■『砂漠でサーモン・フィッシング』■(映画) 







サバクデサーモンフィッシィング
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まず、タイトルに惹かれた。
最初は哲学的な映画なのかなと思ったら、なんのことはないタイトル通りの内容だった。

アラブはイエメンの釣り好きな大富豪ムハンマド(アマール・ワケド)の無茶な依頼。
「砂漠で鮭釣りがしたい」と言い出したことをきっかけに、心ならずもそれに協力せざるを得なくなったイギリス人水産学者ジョーンズ(ユアン・マクレガー)。そして彼にムハンマドの依頼をするはめになったムンマドの代理人ハリエット(エミリー・ブラント)。そしてムハンマドの3人を中心に、不可能を可能にする大プロジェクトが展開されるというお話。

ガチガチに硬派な内容ではない。
軽妙かつコミカルな演出ながら、登場人物それぞれが抱える問題を盛り込みつつラストの感動へと運んでいく演出。
さすが人間ドラマを描くことに定評のある、ラッセ・ハルストレムの面目躍如といったところだ。

ドラマのコミカル部門を担当するのは、イギリスと中東の緊迫した情勢を打破すべく、この「砂漠に鮭を」プロジェクトを政治的に利用しようと奔走する首相広報担当官マクスウェル(クリスティン・スコット・トーマス)。
本作の敵役的なキャラだが、彼女の男勝りな立ち居振る舞いに加え、一時見せる子を持つ母親&夫のいる主婦の顔がいい。

最初はムハンマドの娯楽のためか、と思わせながらも次第にその真意が明らかに。
ジョーンズ博士のムハンマドに対する猜疑心が信頼に変わっていくところに共感する。それくらい、このムハンマドという大富豪は魅力的な人物だ。
しかし、国内には彼に反対する者もいて、彼自身危険にさらされることになる。
それでも即刻相手を罰したり責めたりはせず、むしろ信頼されなかった自分のことを責める、ムハンマドとはそんな人物だ。

映画を観ている我々は、ムハンマドがどういう人物なのか理解できるが、中には彼を含むアラブ人全体に強い猜疑心を抱く「ある人物」も登場する。しかし、本作はそんな人物に対しても説得力のある描き方をする。
ハルストレムの視線は、登場人物分け隔てなく誰にも優しい。それがこの映画の最大の魅力だ。

ジョーンズ博士とハリエットは、互いにプライベートな問題を抱えている。が、このプロジェクトを進める中で互いの理解が深まり、やがて愛情へと発展していくのは常套手段だが、それにも障害が立ちはだかる。
プライベートな障害とプロジェクトの障害をいかに乗り越えるか、それが本作のクライマックス。

詳しくは書かないが、それらの障害を乗り越えてのハッピーエンドになる。
穿った書き方をすれば、ジョーンズ博士を演じるのがイケメンのユアン・マクレガーだから、あの結末というのも納得。だが、これがたとえば名前を出して悪いけど(ほんとに悪いけど)フィリップ・シーモア・ホフマンあたりが演じていれば、はたしてあのようなラストになっただろうか? 本作をご覧になった方に問うてみたい(笑)

ハルストレム作品にしては、画面分割を多用したり、メールの文字が画面いっぱいに描き出されたり、マクスウェルと英国首相とのやりとりも、すべて顔付きのメール(これがじつにコミカルで笑わせる)だったりと、かなりポップな映像表現をしているのが意外。
後でわかったことだが、本作の原作のスタイルが、メール、メモ、日記の羅列なんだとか。

ポール・トーディの原作を脚色したのが、『フル・モンティ』(97)、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)、『127時間』(10)を手掛けたサイモン・ビューフォイだということに納得。
ポップな映像を得意とする監督と仕事をすることが多いというよりも、ポップな映像を撮りたくなるような脚本を書く(どんな脚本だ?)人物なんだろうな、きっと。

だから、ハルストレムはその脚本に則って、原作の持つスタイルを活かしたポップな映像的表現で描いたということなんだな。
と考えれば、監督は脚本家によってより多面性を持つことになるわけだ。



サバクデサーモンフィッシング
スコアを担当したのは、ダリオ・マリアネッリ。
本作が軽妙かつコミカルであり、スコアも同じく軽妙なリズムとわかりやすい旋律で綴っていく。

まさに、本編の映像のリズムともに歩む(というより走るといったほうがいいか)スコアといったところ。
もちろん、イエメンを表現するエキゾティックな旋律も匂わせる。

聴いていて心地良いスコアは、それが流れる映画自体も心地良い。そんな好例の一作といえる。



〖MOVIX橿原にて鑑賞〗




※本作のサントラCD。
スコア担当はダリオ・マリアネッリ。

上でも書いたように、軽妙なリズムとわかりやすいメロディ。

そこに舞台のイエメンを連想させるエキゾティックな匂いも漂わせる好スコア。

Lakeshore Records(米)からのリリース。
ダウンロード販売もあり。

Salmon Fishing in the Yemen (Original Motion Picture Soundtrack) - ダリオ・マリアネッリ




※ポール・トーディによる本作の原作本。

キャラクターの描き方やエピソード等、映画とはかなり違いがあるみたい。

書簡、メール、新聞の切り抜きといったもので構成されているユニークな内容。
映画はそのあたりの部分を映像で巧みに表現していたようだ。








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