■『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』■(映画) 







ウーマンインブラック
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一度強烈についたイメージから脱却するのは至難の業だ。
まして、全世界の子供たちのヒーローというイメージを脱ぎ捨てるとなると、相当な努力が必要だろう。
ダニエル・ラドクリフ、まさに彼がそんな試練に直面したかのような本作だ。

『モールス』(10)で20数年のブランクを埋めたイギリスのホラー映画の老舗ハマー・フィルム。
その新作はゴシック・ホラーのベストセラー「黒衣の女 ある亡霊の物語」の映画化。
主演にダニエル君の名前が挙がったのを見て、

「ああ、イメージ脱却にもがいているのだな」

と思ったものだったが、実際に本作を観ればもはやそこにはあのハリーのイメージはまったくない。

考えてみれば、ハリーポッターシリーズなんて、ヴォルデモート卿が登場するあたりからホラー度が濃厚になっていたし、もともと病的な様相(失礼か?)のダニエル君、本作においてはなぁ~~~んの違和感もない。
むしろ、そういう作品をダニエル君はあえて選んだのかもしれない。

時は19世紀末。
ロンドンで弁護士を稼業としているアーサー(ダニエル君)は、息子の出産とともに妻を亡くし厭世的な日々を過ごしていた。そんな彼の唯一の心の支えは幼い息子だった。
ある日、彼に仕事の依頼が舞い込む。
とある田舎町に一軒の豪邸があり、最後の住人だったその家の夫人が亡くなったので遺品整理をしてほしいというものだった。
息子とのしばしの別れ。週末には再会できることを約束して、アーサーは田舎町へと向かう。
果たして、その田舎町の住民はアーサーの来訪に対し総じて否定的だった。
なぜなのかアーサーにはわからないが町には異様な雰囲気が漂っている。
仕事場である豪邸は町はずれの沼地の先にそびえていた。
その豪邸もまた異様な雰囲気を醸し出している。
仕事に取り掛かるアーサー。
しかし、彼の周囲では不可解な出来事が次々と起こるのだった。

とにかく、ハマー製ホラー映画の定石通りのお膳立てがいい。
アーサーが田舎町へ向かう際には雨が降りきしっている。
異様な雰囲気の町の人々。
霧に包まれた豪邸とそれを取り囲む不気味な沼。
この不快指数90%を超えるかのようなウェット感は、ゴシック・ホラーならでは。

はたして不可解な現象の正体は幽霊の仕業なのか、それとも悪意ある人物の悪戯なのか。
といっても、早々に幽霊らしきものもチョロチョロ登場したりしているので言うまでもないが、それでも観ているこちらの疑心暗鬼が恐怖心への速度を高める演出が巧い。

また、全体の3分の2くらいが「コケオドシ」な演出で占められていて、正直心臓に悪い(笑)
こう見せ方もまたゴシック・ホラーの常套手段であり、CG多用でどんな映像でも見せることのできる昨今の映画事情を考えると、それもまた新鮮だ。まさに温故知新といったところ。

興味深かったのは、本作に登場する幽霊(あ、書いちゃった)の動機が、海外のホラー映画にみられるような宗教的な要素をほとんど含んでいないということ。
むしろ、日本製ホラー映画、もっといえば江戸時代の怪談話にも通じるような、「怨恨」を描いているのが画期的。
なので、宗教的な形で怪異現象に終止符を打とうとするアーサーの行動も、結局は無効になってしまうことの恐ろしさは、おそらく海外の、特にキリスト教圏の方がご覧になると、そのショックの度合いも高かったことだろう。
逆に日本人としては、Jホラーでさんざん扱ってきたネタだけに、そのあたりの新鮮味はない。

オチも含めていささか消化不良な印象は否めない。
明確な説明を入れることで、恐怖感が薄められることを作り手は恐れたのか。
本作のヒットを受けて、早々に続編の製作が決まったという。本作の明確な結末は、続編に持ち越そうということなんだろうか。



ウーマンインブラック
スコアを担当したのはマルコ・ベルトラミ。
『スクリーム』(96)で彗星のように現れた映画音楽作曲家も、既にベテランの域に達している。
デビュー作以降、どちらかといえばジャンル・ムービーを主に手掛けているが、本作と同時期に日本公開されている『人生の特等席』も担当するなど、その活動の幅は広い。

本作は彼の原点ともいうべきホラー映画であり、オープニングのオルゴール・メロディを模したメインテーマの旋律を中心に、映画同様オーソドックスなクラシカルなスコアを書いている。

スコアの使い方で興味深かったのは、本作のいわゆる「コケオドシ」のシーンにスコアは極力流れないこと。
スコアが流れないからこそ、床を鳴らしたり、廊下を掛けたりする効果音が活きてくる。
逆に、不気味ではあってもスコアが流れてくると、ああ、ショッキングな場面はないのだなと逆に安堵する。

本来、恐怖心をあおるホラー映画のスコア。
なのに、実際には流れていないほうがより恐怖心をあおることになるというのは、これも昔からある手法なのかもしれないが、今回体感してよくわかった。

そんななかでのベルトラミのスコアは、あくまで登場人物の内面を表現する手段だったのかもしれない。



〖TOHOシネマズ橿原にて鑑賞〗





※本作のサントラCD。
スコア担当はマルコ・ベルトラミ。

彼によるホラー・シネマ・スコアはオーソドックスでクラシカルなスタイル。
無論、このゴシック・ホラーには欠かせない要素のひとつだ。

Varese Sarabande(米)からのリリース。






※ダウンロード販売もあり。
The Woman In Black (Original Motion Picture Soundtrack) - マルコ・ベルトラミ












※スーザン・ヒルによる本作の原作本。

『砂漠でサーモン・フィッシング』同様、細かな設定は映画とかなり違うようだ。













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