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■『エスター』■(映画) 


エスター
今年は秋から年末にかけてホラー映画が相次いで公開され、ファンとしてはじつに嬉しい限りでありますが、そんななかでもジャンル映画の佳作ともいうべき作品がこの『エスター』。
ホラー専門レーベルのダーク・キャッスルの面目躍如といった1本で堪能させていただきました。


音楽教師のケイトさん(ベラ・ファーミガ)と設計士のジョンさん(ピーター・サースガード)の夫婦には、息子のダニエルくん(ジミー・ベネット)と娘のマックスちゃん(アリアーナ・エンジニア)という二人のお子さんがいました。
しかし、最近3人目を妊娠したケイトさんでしたが、残念ながら死産という悲しい経験をしたばかりだったのです。
もともとアルコール依存症で治療中だったケイトさん、聴覚障害を持つマックスちゃんが自宅の池で溺れかかっていたにもかかわらず、飲んだくれていて気づかなかったためにあわや大惨事になるという痛い経験を抱えていました。
ようやくアルコール依存症から立ち直ったばかりのケイトさんでしたが、今回の死産ということで、再び家庭に暗雲がたちこめます。
そこで、ケイトさんとジョンさんは、新たに養子をもらうことに決め、とある修道院を訪れるのでありました。

エスター3
夫妻はその修道院でお人形さんのようにキュートな、お絵描きの上手なエスターちゃん(イザベル・ファーマン)という女の子に出会います。
ロシア生まれで9歳のエスターちゃんは、はじめてアメリカで養子縁組をした家庭が火災で亡くなってしまうという経歴があったのですが、そんな不幸など微塵も見せい利発そうな彼女に惚れこんだ夫妻は、すぐに養子縁組することに決めます。
しかし、喜ぶ夫妻をどこか困惑した表情で見つめるシスター(CCH・パウンダー)でありました。

夫妻のおうちにやってきたエスターちゃんはすぐにマックスちゃんと意気投合。しかし、ダニエルくんはお気に召さない様子。まぁ、思春期のガキンチョにはよくある光景ですな。

しかし、数日が過ぎた頃から、徐々にこのエスターちゃんの本性が表れだします。
エスターちゃんはいつも首と片方の手首にリボンを巻いて、着る服はキャンディキャンディみたいな衣装。学校へ行くとそんな彼女をはやしたてる悪ガキがいたりするのはどこの国とて同じこと。もっとも、エスターちゃんみたいな衣装のおね~ちゃん、日本橋とかにゴロゴロいますけど。
そんなエスターちゃんを執拗にイジめていたクラスメートがある日事故で骨折してしまう。
また、夫妻のところへその後エスターちゃんはどないですか? と様子を見に来たシスターは何者かによって惨殺されてしまう。

相次ぐ事件の周囲にいつもエスターちゃんがいることを不審に思うケイトさん。
しかし旦那のジョンさんは信じない。これまたよくあるケース。

しかし、すべての出来事はエスターちゃんの仕業であり、言葉の発せないマックスちゃんを手なづけては数々の凶行の共犯として利用していたのです。
さらには、ダニエル君に対しても「喋ったらアンタの●●●、切り落とすさかいな!」とカッターナイフを股間につきつけ恫喝する。
といった描写は我々観客はずっと目の当たりにしているのです。

エスターちゃんの異常性に気づき、ジョンさんに相談するケイトさんでしたが、またアルコール依存症がぶりかえしたんだろう、と取り合わないジョンさん。観ているこちらは、アホやなぁ、早く気づけよ! ともどかしいながらもエスターちゃんの恐ろしさに魅了されてしまうのです。

そして、観客の想像を超えるエスターの正体が明らかになるクライマックスには、ほおばっていたポップコーンを前の人の頭に噴き出すほどの衝撃があなたを襲う!!(おまけに前の席の人の後頭部をポップコーンが襲う!!) ってなお話。

