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■『サンザシの樹の下で』■(映画) 


サンザシノキノシタデ
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コン・リー、チャン・ツィイーを発掘した張芸謀(チャン・イーモウ)監督が、最新作でまた新たな女優を起用した! という話題は、そりゃあもう、先の2大女優のファンの僕にしてみれば、楽しみで楽しみで仕方がなかったわけで。

なんでも、イーモウ監督の映画で主演女優を中国本国では「謀女郎(イーモウ・ガール)」と呼ぶのだそうな。

いやいや、イーモウ・ガールって、その響きだけでなんだか淫靡なイメージを抱いてしまう(下品ですみませぬ)のですが、さらに字面が「謀(はかりごと)をする女郎」なんて、淫靡を通り越してダークな匂いがぷんぷんしてしまいますな。

ゆえに、イーモウ・ガールなんて呼び名は日本では定着しないと思うんですけど、コン・リーはともかく(ともかく、って何だよ?)、チャン・ツィイーが主演した『初恋のきた道』(99)なんぞを観てみれば、淫靡やダークなんてことはまったくないわけで(当り前だ)、本国ではボンド・ガールと同じように、女優としてのある種のステイタスのような名称なんだそうです。


で、イーモウ監督の最新作『サンザシの樹の下で』に、主演に抜擢された新たな「イーモウ・ガール」であるチョウ・ドンユィなんですけど、最初にポスターなどで彼女の姿を拝見した時は、

「・・・普通やん」

という印象でして。

いや、確かに美少女ではあるのでしょうけど、これレベルのルックスだったら、難波あたりでも探せばいたはるんやないかいな、と。
でもね、そこはかのチャン・イーモウ、映画を観終えた頃にはあ~た、このチョウ・ドンユィにぞっこんでございます。
いやぁ、いい女優さんを見つけてくれたもんですね、イーモウ監督も。


本作は実話を元にしたということで、原作は中国本国でもベストセラーになったと。
ひとことでいえば大純愛ストーリーでありまして、実際にそういうウリでもあったので、イーモウ監督の新作でなければ観なかったかも、というくらいの興味しかありませんでした。

タイトルのサンザシというのは、中国ではポピュラーな果物なんだそうで、これを砂糖漬けにしたお菓子は上海へ旅行へ行った際にも何度か口にしました。
サンザシといえば、もう随分前にポッカから「維力(ウィリー)」という健康飲料が発売されて、我が家が駄菓子屋やっていた頃にも一時期置いてたことがあるんですけど、あんまり売れなかった(実際、我が家の店でも売れ残ったので僕がほとんど飲んでました)のか、すぐに消えてしまいましたっけ。
その飲料に入っているのがサンザシという果物だったので、それで名前をおぼえていたんですけど、今回の映画の中では、劇中に登場する一組のカップルの愛情アイテムとして登場いたします。

サンザシノキノシタデ(プレゼント)
そうそう、この映画は初日に観に行ったのですが、劇場では初日プレゼントということで、大塚製薬の「SOYJOY」のサンザシ味っていうのをいただきました。
SOYJOYにサンザシ味なんてあったのか、と思いきや、新製品ではなく当初からサンザシ味ってのはあったんだそうです。

まぁ、それくらい身体にはいい果物というわけですね。




サンザシノキノシタデ2
さて、いろいろと前置きが長くなりましたが、ここからが本題。
映画の舞台は70年代初頭の中国。

文化大革命のさなか、都会の学生たちは労働を知ることで国の力になりましょう、ってことで、農村へ農業体験へ行く政策がしかれておりました。

これを「上山下郷」というんだそうな。
僕はこのような政策があったのはまったく知らなくて、この映画を観てからあれこれ資料を読んでの付け焼刃程度の知識なので、間違っていたらご容赦を。
ちなみに、イーモウ監督もこの「上山下郷」の体験者だそうです。

で、ヒロインのジンチュウ(チョウ・ドンユィ)も、とある山村へ農業体験へやってきます。
この山村に一本のサンザシの樹があって、村長さんの話ではサンザシの花というのは白いのが普通なんだけど、この樹は抗日兵士が日本軍と戦った時に兵士の血を吸ったので、赤い花が咲くというような説明をするわけです。
ここで、いきなり抗日兵士なんて言葉が出てくるので、ちょっと複雑な気分になりますが、本作は日本に対してどうこうということがテーマではないので、あくまでエピソードのひとつくらいに捉えておいてよいでしょう。

