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■『第9地区』■(映画) 


ダイ9チク
南アフリカはヨハネスブルグの上空に突如、巨大なUFOが出現!!

すわ、宇宙戦争勃発かと思いきや、どうやらいわゆる難破船の様子。
UFOの中にはなんとも奇妙な格好(のうえ、不潔)をしたエイリアンの衆が大勢乗ってらっしゃいました。

政府はとりあえず、ヨハネスブルグに仮設住宅地「第9地区」を作って彼らを収容します。
エイリアンの衆もおとなしく暮らしておればよいものを、元々粗暴で不潔なのが原因なのか、はたまたその奇妙な容姿からエビちゃん(注:ちゃん付けはしてませんが)と呼ばれて人間から迫害された鬱憤なのか、地元の人々とエビちゃんとのトラブルが絶えません。

おまけに、キャットフードが好物(他にも人間が飼ってる牛を勝手に喰ったり、ゴムを喰ったり、なんとまぁ食欲旺盛なこと!)なエビちゃんに目をつけた、地元のギャング団のいいカモに成り下がる者もおりまして、高額でキャットフードを売りつけられたり、キャットフードとエビちゃん特製の武器とを交換させられたりする者もいたりする。

そうこうしているうちに20余年の歳月が過ぎ、いまや「第9地区」はスラムと化して、エビちゃんと地元の人々とのトラブルは軍隊が出動するような事態にまで、治安が悪くなっておりました。

そこで政府は新たに「第10地区」なる収容キャンプを作り、エビちゃんたちを移動させようとします。


ダイ9チク1
ここに登場するのが本作の主人公ヴィカスさん(シャルト・コプリー)。

彼は政府のお役人ですが、これまで大した仕事もしておらず、ここに来てエビちゃんたちから「第10地区」移動の承諾書にサインを取り付ける仕事を仰せつかります。
いままでにない大役をもらって浮かれるヴィカスさん。

いい人なんですが空気が読めない、正直そばにいたら鬱陶しいタイプの人です。

じつはヴィカスさんの奥さんのお父さん、つまり義理のお父さんはヴィカスさんの上司でありまして、誰もやりたがらない仕事を、自分の立場もありますからとりあえずヴィカスさんに押し付けたのでありました。

そんな「沈まぬ太陽」なヴィカスさんですが、意気揚々と「第9地区」を一軒一軒まわります。

しかし、
「そんな承諾書、知るかぃ!」
「ウチラはここがええねん!」
「やっぱキャットフードはカルカンよねぇ」
と、たいがいけんもほろろに追い返されます。

あんな気っ色悪いエビちゃんに、エラそうにされてヴィカスさんも立つ瀬がありません。
ダイ9チク2
しかし、気色悪くて粗暴で不潔なエビちゃんのなかにも紳士的な者もおりまして、クリストファー・ジョンソン(便宜的に団十郎としておこう)と勝手に政府に名前をつけられた彼。
どうやら団十郎はエンジニアのようで、幼い息子さん(便宜的に海老蔵としておこう)と二人暮らし。
ゴミ捨て場を漁っては、なにやら得たいの知れないものを作っている様子。

その団十郎、海老蔵親子に家にやってきたヴィカスさん、そこで謎の黒い液体の入ったカプセルをを発見します。
「お手柄じゃ~~~ん!!」
とその黒い液体の入ったカプセルをいじくっているうちに、なんと身体にその液体を浴びてしまうヴィカスさんでありました。

さぁ、そこからヴィカスさんの体に異変が起こります。
頭痛、めまい、吐き気、挙げ句の果てには片腕がエビちゃんのそれになってしまったじゃありませんか!!

混乱のうちに、早速、政府によって監禁されたヴィカスさんは、自分が生体解剖されて研究のネタにされてしまうことを悟ると、研究施設から脱走いたします。
政府も彼を危険人物(そのうえ、エビちゃんとエッチしたのでヘンな病気になった、なんてデマまで流されます)とみなし、日頃からヴィカスさんと折り合いの悪かったクーバス大佐も軍隊を率いて執拗に彼を追いかけます。

いまや、人間から追われる身となったヴィカスさんは、再び「第9地区」の団十郎、海老蔵親子の家に逃げ込みます。
はたして、ヴィカスさんはどうなってしまうんでしょうか?
そして、人類とエビちゃんとの関係は、好転するのでしょうか?


