた本作においてもその部分は登場人物のモノローグによって再現されるのみで具体的なシーンは登場しません。なので、当時としても映画の謎解きという意味において観客の感情に強く訴えることができたのだろうか? という疑問が・・・。
川又昂のカメラは北陸の寒々とした景色を見事に捉えており、人間の心の澱を見事に表現していますし、芥川也寸志による情感たっぷりなスコアも本編に足りなかったなぁと感じた重厚さをもたらすにあまりあるもので、恵まれたスタッフの下で製作されつつも正直なところ、期待外れの感も否めない仕上がりでありました。

さて、それを考えると今度の犬童一心監督版、いまこの作品を映画化するうえでどのような意味があるのか、単に松本清張生誕100年というイベント映画でしかないのならば、かなり分が悪いんじゃないのかな、と思いつつもどのように映画化されているのかそこはとっても興味深いところではあります。


あと、重箱の隅を突くようなことを。
クライマックスで犯人が車で逃走しようとする際、車の窓に撮影スタッフがバッチリ映っているのは微笑ましいとしても、劇中、毒殺に使用される青酸カリ入りウィスキー、その銘柄がバッチリ映っているのは、大らかといえば大らかですが公開当時、メーカーからなんにもクレームがつかなかったのでしょうか???

【採点:100点中55点】

※予告編に加え、マキノ佐代子(マキノ雅弘監督のご息女)による「シネマ紀行」を収録。映画の舞台となった地を彼女が訪れるというもの。ここで地元の元役場職員さんによる撮影秘話が収録されているんですが、これがけっこう面白かったです。


※原作本です。
内容とは関係ないですが、新潮文庫は栞代わりのあの「紐」がいいですねぇ。



※小学館から発行されている、松本清張作品のDVDと解説書が一体となったシリーズ。ちなみに第1回配本は『砂の器』。
解説書部分には当時のポスターも掲載されています。面白いのはポスターで一番大きく写っているのは久我美子ではなく有馬稲子なんですよね。




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