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■『2つ目の窓』■(映画) 







フタツメノマド
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河瀬直美監督の最新作。
今年のカンヌ映画祭に出品されたことでマスコミも大きく取り上げていた本作だったが、残念ながら受賞にはいたらなかった。
彼女自身、「最高傑作」と自画自賛しておられるが、かつて『フィールド・オブ・ドリームス』(89)を「生涯のベストワン映画」と言った某タレントのようで、こういうことはあまり軽々しく口にするのもいかがなものかと思う。
これを最後に映画監督を引退するのならばともかく。

ただ、本人がそこまで言うだけの自信作に仕上がっているということなんだろうし、今回はこれまでのように彼女出身の奈良ではなく、遠く離れた奄美大島が舞台というのが、「あら、これはひょっとしたら今回はいつもと違うのかも・・・」と思わせる。
ただ、河瀬監督のルーツが奄美大島なんだそうで、それを聞くと「ああ、なんだ、やっぱり今回も本質は「私映画」のような作りなのか」ってなもので。


高校生の界人(村上虹郎)と杏子(吉永淳)は、互いに恋心を抱いている。
しかし、界人の母岬(渡辺真起子)は父(村上淳)と別れてから、愛人を自宅に招くようになる。二人の痴態を目の当たりにして、界人は女性不審に陥っており、それが杏子との仲にも影響を及ぼしている。
祭りの夜、海で背中に刺青のある男の死体が見つかる。
界人はそれが岬の愛人であることを悟っていた。
一方、杏子の母イサ(松田美由紀)は不治の病を患い余命いくばくもない。
島のユタ(いわゆる恐山のイタコのような民間霊媒師)だったイサは、病院ではなく自宅で夫(杉本哲太)と娘に看取られて死にたいと、残り少ない時間を自宅で過ごすのだった。


場所は変われど、今回もテーマは「生」であり、そこに「死」のテーマも加わる。
特にこの世とあの世とをつなぐユタを物語に加えることで、「死」の捉え方にポジティヴなイメージを与えている。
ユタは死なないのでは? という杏子の疑問。
しかしイサを含めユタ達が言うには、肉体は滅んでも魂は永遠に生き続ける、という、まぁこの手の作品にはいわばありきたりな論点でもって杏子を諭すわけだ。


島の美しい風景(じれったくなるくらいに景色を延々と見せる手法もいつもながら)、地元エキストラを登場させてのある種ドキュメンタリーのような味わいを展開させることで、その土地の精霊を呼び起こすかのようなスタイルは河瀬監督の独壇場。
今回はいつものように監督自身こそ劇中に登場しないが、作品の常連である村上淳と、さらに彼の実子である村上虹郎を主役に据え、劇中でも二人を親子として配役するという、「内輪ウケ」的なキャスティングも相変わらずである。
敢えて「内輪ウケ」と書いたが、自分の目の届くキャスティングは監督自身やりやすいんだろう。
しかし、そこに新たな「血」を注ぐことも、必要なのではないかと老婆心ながら思ってしまう。
その「内輪ウケ」な姿勢の最たるものが、彼女が主催する奈良国際映画祭だと思うが・・・、まぁ、これはここで持ち出すことじゃないか。


今回は主役が大人ではなく、高校生の目から見た「生」と「死」なので、これまでの河瀬作品よりは多少理解しやすいかと思う。
ビジュアル的にも開巻早々の「死」を意味する「あの場面」はかなり強烈(免疫のない方は多少注意する必要がある)だ。
さらに、「生」については母の「死」を体験することで「生」=「性」に対する執着が強くなる(界人にやたら「セックスしよ」、「セックスしよ」と迫る。あんたは赤名リカか?)ヒロイン杏子の姿に顕著だ。
それがクライマックスの界人とのセックス・シーンと、それに続く二人が一糸まとわぬ姿で海の中を泳ぐラスト・シークエンスになる。
かように視覚のインパクトから本作のテーマはかなり明確である。


ただ、そのクライマックスからラストにかけての場面は、果たしてそこまで描く必要があったかについては疑問だ。
ポスター・ビジュアルにもなっているこの場面は、たしかに美しく詩的なものであり、監督として必要不可欠だったのかもしれない。
しかし、世界的にチャイルド・ポルノに対する規制が厳しくなっている中で、未成年にこのような演技をさせる(吉永淳は二十歳を超えているそうだが、役柄では高校生である)というのは、芸術とはいえ果たして妥当なのか首をかしげるところである(芸術という名目で年端のいかぬ者を脱がすのは、大林宣彦監督以来か)。

そこは、監督なりに「語らない」演出(結局、物語に登場する殺人事件の真相については、明確に語られない)でもよかったのではないか。
語ってほしいところを語らずに、語らなくてもいいところを語る。
これもいわば、河瀬作品の特徴でもあるわけだが・・・。

あるいは、ビジュアル的なインパクトは本作を出品したカンヌ映画祭を考慮してのことだったのではないか、という勘繰りまでしてしまう。
そこが今回の作品に対するカンヌの評価だったのだろう。
いくら最年少でカメラドールを受賞した逸材であっても、あんなことをされちゃぁなぁ・・・と、審査員のなかには眉をひそめる者もいたことは想像に難くない。


河瀬作品に感情移入できるファンの方には、今回も河瀬節が炸裂している! と絶賛(というか安心?)するところなんだろうが、そうでない僕のような者には、終始相変わらだなぁ・・・という印象しかない。
また、彼女の言う「最高傑作」とは「問題作を作ってカンヌに殴り込んでやった」という意味だったのかな? といういささか冷めたものしか残らなかった。
というか、彼女自身、早い段階でカメラドールを受賞したものだから、その呪縛から抜け出せないのではないか。
そんなことまで思ってしまった。



フタツメノマド
スコアを担当したのは、河瀬監督の『朱花の月』(11)も担当したハシケン。

これまた河瀬監督のスタイルだが、劇中頻繁にスコアが流れるわけではない。
それゆえ、要所要所に流れてくるスコアがインパクトを残す。
その情感たっぷりなスコアは、けっこう耳に残るメロディであり、本作を観終わってあらためてCDで聴きなおしてみたいと思ったほど。

本作の舞台である奄美大島の観光大使も務めているというハシケンゆえ、本作の持つ空気感や匂いをスコアで表現しているかのようだ。

サントラCDは本作を上映している劇場で購入可能(一部取扱いしていない劇場もあり)だし、ハシケンのサイトでも購入できる。




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