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■『南極料理人』■(映画) 


ナンキョクリョウリニン
南極観測隊員として実際に調理担当者だった西村淳氏のエッセイ「面白南極料理人」をもとに、本作が監督デビューという沖田修一氏が監督した本作は、今年のサマー・シーズンにロードショー公開されたものですが、ようやく地元の奈良でも11月7日から公開と相成りました。
8月の時点で観たかった作品の一つだったのですが、残念ながら都合が合わずに観逃がしていただけに、今回の公開は本当に嬉しかったですねぇ。
もっとも、食べることがテーマでもある本作、食欲の秋ってことを考えれば今の季節の鑑賞のほうが、ピッタリなのかもしれません。

とにかく、人間の食べることへの執着というのは食欲という言葉でも表現するように欲望のひとつなわけで、たとえば僕らだったらちょっと小腹が空いたなぁと思えば、近所にはコンビニもあるしファースト・フードの店もある。それで食欲は満たすことができるのですが、本作の舞台はお店はおろか観測隊員以外の生物もいない南極の地。
さぞかし登場する隊員たちもその欲求を満たさんがために、常に視線がギラギラしているようなある種殺伐とした雰囲気が漂っているんだろうなぁ、と思ったら、映画はまったくそんなイメージはなし。
時には些細なことで感情が爆発することもあるけれど、本作に登場する隊員たちはおしなべてほんわかしたムードで生活しているとことが微笑ましかったですね。


で、主人公が作り出した料理を隊員たちが楽しむ場面のなんと幸せそうなこと。
もちろん、欲望を満たしていることには変わりないんだけれど、隊員たちの満足そうな表情を観ていると、食欲というのは欲望でありながらも、人間のプラスな部分を増幅させるパワーがあることを本作を観て実感しましたねぇ。
特にクライマックスのラーメンのシーンの秀逸なこと!
外ではオーロラが輝いているというのに、観測そっちのけでじつに旨そうにラーメンをすする隊員たちの描写は、同じ釜の飯を喰うじゃないですが、強固な連帯感が伝わってくる名シーンでした。
で、今度は観ているこちらの食欲を大いに刺激してくるんですよね(笑)
また、食べることが人をつなぐという意味では、観測隊員だけのことではなく、主人公とその家族のエピソードにおいてもさりげなく漂わせているあたりが、とてもいい塩梅の隠し味でした。

全編を包むゆるいゆるい笑いが観ていてなんとも心地好く、間の取り方もじつにお見事で沖田監督という新たな才人が現れたことを目の当りにしたのは、一映画ファンとしても嬉しい限り。
その演出に素晴らしい演技で応える堺雅人をはじめとする個性豊かな俳優たちも観ていて逐一ツボにはまりました。


と、ここで終ればけっこういい印象だったのですが・・・。

じつは先週観たのが同じく南極を舞台にした『ホワイトアウト』でありまして、あの映画を観た後で本作を観ると、かなりの疑問点が浮上してきたんですよね。
たとえば、マイナス70度という極寒にも関わらず、裸で集合写真を撮る場面があるのですが・・・それって可能なの?
たとえば、野外で野球をする場面において、シロップで雪原にラインを引く隊員。それをスプーンですくって食べるという描写があるのですが、素手でスプーン持ってますけど凍傷にならないの?
件の『ホワイトアウト』では、ヒロインが素手で鉄製のドアノブを掴んだばかりに凍傷になってしまい、指二本を切り落さねばならないという場面がありましたけど、日本人は肌が丈夫ということなんでしょうか?

それを考えると、それまで楽しく観ていた本作に対する興味が、さぁぁぁぁ~~~っっと音と立てて引いてしまったんですよね・・・。

劇中に登場する料理は作り物ではなく、実際に調理されたものということで映像からリアリティも伝わってくるのですが、上に挙げた描写(他にもけっこう、え? って思う場面多々あり)を目の当たりにして、とっても複雑な印象を持ってしまったんですよね。
どうなんでしょう、本作の原作となった西村氏のエッセイにも、劇中に登場するような描写はあるのでしょうか? というか、南極体験者による監修はキチンとされていたんでしょうか?

本作は実際に南極でロケをしたのではなく、北海道を南極と見立てて撮影したとのこと。
でも、映画を観る限り北海道ではなく南極だと思えるロケーションだったと思います(ちなみに『ホワイトアウト』はカナダでロケ)。
ロケーションも俳優の演技も監督の演出も素晴らしかっただけに、肝心な部分がおろそかになっていたんじゃないかという意味では、とっても残念な一本だったと言わざるを得ません。惜しい!

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中65点】

※本作の原作。
これを読めば、映画を観て疑問に思った部分も解消できるのでありましょうか?



※本作のフードスタイリストによる、本編に登場した料理のレシピ本。ユニークな関連本ですね。
あのむちゃくちゃ旨そうなおにぎりも、ラーメンも、そして伊勢えびのフライまで網羅。
でも、伊勢えびは刺身ですよねぇ・・・(笑)





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