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■『沈まぬ太陽』■(映画) 


シズマヌタイヨウ
山崎豊子の長編小説の映画化ということで、当初は4時間になるので2部作という形で公開しようとしたそうな。
しかし、原作者から1本の映画で上映してほしい、との要請があり結果的には10分間のインターミッションを挟んでの3時間22分の超大作とあいなりました。
邦画はおろか、洋画においても特別上映を除いてこのようなスタイルで上映される作品というは、ほんとに珍しいものであり、インターミッションを体験するのはこの映画が初めて、という観客も、特に若い世代では多いのではないでしょうか。
でも一般的に考えれば、そんな長い映画、付き合うのって大変だわ、と思う方も少なくないでしょう。
僕自身も、山崎豊子作品は原作はまったく読んだことはありません。
ドラマ化、映画化されたものは観てはいるので、その作風というのも映像化作品を通してでしか体験したことがない。そんななかで、原作を読んだこともない作品を観るのはけっこう煩悶する部分もあったのは確かでしたが、実際に観てみるとこれがじつに面白い!!
大袈裟でもなんでもなく、3時間22分があっという間に過ぎたって思えるくらい、まったく飽きさせない作りになっているのは、監督した若松節郎氏の演出もさることながら、脚色した西岡琢也氏の手腕によるものが大きいと思いましたねぇ。


物語についてあらためてここで触れるのは避けますが、主人公恩地とその同僚行天という2人の男の確執、御巣鷹山のあの事故にまつわる人々の姿、主人公を支える家族の姿、企業を食いものにする政治家たちの金と欲などなど、あらゆる要素が1本の映画に詰め込むだけ詰め込まれていて、それがまったく破綻することなく交通整理もきっちりできている。
加えて演じる役者(オールスター・キャストという言い方が最もしっくりくるでしょう)それぞれが適材適所であるというキャスティングの妙。
これらが渾然一体となって見事に1本の映画に結実しているその見事さ。
まこと、大作の名前にふさわしい仕上がりに大いに満足でした。


でも、こういう映画を観ていると、つくづくサラリーマンってのは大変だよなぁ、と改めて思いますね。
会社のためによかれと思っても、それが理解されてもらえないもどかしさと、理不尽な待遇。
しかし、それに弱音を吐くのは自分のプライドが許さない。
そんな主人公恩地の姿は、逐一参考にすべき部分もあるのですが、その反面ちょっとくらい折れたっていいんじゃないのぉ、と思ったりなんかしちゃったりして。
そういう意味では、会社に上手く取り入ってのし上がって行く行天というキャラにシンパシーを感じる部分もあったりするんですよね、これが。
いや、僕にはそこまでの器量がございませんから、彼にいいように使われながらも最後の切り札を残している八木(香川照之が好演)というキャラが一番僕に近いかもしれません。
なんてことを考えながら観ていると・・・けっこうヘヴィな気分になったりもしますが、とにかく登場人物が膨大であり映画を観る方個々に感情移入できるようになっているのも、飽きさせない要因のひとつなのかもしれませんね。


恩地を演じた渡辺謙は言うに及ばず、行天を演じた三浦友和がとにかく上手い! 芸歴は長いですが、ここ数年の彼の演技はすでにいぶし銀の色合いをも感じるくらいであり、そんななかでの数少ない悪役というのも、かえって新鮮であり演技力が問われる大役だったかと思います。これを見事に演じきっており、おそらく本作において渡辺謙、三浦友和両名は数多くの映画賞をその手中に収めるであろうことは想像に難くない。
それに加えて先にも書いたように適材適所という言葉のいい例ともいえる本作のキャスティングもとにかく凄いの一言に尽きます。
その膨大な出演者のなかで、印象深かったのは松下奈緒演じる悲運のスチュワーデスと、あの墜落したジャンボ機に家族への遺書をメモ帳にしたためてらっしゃった乗客がおられました(本作でも克明にその場面が再現されています)が、その息子さんを演じていた中村倫也という俳優の演技。これがじつに素晴らしいんですよ。
特に後者の中村倫也は、父の遺体を前に遺書を読み上げるという場面を1ショットで演じているのですが、とにかくこの場面はぜひ観ていただきたい。
ベテラン俳優たちの演技合戦も見どころではありますが、そんななかでこういった若い俳優たちもキチンとキャスティングしているその審美眼というのでしょうか、それが優れている作品でもありました。


さて、冒頭にも書いたインターミッションですが、利根川総理(加藤剛)と龍崎(品川徹)が、国際航空の会長に国見(石坂浩二)を選出するという密談の場面、だいたい1時間40分すぎたくらいで始まります。
やはり慣れていない方が多いようで、さっさとトイレなりなんなり行けばよいものを、隣の人とぺちゃくちゃ喋っていた挙げ句、5分経過したあたりでスクリーン上ではカウントが始まってそこでようやくトイレに行ったはいいけれど、後半が始まって国見を龍崎が訪ねに行った場面の途中でゾロゾロ客席に戻ってくるおっちゃん、おばちゃんが多かったです(若い方はさっさと事を済ませて帰ってきてました)。
せっかく10分もあるのだから、インターミッションが始まったらさっさとトイレに行かなきゃ。どのみちトイレは満員になるんだからそれを見越して行動しないと、後半のスタートに間に合わなくなっちゃいますよ。


でもね、音楽担当の住友紀人氏が、インターミッション用に素晴らしいアントラクト・ミュージックを書いてらっしゃって、しかもそこでヴァイオリン・ソロを披露しているのが、かの御巣鷹山の事故でお父さんを亡くされたヴァイオリニスト、ダイアナ湯川さんなんです。
見事な音色を聴かせてくださっているので、映画音楽ファンとしてはトイレは映画上映前にすっかり処理しておいてから、10分間のスコアを楽しんでいただきたいものです。
(MOVIX八尾にて鑑賞)

【採点:100点中85点】

※原作の第1巻。
映画を観たら原作読みたくなっちゃいました。



※原作の第2巻。


※原作の第3巻。
映画はここから始まり、主人公が過去を回想するという構成になっています。



※原作の第4巻。


※原作の第5巻。


※住友紀人氏による本作のサントラ。
こちらに関するレビューはまた近いうちに。





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