■『KANO~1931 海の向こうの甲子園~』■(映画) 







カノ1931ウミノムコウノコウシエン
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一昨年、日本でも公開され、感銘を受けた台湾映画『セデック・バレ』(11)のスタッフ再結集の本作。

『セデック・バレ』が2013年の台湾での興行成績1位となったのに続き、本作は2014年の1位になったという。
それだけ台湾本国の人々の共感を得たということだ。
日本ではいつ公開になるのかと楽しみにしていたら、意外とあっさり公開されたのには正直拍子抜けしたものだが(笑)、それでも嬉しいことには変わりがない。

この時期、『バンクーバーの朝日』、『アゲイン 28年目の甲子園』に続き、なぜか野球に関する映画が立て続けに公開されたが、その決定版ともいえるのが、この『KANO』である。
『セデック・バレ』の監督だったウェイ・ダーションは本作ではプロデュースにまわり、『セデック・バレ』では俳優として出演していたマー・ジーシアンが監督を務めている。


日清戦争の結果、下関条約において日本は当時の清国の領地だった台湾を日本の統治下とすることとなった。
以降、第二次大戦で日本が敗戦するまで、台湾は日本の一部なのだった。
その中で、日本人と台湾に住む人との間で衝突が起こったのも不思議ではない。
それを描いたのが『セデック・バレ』だったわけだが、とにかく当時の台湾は、そこで暮らす人々も混沌としており、台湾には大陸から渡ってきた漢民族と、もともと台湾に住んでいた原住民(しかも数多くの部族がいた)、そしてそこに日本人も加わったという形。


1931年(昭和6年)。
この映画の主人公である近藤兵太郎(永瀬正敏)は、もともと松山商業高校の野球部の監督だった。
野球に賭ける思いと情熱が、部員に対してスパルタな指導という形で出てしまったことで学校の反感を買い、失意の中、日本本土を離れて妻(坂井真紀)と娘と三人で台湾の嘉義という街に移り住み、会計士として暮らしていた。

ある日近藤は、地元の高校の野球部員たちが練習しているところに出くわす。
その嘉義農林学校野球部の部員たちは、大陸からの漢民族、台湾原住民、そして日本人と当時の台湾そのものを現すかのような多民族で構成されていた。
近藤は、部員たちそれぞれの身体能力を目の当たりにし、一度は失っていた情熱、そして部員たちを甲子園へ出場させるという熱意が蘇ることを実感する。
周囲の勧めもあって、近藤は嘉義農林学校、つまり嘉農(KANO)野球部の監督となり、部員たちを厳しく指導していくことになる。
その甲斐あって、嘉農は地元台湾での地区予選で優勝。
見事、甲子園への出場を果たす。
そこでも並み居る日本本土の強豪校を打ち負かし、いよいよ中京商業との決勝を迎えるのだった。


とにかく、「熱い!」の一言に尽きる(笑)
部員を指導する近藤は、終始喜怒哀楽を顔に出さない、何を考えているのかわからないような鉄面皮キャラ。
それじゃあ野球に対する情熱なんて、観ているこちらには伝わってこないじゃないかってなものだが、彼のちょっとした仕草や行動に彼の部員たちへの愛情が垣間見え、それがたまらなくいいのだ。
劇中、いろいろとそんな場面があるのだが、それが是非ごらんいただくとして、特にクライマックスの嘉農のピッチャーとのバンテージの場面(ご覧になった方はお判りかと思うが)などは、涙なくしては観られない。


意外だったのは、日本統治下の台湾ということで、どうしても日本人に対する否定的な描写というのも出てくるんだろうな、と思っていたがほとんどそういうものはなかった。
(一部、台湾原住民に対して偏見を持った日本人記者(小市慢太郎)のような人物も登場するが、彼でさえクライマックスでは嘉農の部員たちの姿に感銘を受ける)

『セデック・バレ』が、台湾原住民による抗日運動(蜂起した台湾原住民タイヤル族に、本土から移住していた数多くの日本人が殺害された。その鎮圧のため送り込まれた日本軍とタイヤル族との間で凄まじい攻防戦が繰り広げられた)である「霧社事件」を描いていたにもかかわらずだ。
しかも、舞台となる1931年は、方や「霧社事件」が起き、方や嘉農高校が甲子園に出場した年という、台湾という国で考えると相反するかのような出来事が起こった年でもある。