ダイ9チク7
今年のアカデミー賞で作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞と4部門もノミネート、とりわけ作品賞ということに興味を持っていた作品であり、しかもプロデュースはかのピーター・ジャクソン。

いったい、どんな映画なんだろうという期待しておりましたが、結局、世界のなかでも日本は公開が一番遅かったんじゃないでしょうか。
でも、待っていた甲斐があったと思うくらい、快作に仕上っておりました。


この映画、すでに色んなところで語られておりますが、地球上で実際に起こっている難民問題を、エイリアンと地球人という姿を借りて描いているというのは、誰が観ても明らか。
そのうえ、南アフリカが舞台って、まんまですがな。

もちろん、そういった角度からのレビューもいいんでしょうけど、僕にはそんな難しい話よりも、あくまでエンターテイメントとしての本作のことを語りとうございます。

ダイ9チク6
そもそも、エイリアンが地球へ流れついてくるという設定は、SF映画の佳作『エイリアン・ネイション』(88)ですでに描かれたものだし、主人公が最初はエイリアンと敵対関係だったのが、あらゆる過程を経てエイリアン側の立場になる。
最終的にはエイリアンとともに、地球人と戦うことになる、って、これ、『アバター』ですやんか。


本作は確かに過去のSF映画の要素があちこちで見受けれれるようなレベルの物語ですが、それを見せる腕がずば抜けているんですよねぇ。

映画の前半は、突然現れたUFOに端を発したニュース映像などを中心に擬似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)タッチで描かれ、そのなかでヴィカスという役人が巻き起こした事件のこともさりげなく語られてくる。
いったい、ヴィカスという人物がなにをやらかしたのか? ってことで、物語は本筋へとシフトしていく、その語り口が絶妙なんです。

また、映画の中盤からクライマックスにかけての、たたみかけるようなアクションの連続、そしてそこに団十郎、海老蔵父子との友情(特に海老蔵はヴィカスさんになついているカワイイ奴。しかし、見かけはグロテスク)を忍ばせたり、地元のギャングとの抗争があったりと、正にエンターテイメントの王道を行くかのよう。
いやぁ、面白かった!!

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とりわけ上手いなぁ~~~、と思ったのはエビちゃんたちの武器の設定。

これ、エビちゃんの遺伝子と連動しており、いくら地球人が使おうとしてもまったく反応しないのです。
しかし、徐々にエビちゃんのような身体に変貌するヴィカスさんですから、遺伝子レベルで変貌していくことになる、ということは彼にはエビちゃんの武器が使えるようになるとういうわけ。

クライマックスでのヴィカスさんの活躍は、その相手が地球人であっても、思わず、
「やってまえ! 軍隊なんかみんな破壊してまえ!」
と、エビちゃんたちに感情移入してしまうこと請け合いです。


本作の監督であるニール・ブロムカンプは本作が長編デビュー作。

本作の元となった短編を観て惚れこんだのが、先にも書いたようにかのピーター・ジャクソンで、彼のバックアップによって見事長編を撮ることができたばかりか、アカデミー賞で主要5部門にノミネートされるという時点で、彼の才能のほどがうかがえるというもの。
本作に過去のジャンル・ムービーの要素を見い出すのはたやすいことですが、しかし、もはや流用とかオマージュとかそんな言葉で片付けられるようなものではなく、すべて自分のものにするのはなかなかできるもんじゃない。
本作ではそれが見事に成し遂げられているのです。

ほんとに非凡な才能がでてきましたよ!!


また、南アフリカが舞台ということで、地元のコーラスを取り入れつつ、緊張感たっぷりなスコアで映画を盛り上げたクリントン・ショーターも、監督同様現時点では無名な存在。
しかし、プラハ・シティ・フィルハーモニーがスコアを演奏しているなど、ここにもまた新たな才能をバックアップする体制が整っており、映画そのものの完成度もさることながら、あらゆる才能が開花する場を目の当たりにして、とっても興奮いたしましたですよ。

ダイ9チク5
ただ・・・、この映画、かなりグロいんですよねぇ。

エビちゃんを容赦なく殺戮する軍人や政府機関の容赦のない描写があると思ったら、その反対もまた然り。
エビちゃんと人類、双方の人体破壊の場面がてんこ盛りなので、それなりの覚悟をしてご覧になられたし。

でも、最後には悪い奴(我々、人類なんですけど)が、そんな目に遭うのを目の当たりにして、溜飲下がる思いになったのも否定できません。
最後にはすっかりエビちゃんたちに感情移入してしまうという仕掛け。

それはそれで、本作のひとつの魅力でもあるのですけどね。

ダイ9チク4
それと、ちょっと残念だったのはラスト・シーン。

そこはもうちょっと、じっくり描いてくれてもよかったんじゃないか、って。
ご覧になった方はには、何を言いたいのか判ると思いますけど、あれじゃあっさり過ぎます。
あとほんの数分、いや、ほんの数秒でも長かったら、早々に本年度のベスト1に推したい逸品でした。

必見!!

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点90点】


※本作のサントラ。
レビューでも書いたように、新進気鋭の作曲家クリントン・ショーターによるスコアは、舞台となる南アフリカのコーラスをフィーチャーしつつ、プラハ・シティ・フィルハーモニックによる演奏を伴ったヴォリューム感のあるもの。
ただ、メインはシンセによる打ち込みであり、メロディ・ラインがちょいと弱いのが残念。今後に期待!!
なお、サントラはダウンロード販売のみです。※

※iTuneによるダウンロード販売(購入希望の方は、画像をクリック!)。※


District 9 (Original Motion Picture Soundtrack)

※これも面白いよ~~~!!



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