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■『喰女-クイメ-』■(映画) 







クイメ
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鶴屋南北の「東海道四谷怪談」は、いわゆるジャパニーズ・ホラーの古典であり、映画界でも何年かおきに、それこそ忘れた頃に映画化されるいわば人気ネタ。

元々は、「仮名手本忠臣蔵」のサイドストーリーという側面もあって、かつては舞台上でも
「仮名手本~」と「~四谷怪談」を交互に上演したという。
「~四谷怪談」のヒロイン岩は、塩冶家(事実でいうところの浅野家)の藩士の娘であり、その夫、伊右衛門は岩の婿養子である。
伊右衛門の凶行のきっかけになる伊藤喜兵衛は高家(事実で言うところの吉良家)の家臣だ。
かように、「仮名手本~」と「~四谷怪談」の間には巧みな相互関係が構築されている。


故・深作欣二監督が「仮名手本~」の完全映画化を企画していて、そこでもやはり「~四谷怪談」のストーリーも組み込んだ超大作になる予定だった。
結局、スケールとしては予定よりも縮小された形ではあったが、それは『忠臣蔵外伝四谷怪談』(94)として結実した。

双方の作品に少なからず興味を持っていた僕としては、『忠臣蔵外伝~』には大いに喜んだが、岩が武家の娘ではなく湯女(現代でいうところのソープランド嬢)という設定には映画自体はじつに面白かっただけに唯一の不満だった(演じた高岡早紀は素晴らしかったけどね)。


さて、今回の映画は「四谷怪談」を演じる俳優たちが、現実と虚実の中で繰り広げる愛憎劇という設定。
同じようなテーマを扱った作品では最近ではダーレン・アロノフスキーの『ブラック・スワン』(10)があったし、デイヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』(01)なども同じ系統といえる。
独特な舞台美術(後で詳しく触れる)で展開される劇中劇という点では実相寺昭雄の『悪徳の栄え』(88)にも通じるものがある(涙を流す人形の使い方など、「あ、これって『悪徳の栄え』だ!」って(笑))。
どちらかといえば難解な内容ではあるけれど、そこは映像でどれだけの表現ができ、観客にアピールできるか、というところで映画自体の評価が変わってくると思う。

とりわけ、海外でも熱烈なファンの多い三池崇史監督となれば、その独特な映像世界で相当なものを見せてくれるだろうという大きな期待を抱いてしまうわけだ。


「四谷怪談」で岩を演じる美雪(柴崎コウ)と、伊右衛門を演じる浩介(市川海老蔵)は実生活でも付き合っている間柄。
しかし、浩介は名うてのプレイボーイだった。
リハーサルで体調不良となった美雪の代役をつとめた付き人の加代子(マイコ)に言い寄るのは序の口。
梅を演じる新人女優(中西美帆)にいたっては、実際に肉体関係まで持ってしまう。
そんな浩介の様子を察していながらも、美雪はただただ黙認している。
やがて、「四谷怪談」のリハーサルが進んでいくにつれ、美雪や浩介の精神に大きな影響が出始め・・・。


結論からいえば、今回も三池ワールドが炸裂した、ドロドロ、グチョグチョした内容で、そういう意味では大いに堪能した。
扱っている内容が内容だけに、一見難解な物語のように見える。
しかし、注意深く観ればところどころに物語を読み解くヒントも忍ばせてある。
解釈いかんでは現実と虚構の狭間も明確だし、衝撃的な結末もある意味「爽快」ですらある。

まぁ、三池監督の作品に免疫のない方が見れば、相当にグロテスク(一部、かなりキツい場面がある。リスクを背負って演じた柴崎コウには賞賛の拍手を送りたいほどだ)で陰気な映画、としか映らないかもしれない。
こういう映画は観客を選んでしまうのだ。


それにも増して目を引くのは、劇中劇の舞台美術だ。
まさに様式美! というべき独特なそのデザイン(三池組の常連、林田裕至氏と佐久嶋衣里氏)で、その舞台美術だけでもスクリーンで観る価値が大いにある。
特に本作のイメージデザインにもなっている「ムカデ」は、伊藤家の紋様として大々的に使用されており、「ムカデ」=「毒」というストレートな表現ではあるが、映画全体を包むムードを表現するにはこれほど適格なものはない。

しかも、そんな舞台美術の中で展開される「四谷怪談」のエピソードは、その内容を知らない世代にとっても、じつにわかりやすくダイジェスト化したもので、宅悦役の伊藤英明(イケメンの彼がこういう役を演じるというのもまた面白い)の好演もあいまって、「四谷怪談」の映像化のスタンダードともいえる出来栄えになっている。


ゆえに、個人的には観たいものを見せてくれたし、期待にも応えてくれた。
さらには「四谷怪談」も堪能できたということで、じつに満足な一本だった。
けっして、万人にお薦めはしないし、とりわけカップルで観るには相当注意が必要だけれど。



スコアは三池組常連の遠藤浩二が担当。

いわゆる明確なメロディのようなものはほとんど流れない。
神経を逆なでするかのような、まるで体のあちこちが悲鳴を上げているかのようなスコアが要所要所で流れてくる。

サウンドトラックはリリースされていない。


なお、本作のイメージソングとして華原朋美がカヴァーした「難破船」が使われている。
それを知ったのは映画を観終わってから。
じつは実際のエンドクレジットには英語歌唱によるアンニュイなソング・ナンバーが流れている。
オリジナル曲(作曲も遠藤浩二とクレジットにあったように思う)のようで、詳細はパンフにでも書いてあるだろうと思ったが、それがまったく記述されていないのだ。

観終わって帰宅してからネットで調べたがまったく情報がない。
その代わり、アップされているのは華原朋美の「難破船」ばかり・・・(笑)

いやぁ~~~「難破船」はあの映画には合わないわ。
エンド・クレジットであれが流れてきたら、独特の余韻をブチ壊しされるところだった。

ゆえに、実際に流れていたあのナンバーの詳細が(唄っている方も含めて)知りたい。