エスター2
子供が凶行に走る映画というのはホラー映画のジャンルでも昔からあるもので、本作もその中では特に意外性というものはありません。
先にも書いたように観客は早いうちからこのエスターという少女の凶行をリアルタイムで目の当りにしているので、なおさらのこと。
となれば、演じる俳優がどれだけリアリティと恐怖を観客に与えるか、というのが映画の重要な部分になると思うのですが、本作でエスターを演じたイザベル・ファーマンという女優の類い稀なる演技力が、そんじょそこらのジャンル映画とは一線を画するほどのクオリティを本作にもたらしているのです。
前半のキュートな立ち振る舞いから一転して、その残忍さがにじみ出てくるようなおっそろしい表情を見せる。これは将来かなりの演技者になるんじゃないかとそんな楽しみを抱きつつ本作を観ておりました。


それにしても、あのクライマックスにはほんとに驚かされましたよ。
ネタバレになるのでそのあたりには一切触れませんが、驚愕とか衝撃というよりも、呆気にとられた、という表現のほうが正しいかもしれません。思わず失笑してしまいましたもの・・・。

しかし、そのクライマックスから考えてみれば、そこまでの物語に散りばめられた数々の描写には、逐一納得するところがありまして、観終わって思ったのはこの映画ってよくできたなぁということ。
さらにエスターの正体が明らかになってからのくだりが、イザベル・ファーマンの演技力によって信憑性のあるものに見えてくるからスゴイ!


監督のハウメ・コジェ=セラは4年前にもホラー映画『蝋人形の館』(05)を撮ったスペインの監督。
その『蝋人形~』ではヒロインが犯人によってことごとくドエライ目に遭って(痛い系の)、酷い境遇でもヒロインだけは危害が加えられないというそれまでの定説を見事にひっくり返した人物。言い換えればエゲツない監督(褒め言葉ですよ)なんですが、そのエゲツなさ度は本作でも随所に発揮されています。
開巻早々から、妊娠中の方が観るとおそらくは胎教によろしくないゴアな映像を繰り出してくるところに顕著。
でもそんなのは序の口で、物語が進むにつれてそのエゲつなさはヒートアップしていくのです。 
エスター1
また、演出のひとつとしてブラックライト塗料を用いたのも面白い点。これ、通常の光の下だと無色透明なんですが、ブラックライト蛍光灯の光を当てると、蛍光色に浮かび上がってくるというもの。
ふつうにキレイな絵を描いていると思われたエスターは、じつはそこにブラックライト塗料で他の絵を書いていて、それが明らかになる部分の衝撃はビジュアルとして強烈!
さらに彼女は自分の部屋の壁に無数のブラックライトで絵を描いていた(その内容は実際に映画をご覧あれ)のです。
エスターという二面性を持ったキャラクターを見事に表わしているアイテムであり、ご丁寧(笑)にも、冒頭のワーナーブラザーズのロゴにも、ダークキャッスルのロゴにも、はたまたエンドクレジットにまで塗料が塗られている(という演出)という徹底ぶり。

また、エスターが恐ろしいのは、ケイト夫妻の負の部分を攻撃しては精神的なダメージを一家に与えるということ。
たとえばケイトがアルコール依存症だったこと、ジョンが別の女性と浮気をしたこと、どこの家にも多かれ少なかれある問題を嗅ぎつける能力をエスターはもっていて、それによって凶行を重ね、家族を崩壊させていくのです。
監督の演出もさることながら、脚本を書いたデイヴィッド・レスリー・ジョンソンのストーリーテリングの妙。
この手の作品にありがちな、破綻があってもゴアな描写で押し切ってしまう荒技ではなく、ひとつひとつの場面が積み重なって最後に強烈なパンチを繰り出してくるというのはとても効果的でした。


そしてなにより興味深いのは、本作をプロデュースしたのはかのレオナルド・ディカプリオだということ。
彼曰く、何度でも観たくなるような映画、という言葉に偽り無し。
この手の映画では異例の123分という上映時間もまったく無駄のないもので、新風を巻き起こすとまではいかないまでも、一石を投じるには十分に値する逸品。心してご覧めされい。

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中70点】

※本作の監督ハウメ・コジェ=セラの前作。
ヒロインのエリシャ・カスバートはことごとく酷い目に遭わされるわ、パリス・ヒルトンも決してカッコイイ死に様じゃありません。監督はドSだと思う・・・。




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