◆『ゲスト』◆(DVD) 


ゲスト
『箪笥』(03)を観た時は、とにかく衝撃的でした。

それまで『シュリ』(99)『カル』(99)で、韓国映画のパワーを実感してはいましたが、それらを凌駕するほどの内容にただただ驚愕したものです。
美しい姉妹の周辺で起こる不可解な出来事。
ホラー映画でありながら詩情あふれる映像音楽。
そして、壮大なカタルシスに包まれるエンディング。

とりわけ、驚愕のクライマックスに度胆を抜かれたの僕だけではないでしょう。


その証拠に、日本で公開された時にはすでに「史上最高額でリメイク権をとった」という、ドリームワークスの名前も華々しく踊っていたものです。

しかし、それから幾星霜、とんと『箪笥』のハリウッド・リメイクが公開されたって話を聞かないなぁ、と思いきや、とうにアメリカでは公開され、日本ではDVDスルー・・・。

「史上最高額」という鳴り物は鳴りをひそめてしまったわけですな。


本作にハリウッド、とりわけドリームワークスが目をつけたのは、おそらくはあのクライマックスのくだりでしょう。
先にも書いたように、あれには僕も驚かされたし、ハリウッドの連中も「スゴイのを観たなぁ」と思ったことは想像に難くない。
実際に、本作もオリジナルと基本的にはストーリーは同じだし、肝心のクライマックスもオリジナルを踏襲しています。

だから、仮にオリジナルを観てなくて、本作を初めて観た方には、そのあたりのことは十分堪能すること請け合いな作りになってはいるものの、そこへ到達するまでの部分は、いかにもハリウッドらしいなぁ、と思わざるを得ない改変がなされています。
その改変も、結果的にプラスになっていればよいのですが、少なくともオリジナルを知っている(そしてそれに惚れ込んでいる)者としては、残念ながら辛口な感想を述べてしまわざるをえないのです。

ゲスト1
まず、オリジナルのタイトルにもある「箪笥」。
これが本作では「ヨット・ハウス」に変更されています。
アメリカにも箪笥はあるんだろうけど、この箪笥というアイテムが醸しだす東洋的な要素は本作にはない。
でも、ヨット・ハウスというアイテムゆえの多少スペクタクルな見せ場を用意しているのは、さすがハリウッド。

物語の中心人物となる姉妹の立場が、オリジナルと逆転している(オリジナルは姉が主役。本作は妹)のは、リメイク番との差別化でしょうが、さほど効果があったとは思えません。
ただ、結末がわかっている(無論、オリジナル版を観ているという意味)方からすれば、本作にはあちこちに巧みな演出を施していることがわかります。

監督したザ・ガード・ブラザースなる人物(コーエン兄弟みたいなものか)は、これまでどのような作品を撮ってきた御仁かはわからないまでも、クライマックスへ至るまでの演出とラストのサプライズ、さらにはオリジナルにはなかった「ひとひねり」を加えているところに、監督としてのプライドが見えます。

しかし、いかんせんハリウッド映画の見本市のようなドリームワークス作品。
芸術性よりも娯楽性に重きが置かれたのか、ある種の呪縛からは逃れられなかったようで、本作もあのクライマックスのくだりがなければ退屈なシロモノでしかないのは残念。

今回観たDVDには、メーキング映像の収録されており、そこでザ・ガード・ブラザーズ(の兄か弟か判りませんけど)のコメントがあって、

「オリジナルは、肝心な部分が曖昧に描かれていたので、本作ではそれを明確にした」

ってなことを語っています。

いやいや、その曖昧な部分というのは、日本で言うところのわび・さびなんだけどなぁ。
このコメントが、本作とオリジナルの仕上がりの違いを決定づけていて、それがそのまま、ハリウッド映画とオリエンタリズムの相違なんじゃないかと思った次第です。


ゲスト2
エミリー・ブラウニングアリエル・ケベルの姉妹もそれぞれに熱演ですが、オリジナルのキム・スジョンムン・グニョンが醸しだす魅力にはちょっと及ばなかった(あくまで個人的な意見として)と思います。

デイヴィッド・ストラザーン(姉妹の父親役)とエリザベス・バンクス(継母役)というキャスティングも、ともどもに悪くは無かったけれど、やっぱりね、オリジナルを韓国映画の金字塔のように思っている僕としては、本作から得られる感銘はほとんどありませんでした。

もちろん、別物として観てはいたんですけどね。
でも、どうしてもねぇ、比較してしまうのは仕方がないのですけれども・・・。


あいかわらずのヤング節が炸裂する、クリストファー・ヤングのスコアは、ホラー映画のどろおどろしさのなかにも、カタルシスへとつながるエモーショナルな部分を見事に表現しているところは、さすが職人技!!
それに映像がしっかり付いて行ってないのが、なんとも残念でした。


結局は、オリジナルとは別物と切り離して扱ったほうがいい作品。
でも、オリジナル未見の方は、たとえば、未公開映画のコーナーで、どんなんかな~~~と借りてみたら、案外拾い物だった、という作品なんじゃないですかね。

なんせ、90分にも満たない上映時間ながら、ラストに大きなサプライズが待っているわけですからね。
レンタル料金くらいの価値は十分あると思いますよ。


【採点:100点中30点】


※とっても恐ろしいポスターアート。
これで釣られる方もおられるのでしょうねぇ・・・。



※クリストファー・ヤングによる本作のサントラ。
哀愁漂うメインテーマのメロディは、ヤングお得意のパターン。



Christopher Young - The Uninvited (Original Motion Picture Score)

※オリジナル版。
ホラー映画だと思って観ていたら、号泣必至な展開に。
いまなお、韓国映画ではベスト1に推したい作品。




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