■『キック・アス』■(映画) 


キックアス
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いきなりですが、僕はどちらかといえばコスプレをすることには理解があるほうです。

東京で暮らしていた頃、冬の時期になるとプロフィールの写真にあるように、黒の中折れ帽はもちろん、黒のチェスターコート、黒のスーツに黒の手袋と、全身黒づくめの格好で会社へ通勤。
休日でもそんな姿で闊歩していました。

いまで言うところのイタい奴ですけど、現代の東京という大都会の中にも、ひっそりと残っているレトロな空間を見つけ(銀座の路地裏とかね)ては、そこに自分の姿を溶け込ませることで、昭和初期の帝都にタイムスリップしたような気分を味わっていたのです。

もちろん、もともとレトロ趣味というのもありましたし、当時観たコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』(90)にも大きく感化されたこともあり、そんな格好をしていると、なんだか自分が禁酒法時代のマフィアのような気がして、たとえばマルイの拳銃プラモや飛び出しナイフなどを身につけて、街を闊歩していたこともあります。

いまから考えれば、警官に職務質問なんかされた日にゃ、郷里に住む両親を泣かせることになったやもしれぬと思うと、つくづくアホなことをしてたよなぁ~~~と、まったく顔から火が出る思いでございます。

でも、コスプレをする方々って、そういうものじゃないですかね。
いまは到底そんなことできませんけど・・・。


キックアス1
『キック・アス』の主人公デイヴ君(アーロン・ジョンソン)は、アメコミおたくが嵩じて、通販でヒーローのコスチュームを買っては、それを着て街を闊歩します。

ここまでは、かつての僕と同じ・・・。
でも、僕と違うのはただ闊歩するんじゃなく、街の悪を退治しようと実際に行動するところが素晴らしい。

これ、できそうでできるもんじゃありません。
もちろん、本作はドキュメンタリーじゃなくフィクションなんですけど、おそらくはコスプレをする方々の夢を具現化してくれるという点でも、かような趣味をお持ちの方々にとって本作の存在意義は大きいのです。
でしょ、でしょ?

しかし、映画のなかのデイヴ君はアメコミのヒーローのようにうまく行かないのがとってもリアル。
彼はチンピラにどえらい目に遭わされ重症を負ったりなんやかんやするのですが、しかし、彼のヒーロー的社会奉仕活動は話題を呼び、ヒーロー「キック・アス」として人気を得ることになるのでした。

キックアス3
さて、映画はそんなデイヴ君のストーリーと平行して、一組の親子の姿が描かれます。
ビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)は元警官。
ある事情があって街のギャング、フランク(マーク・ストロング)を倒そうと戦いの日々を送っています。

彼には幼い娘さんがおりまして、彼女にも英才教育(これがまたトンデモないんだけど、お父ちゃんにとっては娘に対する愛情表現として描かれる)を施し、ヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)として、伊達にコスプレしてるんじゃないこの親子は、手に手をとって悪を倒すことに身を捧げるのです。

やがて、デイヴ君とビッグ・ダディ、ヒット・ガール親子が遭遇し、彼らとフランク一味との戦いは、さらに壮絶さを増すのでありました。


この映画、デイヴ君だけのエピソードだけだと、かなり物語としては弱い。

それこそ、アメコミおたく&コスプレ・マニアへの愛情のみの、それこそイタい映画でしかなく、そんな主人公に共感できない観客にはどちらかというと映画への興味が醒めてしまうんじゃないかと。
しかし、ここにトンデモないけど愛すべき最強の親子が加わることで、かなり広がりをもった内容になってくるところが巧いんです。

特に、映画は途中からデイヴ君よりもヒット・ガールを中心に動いていきます。
それでも、観ているほうとしては中心があっちへ行ったりこっちへ行ったりしても、まったく気にならない。
アクションとブラックなユーモア、そしてちょっぴりゴアな味付け(ここは賛否両論分かれる部分だろうけど)が、じつにいいバランスを保っていて、第一級のエンターテイメントとして輝きを放つ稀有な映画に仕上がっていました。

