■『黒く濁る村』■(映画) 


クロクニゴルムラ1
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ヘグク(パク・ヘイル)は、20年間音信普通だった父モッキョン(ホ・ジュノ)の訃報を聞き、ソウルから遠く離れた山奥にある、チョンド村を訪れます。

チョンド村は、村とはいえ村長のヨンドク(チョン・ジェヨン。顔面シミだらけ)、
彼の鞄持ちのドクチョン(ユ・ヘジン。出っ歯)、
ソンマン(キム・サンホ。ハゲ)、
ソンギュ(キム・ジュンベ。ギョロ目
という、まるで漫画から抜け出してきたようなイイ顔をした4人のおっちゃんたちと、村で雑貨屋を営むどこか影のある美人イ・ヨンジ(ユソン)のたった5人しかいません。

ヘグクは父の死の様子や父がこの村でどんな生活をしていたのかを、イイ顔したおっちゃんたちに訊ねますが、明らかに嫌悪感丸出しな応対をされた挙げ句、さっさと村から出て行け! といわれる始末。

村に対する不審感が募る(そりゃそうだ)ヘグクでしたが、村長の計らいで、ヨンジの家に滞在することになります。
その夜、ヨンジのところへ、イイ顔のおっちゃんたちが一人、また一人とやってきては、なにやらゴニョゴニョをしている様子。
全員が帰った後、ヨンジは庭の水道で●●を洗っているではありませんか。
その一部始終を見ていたヘグク(覗くなよ)。

さらに村に対する不審感が募った(そりゃそうだ)彼は、村に隠された秘密と父の関わりを調べるうちに、恐るべき事実に突き当たったばかりか、自分の身にとんでもない災難がふりかかってくるのでありました・・・。

クロクニゴルムラ2
もともとは韓国のウェブコミックとして、話題となった作品を『シルミド』(03)の監督、カン・ウソクが映画化。

なんせ宣伝文句に「韓国版、横溝正史」なんて書かれてあったものですから、横溝正史ファンの僕としてはこりゃあ見逃すわけにはまいりません。
まして、閉鎖された村が舞台となれば『八つ墓村』に代表されるように横溝作品にもよくあるシチュエーションだし、たとえこの映画がそういった作品の模倣であっても、韓国風アレンジも楽しからずや、そこは大目に見たろやないかい、と多少上から目線で望んだわけです。

・・・が、たしかに村というシチュエーションながら、最初予想していたような内容とは大きく違ったのは嬉しい誤算でした。

大まかなストーリーは先に書いたとおりですが、まず、開巻早々のアヴァンタイトルの部分の長いこと。
ここでは、30年前の物語として主人公の父モッキュンと、チョンド村の村長との関わりが詳細に描かれます。
つまり舞台となるチョンド村の成り立ちにあたる部分なのですが、ここでその後に展開する物語の重要な鍵となるものが多数登場するので、片時も目を離すことなかれ。

以後、映画は主人公ヘグクが村の秘密を解明していく物語をメインに置き、その謎解きにまつわるシチュエーションとして30年前のエピソードが登場(当然、村長以下、いい顔のおっちゃんたちも若い。ヨンジ役だけ別の女優ですが)するというスタイルで進んで行きます。

とにかく、タイトルにあるように、主人公を含め登場人物は大なり小なり、「黒く濁った」人間ばかりで、けっこうドロドロした内容なんですが、横溝正史作品のようなオドロオドロしたものはほとんど感じられませんでした。
つまり、人間の持つ欲望の数々は物語のキーとして登場するけれど、血の絆であったり村の因習というようなテーマは皆無。そういう意味でも横溝作品とは印象は大きく違います。

じゃあ、つまらなかったかというとそうではなく、上映時間160分という長時間ながら飽きさせず一気に見せるのは、カン・ウソク監督の実力でしょうし、とにかく登場するキャラクターがアクが強くて個性的で魅力的。
誰一人として知り合いにはなりたくない者ばかりですけどね。

また、主人公がいわゆる周囲が敵ばかりの中で孤軍奮闘するのではなく、村の外部に強力な助っ人がいるというのも、面白い設定でした。
ヘグクが過去に起こした事件の結果、地方に左遷させられたパク・ミヌク検事(ユ・ジュンサン)は、彼に恨みがある。
それを承知していながらも、ヘグクにとっては司法の力を持つ唯一頼れる存在のミヌク検事。
ののしりながらも、ミヌク検事はヘグクに協力し、共にチョンド村に潜む謎を暴いていくことになるのですが、この2人のシチュエーションをコミカルに描くことで、このドロドロした物語にいい塩梅で安堵感と清涼感を与えるその上手さよ。

クロクニゴルムラ3
そもそも監督は、5時間くらいの長編映画になるところを、いろんなシチュエーションを刈り込んで、結果的に160分という作品に仕上げたそうな。

なるほど、ミヌク検事とヘグクとの出会いのきっかけとなった事件だとか、ヘグクの父モッキョンの過去の出来事など、本来あって然るべきシチュエーションが欠落(そもそも撮影もされてなかったのでしょうけど)していて、唐突で強引なストーリー展開だな、と思った部分も幾つかあります。

原作となったウェブコミックや原作小説ではそのあたりも詳細に記述されている(パンフには本編のみならず原作のストーリーも掲載)そうですが、映画は多くを語らずとも登場人物の動作や演技、セリフでおのずと理解できる仕掛けになっている。

そこが他のメディアとは違う、映画の持つ魔力なんだと思います。


クライマックスをここで書くわけにはいきませんが、正直なところ強烈などんでん返しがあるとか、そういうジャンルの映画ではありません。
村に秘められた謎についても、映画を観ているうちに氷解していくようになっており、大団円を迎えても特に意外性は感じられませんでした。
しかし・・・!!!(その後はここでは書けない、書けない)。

クロクニゴルムラ
さて、スコアを担当したのはチョ・ヨンウク。

チョ・ヨンウクといえば、パク・チャヌク作品で披露した哀愁を帯びたワルツ曲を真っ先に思い浮かべてしまうのですが、やはり今回もクライマックスにてユンウク節ともいえるスコアが、この黒く濁った物語に強烈に突き刺さってきます。

サントラは韓国映画のサントラを扱うショップで取り扱っていますが、『黒く濁る村』はあくまで邦題。
本国では『苔』(なぜ、「苔」なのかは映画を観ればわかります)というタイトルなので、そちらで検索されたほうが良いかもしれませんね。



(シネマート心斎橋にて鑑賞)

【採点:100点中70点】


※本作のノベライズ本。
上のレビューにも書きましたが、映画では語られなかったエピソードもあるようです。
映画が面白かっただけに、ノベライズ本にも興味がありますね。




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