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■『火天の城』■(映画) 


カテンノシロ
戦国武将を扱った作品は数あれど、武将が主役ではなく城を作った人が主役というのがとっても興味をそそる題材でありまして、しかも幻の城であった「安土城」が舞台となれば、これは期待してしまうというもの。
山本兼一氏の原作小説(未読です)を『化粧師』(01)の田中光敏監督が映画化。石ノ森章太郎原作劇画を映画化した『化粧師』は、静謐な映像のなかに人間の情熱が込められており個人的にも感銘をうけたものでしたので、本作もけっこう期待して観たわけですが・・・。

まず、オープニング。
木材をカンナやノミが削っていく様子を超スローで、しかも超アップで映し出すという多少フェチズムさえ感じるその映像にまず引き込まれました。じつは僕の叔父に父親が大工でもあったので、幼い頃から大工道具の数々は見慣れているということもありまして、そのほんの短いシーンに「監督はよくわかってるなぁ」と思いましたねぇ。

思ったのですけど・・・。

熱田の宮大工岡部又右衛門(西田敏行)は、その腕を見込まれて織田信長(椎名桔平)直々に「安土城」を作るよう命ぜられます。又右衛門も宮大工の意地と誇りをかけてその命令に従うものの、実際に目の当りにした広大な敷地と「西洋の大聖堂のような吹き抜けのある城を」という信長の申し出にたじろいでしまいます。
そんな又右衛門の心を察した信長は、金閣寺を建立した宮大工、そして奈良東大寺を建立した宮大工と、三者による「安土城」建設案コンテストを開催。この映画の前半のシークエンスは、又右衛門の宮大工としての誇りと、それを信頼した(と表には出さないにしても)信長との丁々発止がじつに面白く、とりわけ他の2人が吹き抜けのある城を提示したのに対し、又右衛門だけが吹き抜けのない城を提案。
「わしの言うことが聞けぬのか!」と恫喝する信長に対し、又右衛門はじつに見事な回答を提示するのでした(このあたりは映画を観てくだされ)。

その後、様々な困難の末、見事「安土城」を完成させる岡部一門の姿が描かれていきます。
とにかく又右衛門という人物がじつに人望厚いキャラでして、弟子の大工たちやその家族、石材関係の棟梁(夏八木勲)、信長の敵である武田領の杣人(緒形直人)といった周囲の人々の協力を次々と得ていく。そのおかげで大事業は成就するのです。そんな又右衛門を演じる西田敏行、互いのキャラを考えるとかようにも適材適所なキャスティングありませんよねぇ(笑)
CG駆使もさることながら、西岡善信氏による美術設定も巧みに活かされた絵作り(往年のスペクタクル史劇を思わせるカットもあり)でもって、とにかくものづくりに携わっている方にとっては、逐一感じ入る部分も多々あります。

無論、ドラマ部分においても、又右衛門と妻(大竹しのぶ)とのシークエンスや、クライマックスの岡部一門総出による「安土城修繕」のシークエンスなど深く感銘を受けるものもありましたし最近はアクション女優として開眼した感のある某女優(名前は敢えて伏せておきます)による、さすが東映! かつてのプログラム・ピクチャーの荒唐無稽の再現か! と思わず嬉しくなってしまう(でも、本筋にはあまり関係なかったりする)ようなシークエンスもありまして、娯楽超大作としての面白さも備わった作品だったといえるでしょう。

ただ、物語の締めくくりの部分が描き足りないというか、「え? それで終わりなの?」という、それまでの盛り上がりを急にクールダウンしてしまうような感は否めません。
その後の「安土城」の運命であるとか、もちろんそれに伴った信長の運命なども描かれず、逆に描くと冗長になるのを監督は避けたのかもしれませんが、起承転結の結の部分がスッポリ抜け落ちたようななんともしっくりこないエンディングだったのはじつに残念でした。

さらに気になったのは、岡部又右衛門の娘、凛(福田沙紀)に関するシークエンス。
いえいえ、けっして福田沙紀そのものが悪い(個人的にはとっても好きなんですが)というのではなく、この映画にとっての凛というキャラをとりまく設定についていささか疑問が残ってしまいまして。
とにかく、彼女が登場する時のなんともいえない違和感。
物語自体がどちらかといえば男主体の流れのなかで、登場するたびに満面の笑みを浮かべてる凛(いえ、その笑みは個人的にはとってもよろしいのですが)が、どうも場違いな気がしてならないのです。
さらには、天正年間という時代において、父親のことを「お父さん」と呼び、また、彼女の恋人で又右衛門の弟子である市造(石田卓也)は彼女のことを「凛ちゃん」と呼ぶ。歴史的考証として、この「お父さん」とか「~ちゃん」というのは、はたして正しいのかどうか?

先に男主体の流れと書きましたが、たとえば岡部一門の大工(寺島進)の女房(熊谷真美)や、先述したアクション・シークエンスを担う女性キャラも登場します。しかし、この二人はいずれも女性の持つイメージを払拭したいわゆる男勝りなキャラなんです。そんななかに可憐な凛も同席しているのが、どうもねぇ・・・。
凛自身もその男たちの物語のなかでいくつかの試練を味わうことになるのはともかくとして、母親とのシークエンスから派生するクライマックスでの盛り上がりという部分も決して悪くはないのですが、それでもなお、場違いな雰囲気は最後まで払拭できませんでした。

なんでも凛というキャラは映画オリジナルだそうで、原作に登場するのは又右衛門の娘ではなく息子。
日頃から反目しあう父子が、安土城建設プロジェクトのなかで親子の絆を深めていくというのが原作のストーリーなんだとか。
あぁ、なんで映画もそのままにしなかったのさ・・・。
つまりは、映画では又右衛門の息子を娘とその恋人という形にアレンジしてしまったんですね・・・(しつこいようですが、福田沙紀そのものは決して悪くないのですよ、ほんとに!)。

最初に「監督はよくわかってるなぁ」と書きましたが、映画に華を持たせようとしたその心意気は買いますが、時として蛇足になることを本作は提示して見せたような、そんな気がいたしましたとさ。

(MOVIX橿原にて鑑賞)

【採点:100点中55点】


※山本兼一氏による原作。ぜひ読んでみたいものです。


※同じく山本兼一氏による歴史小説集。
表題の「弾正」とは僕が大好きな戦国武将、松永弾正久秀のこと。この作品の存在を知らなかったので、松永久秀が登場するとあっては『火天の城』よりも興味津々でございます。



※・・・よろしおますな。

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