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■『私の中のあなた』■(映画) 


ワタシノナカノアナタ
アナ(アビゲイル・プレスリン)は11歳の少女。
彼女は白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)のドナーのために遺伝子操作によって生まれた境遇の持ち主。
これまで姉のために自分の臓器を何度も提供してきたアナはある日、敏腕弁護士として有名なキャンベル(アレック・ボールドウィン)の事務所を訪れます。
アナは姉のドナーとして生きることを拒否し、これまで姉のために手術を強いてきた両親(ジェイソン・パトリック、キャメロン・ディアズ)に対して訴訟を起こしたのでした。


実際にそういうことがあるのかわかりませんが、肉親のドナーとしてわざわざこの世に生まれて来て、姉のために身体を切り刻まれるなんて、まるで楳図かずおの漫画にでも出てきそうなホラーネタ以外のなにものでもない。
しかし、本作のアナは姉のケイトのことが大好きで、ケイトもまた、アナのことが大好き。つまり大の仲良し姉妹なんです。そんなアナなのに、ドナーになることを拒否するというのは、つまりはケイトを死に至らしめてしまうことになる。
じゃあ、なぜアナはそんな訴訟を起こしたのか? そこが本作が数多ある難病ものとは一線を画しているところであり、ヒューマン・ドラマでありながら、ミステリーの要素も備えているところがとにかく興味をそそる点でした。


これまでも数多く作られてきた題材であり、個人的には難病ものに対して特に抵抗があるというわけでもなく、やっぱり何度も感銘を受けて涙したこともあります。
そんな中でも、『●の背中』のように明らさまにヒューマニズムをウリにしてお金儲けをしようというような、えげつない映画もあるわけで、感銘を受けつつもなかなか気を許せないところもあったりするのです。
かような中にあって本作は、基本はヒューマニズムを謳う内容でありつつも、エンターテイメントととしての面白さもあるのではないか、と、ストーリーからそう思ったのです。

そう思ったのですが、ねぇ・・・。


アナの訴訟を受けて、これまで円満に過ごしてきたはずの家族の中には当然のことながら波風が立ちます。
とりわけ、母のサラは親のエゴ丸出しでアナのことを激しく非難します。
とはいえ、いくらケイトのドナーとして生まれてきたとはいえアナも自分の娘に変わりありません。そんなアンビバレンツな身上のなか元弁護士としてのキャリアもあるサラは娘の訴訟に真っ向から対峙することになります。

こういう法廷劇が中心となって物語が進むのかと思いきや、それもまたちょっと違う。
アナの家族それぞれの視点で、これまでの経歴が語られるという前半部分。
ケイトという白血病患者のいる家族ということで、それぞれに胸に秘めている思いがある。それがそれぞれの視点から語られるのは、スタイルとしてはタランティーノのそれに近い。
後半は主にケイトが主体となった物語になっていて、闘病生活のなかで病院で出会った同じ病をもつ青年とのはかないロマンスであったり、彼女自身の家族に対する愛情であったり、もちろん病に対する怨嗟であったり、それらが詳細に描かれていきます。

いわば、あらゆる要素で構成されていて、映画としてはじつにユニークな作りになってはいるのですが、それでていて結局はこれまでに作られたような難病ものの域を脱することはできていないようでした。
これがたとえば、法廷劇を主軸として、そこに登場人物それぞれのエピソードが語られて、最終的にアナがなぜ訴訟に踏み切ったのか、という描き方のほうが、ラストに訪れる感銘もさらに深く強いものになったんじゃないかな、というところがじつに残念でした。

ワタシノナカノアナタオリジナル1
本作の監督はニック・カサベテス。これまでも『ジョンQ』(02)、『きみに読む物語』(04)といったヒューマン・ドラマを主体としたエンターテインメント作品を撮っている人であり、僕自身もそれぞれに感銘を受けました。
その流れでの本作のスタイルも十分納得できるものではありますし、監督の胸のなかにも難病ものというジャンルに新機軸を立てようとしたであろうことも感じられます。

ただ、せっかくのアイデアがどうも空回りしたような印象を受けます。
もちろん、白血病患者であるケイトのエピソードは避けられないものでしょうし、彼女のロマンスにまつわる部分でも秀逸なくだり(患者同士で病院内でダンス・パーティが開催され、思いっきり着飾るケイトの姿には思わず涙しました)もあるのですが、せっかく法廷物、しかも訴訟を起こしたのが少女でしかも稀有な境遇の持ち主となると、どうしてもそちらに力を入れて欲しかったと思うのです。
まして、アナを演じるアビゲイル・プレスリンと弁護士キャンベルを演じるアレック・ボールドウィンがじつに良くて、この二人の絡みをもっと多く描いて欲しかった。
そうすれば、ラスト・シークエンスももっと活きてきたと思うのですが。

頭髪はおろか眉毛まで実際に剃って役に挑んだソフィア・ヴィジリーヴァの演技、キャメロン・ディアズの熱演、そしてケイトの弟でアナの兄であるジェシー(エヴァン・エリンクソン)に対するエピソードも物語の隠し味として効いており、1本の映画としてもじつに味わい深い仕上がりになっていますが、と同時にあまりに多くのものを詰め込みすぎたばかりに、すべての面がおざなりになっているような印象も受けたのも事実・・・。
これがじつに惜しいところでありました。

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中65点】

※原作小説。なんでもラストは映画とは大きく違うそうです。


※原作者のジョディ・ピコーはDCコミックで『ワンダーウーマン』のエピソードも書いてるそうな。



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