今回、本作をプロデュースしたウェイ・ダーションは、『セデック・バレ』の前に日本でもヒットした『海角七号 君想う国境の南』(08)を撮っている。
台湾と日本の関係、統治下の台湾と現代の台湾をオーバーラップさせた秀作で、その中でも日本人に対する描写には相当に気遣った演出をしていたように思う。
そこに、彼の台湾と日本との関係、それに対する考えが強く表れているように感じるのだ。

たしかに第二次大戦を挟んで、日本はアジア諸国に対して理不尽なふるまいをしたかもしれない。
しかし、歴史は歴史として、いまは友好的な関係を築くことが互いの国の発展に結びつくのではないか。
もちろん、そのためには事実はきちんと理解し踏まえたうえで。
そのきっかけの一つして、彼の作る作品が大きな意味を持ってくるのだと思う。
『セデック・バレ』で描かれたものは日本と台湾との間の黒歴史ではあるが、その中においてもけっして日本人がすべて悪い、という描き方をしていないところにも顕著である。
ゆえに僕はあの作品にも感銘を受けたのだった。

さらに本作で興味深かったのは、本作では嘉農と近藤監督との熱きドラマがメインとなっているが、ここに当時の台湾南部の灌漑事業に貢献した八田與一(大沢たかお)のエピソードも時間を割いて盛り込んでいること。
ここでも、日本がけっしてアジア諸国にとってマイナスな存在ではなかったことを、日本人ではなく台湾映画で描いているというところに意義があるのだ。


そういった諸々のエピソードを盛り込みつつ堂々3時間に及ぶ本作。
台湾映画とはいえ8~9割は日本語が飛び交い、顔なじみの日本の俳優も登場することで親近感もある。
さらにテンポのよい演出でまったく時間を感じさせない。
特に野球の場面になると、まるで実況中継を観ているかのような臨場感もあって、そのあたりの満足度も相当高い。
ここで、もう少し部員一人一人を掘り下げれば、さらに物語に深みが出たかと思うのだが、それをすると3時間では収まらなくなってしまうだろう(笑)

とにかく、すぐ隣の国であり、比較的友好的な関係にある台湾と、かつてこのような出来事があったということを知るだけでも、大きな意義のある作品。
ぜひ、観る機会と時間的な余裕があれば、ご覧いただきたい逸品である。



カノウウミノムコウノコウシエン
スコアを担当したのは佐藤直紀。
いまさら説明するまでもない、売れっ子作曲家の一人だ。

なんでもウェイ・ダーションは『セデック・バレ』でも彼を起用したかった、なんて書いていたが、それではリッキー・ホー(『セデック・バレ』のスコア担当)に失礼というもの(笑)

それはともかく、佐藤直紀によるスコアは、本編以上に熱い仕上がり!
コンスタントに担当作品を送り出す佐藤氏だが、今回は台湾映画にまでその活動の場を広げた形となった。

今回も、物語を大いに盛り上げるという、彼の自己主張を忘れないスコアが秀逸。
ほんと、クドさスレスレ(笑)のところで、それでも「聴かせる」スコアを鳴らすそのスタイルは、日本と台湾とでは、映画の製作環境も違ったことだろうが、ブレることがないのがさすがだ。

また、本作の主題歌として、これまた日台韓のアーティスト5名が参加して熱唱する「風になって~勇者的浪漫~」がこれまた聴きものである。
『セデック・バレ』でもエンドクレジットには出演者総出(台湾、日本共々)で合唱するナンバーが流れたものだが、こういうところにも、ウェイ・ダーションの本作に対する姿勢が感じられるというものだ。

サントラについてはCDとダウンロードにて販売中。
サントラCDは台湾本国にて、通常盤と小型のブックレットになった写真集が封入された特別盤の2種類がリリースされている。
そして日本公開に合わせて、国内盤もリリースされた。
台湾盤の写真集を確認していないので比較できないが、おそらくは国内盤にも封入されているものと同じではないだろうか。
僕が入手した国内盤に関していえば、プラケースと小冊子が紙ケースに収まっている形。
小冊子(写真集)はおそらく台湾盤(特別盤)と同じものかと思うのだが。

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