ジンチュウはは村長さんのお家に居候することになり、そこの子供たちとも仲良くなります。
さて、村長さんのお家にはもう一人居候がおりまして、これが近くで地質調査をしているスン(ショーン・ドウ)という青年。
で、この二人が顔を合わせているうちに、淡い恋愛感情が芽生えてくる。
農業体験のレポートを書くジンチュウが安物の万年筆を使うばかりに漏れたインクで指先が真っ黒になっているのを見ると、スンは街へ行って新しい万年筆買って彼女にプレゼントするという、細かい気配りなんかやったりするんですな。


やがて、農業体験が終って街へ帰ったジンチュウですが、そんな彼女のことをスンはいつも陰から見守っている。

たとえば、労働奉仕でリヤカーに瓦礫を積んで、か細い身体でウンウン言いながら運んでいるジンチュウに、そっと力を貸してやったりする。
こんなのはまぁいいとして、家が貧しいゆえ、学校の体操服が買えずそれを教師から叱責されているジンチュウの姿を見る(なんとスンは学校のグラウンドの陰から見ている)と、さっと新しい体操服を買ってやる。
また、長靴が買えないので素足でセメントをこねたばかりに、炎症を起こしたジンチュウの姿を見る(これまたスンは陰から見ている)と、ピンクのキュートなゴム長靴を買ってやる。

いや、スンのジンチュウに対する思いはわからないでもないですが、これって取りようによっちゃストーカーですやんか。
普通ならば、

「なんやのんこの人、いつもいつも、どこでウチのこと見てるんやろうか。気っ色わるいわぁ」

となるものですが、この映画はならない。

なぜなら、二人は相思相愛なのだから。でも、あくまで淡い淡い恋愛感情なんですね。

このあたりの一連の描写は、ほんとにイーモウ監督の巧いところであります。
たとえばねぇ、最初二人は直接手をつながないで、棒切れをバトンのようにして持って歩いてるんですけど、それが段々お互いに近づいて行って、最後には実際に手をつないだりする。
なんかもうねぇ、こういうのを目の当りすると妙な涙目(妙な涙目って何だよ?)になってしまいますよ、奥さん。

また、労働中のジンチュウを連れ出して、小川へ水浴びに誘うスン。
その時も、ちゃんと彼女のために水着を用意して(いや、ほんとにこうなるとマジでストーカーなんじゃ・・・)おりまして、川岸にリヤカーを立てかけてその裏で着替えたらいい、なんていうわけですよあ~た。
一応、ジンチュウは恥ずかしがって拒否するんですけど、結局は着替えるんですよねぇ(着替えるのかよ!)。

で、この後、ふたりでキャッキャキャッキャいいながら水遊びする場面なんぞがあって、それに続いてファースト・キスの場面なんかあったりして、もうこのあたりになるとジンチュウを演じているチョウ・ドンユィの魅力なのか、役柄を離れての素の彼女の魅力なのか、ウブな少女の魅力が炸裂!!
観ているこちらのいろんなところを容赦なく猛攻撃してまいります。

他にもねぇ、たとえば、足の炎症が悪化しているのに医者に行かないジンチュウに、それならばとスンは自分の腕をナイフで傷つける。そうなるといやがうえにもジンチュウは医者に行かなきゃならなくなる。

いやぁ~~~純愛っていいですねぇ!!

サンザシノキノシタデ3
ところで、ヒロインのジンチュウのお家はちょっと複雑。

お父さんは非労働者階級で反文革ということで強制労働させられていて家にはおりません。
お母さんは教師という職にありながら、夫がそういう立場なので学校でも掃除係なんぞをさせられている。
ジンチュウには幼い弟と妹もいる。収入も低く、封筒作りの内職でなんとか生計を立てているようなそんな家庭。
しかし、ジンチュウが教師となることで、なんとか世間体が保てる家になる。

そんな時に、恋愛にうつつを抜かしたばかりに教師の道が閉ざされてはいけないわけで、それをわかっていてもジンチュウは自分の心に真っ直ぐでいようとするわけですよ。
が、ジンチュウとスンの秘めたる仲が、あることでジンチュウのお母さんの知るところとなってしまう。
お母さんとしては、娘のことを思いつつも、家の事情もあるから二人の仲を認めるわけにはいかない。
でも、娘が晴れて教師となった暁には、二人の仲を認めましょうということで、ジンチュウとスンは泣く泣く別れることになるのです。


しばらくして、スンが容態を悪くして入院したということを知ったジンチュウは、お母さんに内緒で病院へスンに逢いに行く。
病室で元気な姿を見せるスンは「ただの定期検査だ」と平気な顔。
でも、ジンチュウはなかなか帰ろうとしない。
院内が消灯時間になって看護師に追い出されても、病院の門で座り込んでスンのいる病室を見ていたりする。
この場面もねぇ、たまりませんでしたわ・・・。
というか、これを観ている男子(あ、僕も男子です)は、このあたりになると完全にジンチュウ(というよりもチョウ・ドンユィか)の虜になっていること間違いなし。
ほんとにこういう演出が巧いんですよねぇ、チャン・イーモウは、ってことはさっきも書いたか。


