■『アリス・イン・ワンダーランド』■(映画) 


アリスインワンダーランド
そういえば、まだティム・バートンってアリスに手を出してなかったんだ・・・と、正直意外に思えたほどその映像世界のイメージにピッタリな、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」。

しかし、出来上がった映画は、まごうことなきティム・バートンの映画になっていたのは、コアなアリス・ファンはどう思うんでしょうねぇ・・・?

かくいう僕は、このあまりにも有名な原作をまともに読んだことがなく、なにしろ、違う人の訳で何冊も日本で出ているので、どれが一番原作のニュアンスを再現できているんだろうか? ってなことを逡巡しているうちに、結局読まないままになっていたのです。
さらに白状すれば、ディズニーのアニメ作品も観てない、いわばアリス・ビギナー(とはいえ、あらすじや登場するキャラくらいは知ってますけどね)


今回も、映画を観る前に原作を読もうかとも思ったんですけど、結局読まずに映画を観ることに。

でも、全然大丈夫ですよ。十分楽しめます。
ティム・バートンの作品に免疫があれば、ですが・・・。


少女の頃に、不思議な体験をしたアリス(ミア・ワシコウスカ)も、いまや19歳というお年頃。
貴族のぼんぼんと結婚、という話が持ち上がりますが、そのぼんぼんからのプロポーズの場から逃げ出すアリス。

いいえ、彼女は逃げたのではありません。
突然、あの時計を持った白ウサギが彼女の前に現れたのです。

アリスは白ウサギを追いかけているうちに、深い深い穴に落ちてしまいます。

穴の底には不思議な世界が広がっていて、わがままで頭でっかち(な性格ではなく、ほんとに頭がでっかい)赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)によって支配されおりました。
赤の女王の恐怖政治のなか、世界の住人はアリスという救世主が我々を救ってくれると信じています。

そこに突如現れたアリスでしたが、住人たちは彼女が救世主だとはなかなか信じません。
しかし、マッドハッター(ジョニー・デップ)なる、ドラッグ・クイーンみたいなおに~さんだけが、彼女を真の救世主だと信じます。

かくして、アリスは白の女王(アン・ハサウェイ)やマッド・ハッターの協力のもと、ついに赤の女王と戦うハメになるのでした。

アリスインワンダーランド1
いわゆる、「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」の後日談的な設定であり、先にも書いたように、ルイス・キャロルが作ったキャラをティム・バートンは自由に料理したといった感じ。

適度にファンタジックで、適度にブラックで、適度にお下劣。

まさに、バートンが撮るべくして撮ったといえる快作に仕上がっていました。

とにかくビジュアル的に強烈なのは、バートンの実生活のパートナーでもある、ヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王。
かつて、彼女がオフィーリアを演じたフランコ・ゼフィレッリ『ハムレット』(90)では、そのあまりの愛くるしさに一気に魅せられてしまったものですが、それもいまとなっては遠い昔(そんなに昔じゃないんですけど)・・・。

でも、ここ数年の彼女の怪演は、それはそれで女優としての実力がいかんなく発揮されているとも言えるわけで、その集大成がこの赤の女王といっても過言ではないでしょう。

いやぁ、あの地方の民芸品みたいな、グロテスクかつキュートな赤の女王。
一家に一個、床の間なんぞに飾っておきたいものです。

アリスインワンダーランド2
それと相対する白の女王を演じたアン・ハサウェイ。
彼女も一応、正義なキャラなんですけど、ティム・バートンの手にかかってしまうと普通の正義のキャラでは終らない。それはどういうことかは、本作をご覧になられるとよ~~~くわかります。
劇中で彼女が作る身体の大きさを自由に変える「縮み薬」。

あれ、欲しいですねぇ。
それはどういうことかは、本作をご覧になられるとよ~~~くわかります(笑)

アリスインワンダーランド3
そして、やたらとクローズアップ(本作のポスター・ビジュアル等々)されているのがジョニー・デップ。
ボナム=カーターとともに強烈にインパクトのあるキャラですが、彼はあくまで脇役に過ぎない。

たしかに彼を前に出すことで集客力もアップするのでしょうが、個人的には赤の女王の側近、ハートのジャックを演じたクリスピン・グローバーに興奮しましたですよ!