キックアス2
デイブ役のアーロン・ジョンソンのヘタレぶり、ニコラス・ケイジのカッコイイのかちょっとズレてるのか、それがまた味わい深いお父ちゃんぶり、ここんところ悪役続きのマーク・ストロングの悪人ぶり、そしてなんといっても本作で最も魅力的なのがクロエ・グレース・モレッツ。
彼女、映画を観るまではもっと年齢は上かと思ってましたが、まだ小学生くらい(実際は14歳)なんですよね。
そんな彼女が、ほとんどスタントを使わずに自ら派手なアクションを展開する爽快感と、後半、物語が大きく変わってくる以降の演技には、思わず感涙してしまうほどの健気さに、もう観ているこっちのいろんなところを鷲掴みにされてしまいましたですよ。

監督のマシュー・ボーンは、あのへんちくりんなファンタジー巨編『スターダスト』(07)を撮った人で、あの映画はまとまりの悪い、コメディ要素濃厚なんだけれど笑えないという、観ててちょっと苦痛なシロモノでした。
しかし、本作ではファースト・シーンからラスト・シーンまで、片時も目が離せないスピーディーな演出と、冒頭にも書いたイタい主人公への共感、そしてクロエ・グレース・モレッツのぷりち~~~な魅力など、見どころ満載!!
この映画、2011年の一発目に観たんですが、年明け早々にこんなに完成度の高い映画を観てしまうと、この後、これを超えるものに出会えるか心配になってしまったくらいです。

昨年末から上映が始まり、2011年2月現在でもロングラン・ヒット中というのも、十分うなずけますねぇ・・・。。


キックアス
さて、そんな非の打ちどころのない本作ですが、ひとつ苦言を呈するならば音楽のこと。

まず本作のスコア担当、なんと全部で5人!!
マシュー・ボーン監督の『スターダスト』でもスコアを書いたイラン・エシュケリを筆頭に、マウリス・デ・ヴリス、ヘンリー・ジャックマン、ジョン・マーフィ、そしてダニー・エルフマン。

彼らがそれぞれにどのような仕事をしたのか不明瞭(ダニー・エルフマンのみ、『バットマン』(89)調のスコアを書いているので判りやすい)。
そのうえ、スコア盤サントラはダウンロード販売(しかも米国のみなので日本ではダウンロードできない)しかない現状では、誰がどんなスコアを書いたのやらさっぱりでございます。

本編はとっても面白いのに、音楽面ではまったく統一がとれておらず、まして本作のような作品ではスコアを書く作曲家も大いにイマジネーションを刺激されるいい題材だと思うのに、そこがちょっと残念。

なお、挿入歌ばかり集めたコンピレーション・アルバムは輸入盤のみとはいえ、比較的入手し易くなっています。
先にも書いた、本編の流れが大きく変わってくる、クライマックスのシチュエーションの先陣を切って流れる、エンニオ・モリコーネによる『続 夕陽のガンマン』(67)のテーマ曲も収録されておりますですよ。

(テアトル梅田にて鑑賞)

【採点:100点中90点】


※本作のソング・コンピレーション盤サントラ。
スコアは1曲も収録されておりません。
あ、スコアといえばモリコーネだけは収録されてますけど・・・。
映画本編にて『続 夕陽のガンマン』に続いて流れてくるザ・ディッキーズの「バナナ・スプリッツ」(予告編でもフィーチャーされてますね)はもちろん収録されてますよ。
レビューで書いたようにスコア盤は存在しますが、米iTuneでしか入手できないという、少々厄介なことになっています。
アメリカに知人がおられる方はいいよね・・・。



Kick-Ass (Music from the Motion Picture) - Various Artists

※本作の原作コミック。
描いたのは、製作総指揮を務めたマーク・ミラー。
しかし、映画とはクライマックスが違うそうです。
僕はまだ読んでないので、詳細はわからないのですが・・・。


※早くもブルーレイ発売決定。
しかし、ボーナス特典のわりには価格が高め・・・。


※こちらはDVD。
っちゅうか、ロングラン・ヒット中なので劇場で観ることをお薦めしたい。





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