そこから、スンに婚約者がいるという噂を聞いて、悶々とするジンチュウの描写だったり、なんやかんやあるんですけど、けっきょく二人はジンチュウが教師になるまではお付き合いできない、ってことで、ここがまた泣かせるんですけど別れの場面になっていくんですね。
そこで二人が約束するのは、あの山村のサンザシの樹に咲く花の色が、村長さんが言ってたように本当に赤いのか。
それをいつの日か2人で確かめに行きましょう、ということでタイトルの「サンザシの樹の下で」につながってくる。
これ、原題は「サンザシの恋」といって、邦題と大きな違いはないんですけど、要するに最初にも書いたようにジンチュウとスンの愛情の証としてのアイテムになんですよ、サンザシがね。


いやぁ、このあたりまできたら正直ヘトヘトになってしまいます。
もちろん、チョウ・ドンユィのキュートさの猛攻撃によって。

でもねぇ、こういう疲労は心地好い疲労であるわけで、できれば二人は一緒になってくれたらいいのになぁ、と願わずにはおれないのですが・・・、まぁ、この後は実際に映画をご覧いただきたい。


恋愛ドラマではあるものの、具体的なラブ・シーンはあることはあっても、あくまでこの二人の関係は清らか。
二人の関係の進み具合(?)を、ジンチュウのお母さんが「ある方法」で探ろうとするという、ユニークな場面もあるのですが、逆にジンチュウの友人で妊娠した挙げ句に堕胎手術をするために産婦人科へ彼女も付き添ってやるという、極めて現実的な場面も出てきます。

そういったシークエンスがあることで、よりジンチュウとスンの関係の清らかさが際立つのです。
その恋愛の行方と物語の結末は、ちょっと通俗的だったかな、と感じる部分もなきにしもあらずですが、人を思う心の大切さ、強さ、それはラスト・シークエンスにおいて、それまでのキュートさや朴訥さによる魅力をみせていたチョウ・ドンユィの、女優としての演技の底力を発揮することで、さらに高潔なものへと昇華されていくのです。


ビッグ・バジェットの作品が続いたチャン・イーモウですが、もちろんそうういった作品も魅力的でしたが、今回のような映画にこそ、彼の本領が発揮されることをあらためて感じた次第です。
なんと美しく愛すべき作品であることか。
実際に観た直後よりも、後からじわじわ効いてくる、俗っぽい表現ですが「惚れ薬」のような映画でございました。必見!!


サンザシノキノシタデ
さて、音楽を担当したのは中国の作曲家、陳其鋼(チェン・チーガン)。

映画音楽作曲家ではなく、いわゆる純音楽の作曲家で、イーモウ監督とは彼が演出したバレエと北京オリンピック開幕式の音楽監督を担当しており、今回が3度目のコラボレーションになるとのこと。

メインテーマは短いフレーズながら、印象深いメロディで、これが劇中で色んなバリエーションでもって流れてきます。
基本的にヴァイオリンでメロディが奏でられ、そこに中国の古楽器である古筝やピアノなどの音色が加わるというスタイル。
決して派手なスコアではありませんが、純愛を全うしようとするジンチュウとスンの心情をストレートに表現しているようで、とにかく聴いていて心地好いのです。
映画のスコアという楽しみはもちろん、部屋のBGMとしてずっと流しておいてもいいんじゃないでしょうか。

また、劇中で唄われる「サンザシの唄(っていうのかな?)」も、ちゃんと収録されています。
このナンバーだけはチェン・チーガンの手によるものではなく、ロシアの流行歌だということは、映画をご覧になった方ならわかりますよね。
サンザシノキノシタデ2
で、映画を観終わってあのスコアを聴きたいと思い、サントラの有無をネットで検索したらば、日本でのリリースはなく、中国の本国盤でリリースされていることがわかりました。
アジア系映画のサントラをよく買っているYESASIAでも扱っていたので、発注したら10日ほどで到着しました。

で、実際の商品を見てビックリ!!
普通のCDのサイズかと思いきや、約20cm×20cmという大き目のジャケット。
しかも見開きになっていて、開くとチェン・チーガンのドアップ!!(ま、彼の作品なんだから当然なんですけど。ちなみにチョウ・ドンユィの写真は一枚もございませんでした)
サンザシノキノシタデ3
中国映画にしろ韓国映画にしろ、サントラのジャケットにはけっこう凝ったものが多いんですが、こういうのもまたサントラ・ファンとしては楽しいものです(収納に困りますけどね)。




(なんばパークスシネマにて鑑賞)

【採点:100点中90点】





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