実際、ジョニー・デップよりも出演シーンは多いんじゃないの?
いっそのこと、彼をポスターに使ってくれたら良かったのに(笑)

とにかく、ジョニー・デップとクリスピン・グローバーが一戦交える場面を観ることができるなんて、それだけでお腹一杯になる贅沢ですよ。
って、それに共感していただけるのは、極々少数かもしれませんけどね・・・。

ただ、クリスピン・グローバーに興奮(なんて書くと、違う意味にとられるかも・笑)した反面、彼に関するCGの使い方が、本作で最も技術的にアラが目立ったところ。

馬を乗りこなすハートのジャック。
乗っている馬もCGで描かれたもので、彼が馬と一緒にフレームにおさまっている場面は、彼自身もCGで描かれていることがよくわかります(よくわかるくらい、処理が悪いんです)。
そして、カメラが切り替わると生身のクリスピン・グローバーになるという仕掛け。

他の場面が映像的にも優れているのに、このなんでもないようなシーンでアラが目立つのは、スタッフの手抜きのように思えてならず、これは残念でしたねぇ・・・。

アリスインワンダーランド4
そして、本当の主人公であるアリスを演じたミア・ワシコウスカ。
いつも眉間にシワを寄せたよせたしかめっ面なところがまたキュートであり、バートン流アリスを見事に好演していました。
並み居る怪優たちを前に、これで彼女も怪優の仲間入りですね。ご愁傷様です。

考えてみれば、原作にある少女愛(と言い切っていいんでしょうね)的な要素は皆無であり、ヒロインを少女ではなく大人の女性、いや、大人の一歩手前の女性と設定したところが本作の真骨頂。
アリスは本作でさまざまな体験、そして冒険を経て、最後には・・・あ、これはまだ未見の方のために伏せておきましょう。

とにかく、バートンが本作で描きたかったのは、あまりにもバートン的なファンタジックなシークエンスはもとより、むしろこの最後の数分間だと思うんですよ。

まぁ、その時点でルイス・キャロルの世界とはまったくの別物になってしまったかもしれませんが・・・。


全編を彩る盟友ダニー・エルフマンのスコアも好調!!
エンド・クレジットで、韻を踏んだ歌詞(作詞もエルフマン)を伴ったコーラスで大々的に流れる「アリスのテーマ」のフレーズを随所に流して印象付けるという、映画音楽の王道的な使い方も、じつに好感触でありました。


アリスインワンダーランド5
あ、ところで僕は本作を2Dで観ました。
3Dで観ることも可能(ただし、メガネが重いXpand方式ばかりなんですよ、近くの劇場は)でしたが、あえて2Dにしたのは、バートンが構築した映像世界をじっくり堪能したかったから。

3Dはもちろん立体映像を楽しむことはできますが、それに注意が偏ってしまって画面全体まで楽しめないんですよ(これまで観た3D作品、いずれにも言えること)。

実際、2Dでも十分楽しめましたので、わざわざ3Dで見直そうとは思いませんね。


最後に、本作に登場するキャラ、すべてがよくできていた(俳優が演じている、CGで書き込まれた、いずれにおいても)と思いますが、とりわけ気にいったのは赤の女王の配下のカエル。
女王のデザートをツマミ食いした、ってんで詮議されるあのカエルたちです。

あれはリアリティありましたねぇ。あのシーンだけでも、もう一度観たいですねぇ。

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中85点】


※ダニー・エルフマンによる本作のサントラ。
ティム・バートンの前作では残念ながら降板せざるを得なかった分、今回はエルフマン節が炸裂!!
まさに水を得た魚とはこのこと。
どうでもいいが、ジョニデはあくまで脇役だって~~~のっ!<an>


※いや、だからジョニデは脇役だ、って・・・。
本作にインスパイアされた、色んなアーティストによるオムニバス・アルバム。
実際に、本編で使用されているのはアヴリル・ラヴィーンの「アリス」のみです。
本編が終って、どう見てもアレの比喩だろうとおぼしきキノコが頭をもたげるエンド・クレジットに流れます。





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